世界各国からオーデマ ピゲの重要顧客が、2021年に継ぐマーベルとコラボしたユニークピースを手に入れんとドバイに集結。前回の落札価格を100万ドルも上回った、白熱したオークションの様子をリポートする。
一番人気のスパイダーマンが登場
創業者一族による家族経営が今日まで続く、スイスでも稀有な存在であるオーデマ ピゲは、入手困難が続く人気時計ブランドのひとつである。オークションで高額落札されることも、しばしば。2021年に発表されたマーベルとのコラボ限定モデル「ロイヤル オーク コンセプト “ブラックパンサー” フライング トゥールビヨン」では、市販モデルとは外観がまったく異なるユニークピースを製作し、オンラインによるオークションを自ら開催してもいる。その際の落札価格は、520万ドルであった。
その第2弾となるオーデマ ピゲ「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」が、去る2023年5月25日、ドバイの中心地にそびえ立つセントラル・パーク・タワーで初披露された。会場に招かれたのは、世界各国の重要顧客とメディア関係者、インフルエンサーを合わせた約140名。そして2021年と同じく、ユニークピースも登場し、重要顧客らによるオフラインでのオークションが開催された。
事前にアナウンスはなかったが、ユニークピース以外にも作家であり映画監督でもあるデビッド・マンデルのサインが入ったマーベルのヴィンテージコミック3冊と、2023年8月にオープンする「APハウス ロサンゼルス」のオープニングイベント参加権が付帯する、来年発表予定の「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」限定モデルのシリアルナンバー「1」の優先購入権も出品。コミックは5500ドル、ロイヤル オークは5万ドルからオークションがスタートしたが、会場では次々とパドルが上がり、またネットと電話での参加者からも入札が続き、どちらの落札価格も、スタート時の30倍以上に達した。
暗闇で光を放つ新素材ケース
予想を超える高額落札に、会場のボルテージも上がる。そしていよいよ本命のユニークピースが、スクリーンに大写しされると、会場は大歓声に包まれた。そして登場した「オーデマ ピゲ ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」。ダイヤルにはめ込まれた手彫りによる立体的なスパイダーマンのモニュメントは、市販限定モデルがレッド×ブルーのタイツに身を包んだお馴染みの姿であったのに対し、ユニークピースにはシンプルなブラックが採用された。またWGケースには蜘蛛の巣が繊細にレーザーエングレービングされ、さらにセラミック系畜光材が埋め込まれ、暗闇で光る様子が、なんとも怪しげであり、またかっこいい。セラミック系畜光材をケースに用いるのは、オーデマ ピゲのみならず時計界でも初の試みだ。
オーデマ ピゲのフランソワ-アンリ・ベナミアスCEOの鶴の一声で、20万ドルからオークションはスタート。マーベルのキャラクターの中でも、最も人気のスパイダーマンである。前回のブラックパンサーを超える落札価格が予想されていた。その予想通り、入札の声は止まることなく、あっという間に550万ドルに達した。そこで一旦、入札は止まったが、ベナミアスCEOとオークショニアは会場やオンライン・電話参加者をあおる。するとオンラインで600万ドルの入札が入り、それに続いてすぐに会場から620万ドルとの声が挙がり、見事ハンマープライスとなった。
オークションは、オーデマ ピゲの社会貢献
出品された3点合計の落札価格は、850万ドル。この売り上げは、2つの非営利団体、ファーストブックとアショカに寄付され、ブラジル、英国、ナイジェリア、カナダ、インドネシアなど世界各地の恵まれない家庭の若者たちに均等な教育の機会を与えることに使われる。2021年分も含め、オーデマ ピゲとマーベルとのコラボモデルのオークションは、社会貢献の一貫なのだ。それを主導したベナミアスCEOは、今年いっぱいでの勇退が決まっているが、「2025年に、新たなキャラクターとのコラボモデルを製作し、そのユニークピースのオークションも開催します」と宣言。オーデマ ピゲのチャリティーオークションは、今後も継続される。