連載「意欲的新作ウォッチ」の第142回は、グランドセイコー「SBGW295」を取り上げる。
黒漆ダイヤル×チタンケースによる初代グランドセイコーの復刻デザインモデル
国産初の腕時計「ローレル」の発表から110周年を迎えた2023年、グランドセイコーは「エレンガンスコレクション」からセイコー腕時計110周年記念限定モデル「SBGW295」を発売。
「SBGW295」のモチーフに選ばれたのは、1960年に発表された初代グランドセイコー「J14070」。国産では初めてスイス・クロノメーター検査基準優秀級規格に準拠した18Kイエローゴールド製のドレスウォッチは、「世界に挑戦する国産最高級の腕時計」というグランドセイコーのコンセプトを具現化した記念碑的な1本だ。当時の上級国家公務員の初任給が1万2000円だった時代、販売価格が2万5000円だったことから「J14070」が破格の高級品であったことが窺い知れるだろう。
今回、初代グランドセイコーの復刻デザインを再現するにあたって、グランドセイコーが新たに取り入れたのが、日本の伝統工芸「漆芸」による奥行きある深い艶の黒漆ダイヤルだ。グランドセイコーのために調合された黒漆は耐久性や耐光性に優れる純国産の漆を用いており、長期にわたって艶かな発色を保ち続ける。漆を塗布したダイヤルの上には、金沢の漆芸家・田村一舟による加賀漆芸の「高蒔絵」を施し、漆で12ヵ所のバーインデックスと「Grand Seiko」のロゴを塗り重ねて盛り上げ、その上に金粉を蒔いて丹念に磨き、立体的に仕上げている。
ケースと中留の素材は、グランドセイコー独自の「ブリリアントハードチタン」を使用。このチタン素材は通常のチタンと同じ軽さを備えつつ、ステンレススチールの約2倍の硬度を持つ。ザラツ研磨で磨き上げたケースの輝きは、ダイヤルの美しさを際立たせている。ストラップには、かつて武士の鎧兜を編み上げる際に使用した伝統的な手法「鎧織」を採用し、細く裁断した牛革を糸と平織にすることで耐久性を向上させている。
搭載されたCal.9S64は、動力ゼンマイとヒゲゼンマイにセイコー独自の素材「スプロン」、 そしてMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)によって製造される、高精細かつ表面平滑度の高い部品を脱進機に採用した最新鋭の手巻きムーブメントである。
「長く愛用できる時計づくり」をモットーに掲げるグランドセイコーの哲学を体現する限定モデルは、恒久的な美しさと優れた実用性を兼ね備えている。独特の艶感は腕元の演出にもうってつけだろう。
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■連載「意欲的新作ウォッチ」とは……
2022年も高級ウォッチブランドから続々と届く新作情報。その中から、新鮮な驚きや価格以上の満足感が味わえる“活きのいい”モデルを厳選! 時代を超えて輝き続ける、腕時計のパワーを改めて感じて欲しい。