連載「ヴィンテージウォッチ再考」の第10回は、ロレックス「GMTマスター」からRef.1675“フクシアベゼル”を紹介する。
一歩差がつく希少なベゼルを備えたヴィンテージロレックス
「サブマリーナ」のRef.5513、「エクスプローラー」のRef.1016と並ぶ、ヴィンテージロレックスの大定番として「GMTマスター」のRef.1675を外すことはできない。
1959年から1979年と約20年間製造されたRef.1675は、Ref.1675/8(18Kイエローゴールド)、Ref.1675/3(ステンレススチール☓18Kイエローゴールド)などの派生モデルを含め、安定した人気がある。
ヴィンテージウォッチの命であるダイヤルはもちろん、この数年では、いくつかのカラーバリエーションがあるベゼルインサートも評価の対象となっている。
ここで紹介する1968年製造のRef.1675には、“フクシアベゼル”、または“バイオレットベセル”などの呼称で親しまれる特別なベゼルインサートが装着されている。
「GMTマスター」と言えば、鮮やかな赤×青のベゼルインサートを思い浮かべる方が多いと思うが、こちらの場合は赤の部分の色味が若干異なっている。
有力な説によると、このベゼルインサートは当時ロレックスの世界最大のマーケットであった北米市場に向けて作られたもので、製造期間は1960年代後半からの数年だと言われている。希少性に加え、非常に人気があるため、このパーツ単体でもかなりの価値がある。
近年、ヴィンテージロレックスの評価基準として、パーツの整合性について、一部のコレクターの間では非常に厳しい意見が飛び交うようになっている。さらに付け加えると、たとえ希少なパーツがついていたとしても時計の年代と合っていないと不思議と見た目のバランスが悪く見えてしまう。
この話を踏まえると、“フクシアベゼル”とベストバランスになるのは、ほぼ同年代に製造されていた文字盤上のブランドロゴの「E」の書体に特徴がある、通称“ロングE”と呼ばれるダイヤルだろう。
こちらの個体のオリジナリティやコンディションについて説明すると、パーツの整合性が完璧なことに加え、ケースが未研磨であることも特筆すべきポイントである。このような状態で出てくることがないため、その分だけ価格が高くなる。
年々希少性が高まっている“フクシアベゼル”。状態次第ではかなり値は張るが、気になる方は今のうちに押さえておいても損はしないだろう。
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リベルタス TEL:06-6643-9455
■連載「ヴィンテージウォッチ再考」とは……
インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。