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2026.10.08

「主要国ではあり得ない」森保監督、国内戦と代表活動の重なりへの想い

史上初となった8年間の長期政権で、サッカー日本代表監督・森保一は何を考え、いかにして世界と戦ったのか。あの一戦の裏で下された「決断の真実」と彼の思考プロセスを記した、新刊『森保ノートの真実』より一部抜粋。第7回。

「主要国ではあり得ない」森保監督、国内戦と代表活動の重なりへの想い

代表強化とクラブの利益、板挟みになる選手、その苦渋の調整

国際サッカー連盟(FIFA)が定めるインターナショナルウイーク(IW)の規定は明快だ。

「指定・設定された日付に行われる国際大会の予選試合等は、国内選手権の試合よりも優先され、国内リーグやカップ戦の試合を組み込むべきではない」

しかし、日本の現実は長年その理念から乖離してきた。ルヴァンカップや天皇杯といった公式戦が日本代表の活動期間と重なる日程で組まれ、そのたびに日本代表監督である森保一は、代表の強化とクラブの利益、そして何より板挟みになる選手の立場との間で苦渋の調整を迫られてきた。

森保監督は、規則上の招集権を振りかざして選手やクラブを力づくで従わせる手法を採らなかった。クラブでタイトルが懸かった決戦を目前に控える選手に対し、常に細やかな配慮を見せてきた。

たとえば2025年10月、ルヴァンカップ準決勝と代表活動が重なった際、森保監督はタイトルが懸かった国内クラブの戦いを優先し、該当するチームの主力選手の招集を見送った。

2026年10月、望月ヘンリー海輝は追加招集で9月30日の練習から日本代表に合流したが、10月3日に一時離脱してFC町田ゼルビアのルヴァンカップに出場し、ニュージーランド戦前日の10月4日には日本代表に再合流している。

ルヴァンカップというJリーグ主催の大会だけではない。2025年11月には日本代表の活動期間中に日本サッカー協会(JFA)主催の天皇杯の準決勝が組み込まれ、森保監督は候補選手の招集を断念している。

そんな状況を森保監督はこう述べている。

「現段階では代表ウィークと、Jリーグや天皇杯の活動が重なるなかでも、JFAとJリーグが未来の日本のサッカーのためによりスムーズな関係で選手のやり取りができていること、この期間でもうまく日本のサッカーのために両方が協力し合っていることをみなさんに感じてもらういい機会でもある」

「日本のサッカーのためにみんなが協力し合っているというところをJFAとJリーグがまずは率先してやっているという発信になればいい」

もっとも活動に制限をかけられているのが森保監督自身であるのに、それをJFAとJリーグの和合と捉えてほしいと前向きな発信をしたのだ。

選手ファースト、選手が思い切って活動できることが重要

しかし、森保監督はこの状況をずっと「仕方のない当然のこと」として容認していたわけではない。2025年10月9日の記者会見では、世界のサッカー界における常識との乖離について、語気を強めてこう語っていた。

「公式戦を目の前にして、タイトルの懸かった試合の準備から選手を抜くということは良くないと思って招集しませんでした。代表の活動とJ1の舞台等の公式戦が重なるのは、世界の中でもほとんどないと思いますし、サッカーの主要国ではまずあり得ないことです」

さらに、選手が「後ろ髪を引かれながら全集中して戦わなければいけない代表戦で集中しきれない」苦しみを味わっていることを指摘し、こう訴えた。

「選手ファーストということを考えて、今後選手が思い切って活動できるように、日本のサッカーの環境も変わっていくとありがたいと思っています」

同年11月の会見でも「公式戦がある中でクラブも選手も痛みを伴って代表でプレーしてもらう」「クラブも選手も痛みがないような状態で、代表の活動を思い切ってやれるように」と切実な言葉を重ねている。

書籍『「森保ノート」の真実。』でも示されているように、森保監督は日本サッカーの大局を見据え、過渡期における構造的な歪みや理不尽を自ら呑み込み、耐え忍んできた。自らが防波堤となってクラブと代表の板挟みになる選手を守り、日本サッカー界全体の調和を保ってきたのである。

しかし、本人が最も強く願っているのは、「この歪んだ現状を次の世代の代表監督や選手たちにそのまま引き継がせないこと」である。森保監督が見せた「配慮」や「耐忍」を、組織や日程を管理する側が「これで何とか回っている」と都合よく受け止め、構造改革を先送りすることは決して許されない。

「世界一」を目指すと公言する日本サッカー界が、真に世界基準の環境へと脱皮するためには、一人の指揮官が背負い続けた理不尽の重みを直視しなければならない。自らは耐え抜いた代表監督が遺した言葉に耳を傾け、選手とクラブ、そして日本代表の双方が痛みを負わずに100%の力を注げる日程環境を整えることこそが、今、日本サッカー界全体に突きつけられている最大の宿題である。

TEXT=森雅史

PHOTOGRAPH=森雅史

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