アイドルグループ、SUPER EIGHTのメンバーであり、MCやキャスター、ラジオのパーソナリティなど幅広く活躍する村上信五が、自身初となる著書、『半分論』を上梓した。タレント本といえばエッセイや自叙伝が主流だが、本人曰く“哲学書”。しかも、一言一句本人の手によるものだ。

自らの経験をとおして導きだした、心が楽になる思考術
「1ヵ月半くらいで書き上げたんですが、生みの苦しみみたいなものはなかったですね。自分の頭のなかを整理しながら、思考を言語化していったら、どんどん書きたいことが出てきて。編集さんに『これ、終わりませんわ』と言ったくらい(笑)」
こうして完成した250ページ超えの大作は「人生において起きるすべての事象に対して何事も半分くらいに考え、結果を捉えてしまってもよいのではないか」という言葉から始まる。それは、10代から芸能界に身を置き、浮き沈みの激しい世界で、長きにわたって活躍してきた村上が、自らの経験をとおして導きだした心が楽になる思考術だ。
例えば仕事。どんな結果になろうとも、往々にしてそこには自分ではどうにもできない要素が絡んでくる。そこで村上は言うのだ。「半分は自分の責任だけど、半分は誰かのせい。責任転嫁しろとも、手を抜けというわけでもないけれど、そのくらいの心持ちでよいのでは?」と。
「迷っている時に、他の人にアドバイスを求めることがありますよね。それって、他の人の意見を聞くことで決断の責任を半分にしているんだと思うんです。でも、それでいいんちゃうかなと。『失敗するかもしれないけど、その時は助けてな』って、心が少し楽になるから。そういう心持ちでいれば、悩みってなくなると思いませんか?」
同時に、村上はこうも説く。
「『コレしかない』と確固たる決意を持つのは素晴らしいけれど、残念ながらそのとおりに行かないことのほうが多いと思います。ならばひとつに絞らず、AもあればBもあると二択を軸に考えたらいい。さらに、AでもBでもないグレーゾーンの幅を広く持てば選択肢が多くなって、人生楽しいんじゃないでしょうか」
全力で取り組みつつも、適度に肩の力を抜き、結果に一喜一憂することなく、“次”に向かって切り替える。半分論とは、そんな風に、軽やかで柔軟で、たくましい思考を指すのだろう。そして、この思考が村上の幅広い活躍につながっているように思える。
実は、生活困窮家庭への寄付プロジェクト「ケーキのWA」に、大阪観光局の事業「日本の観光ショーケース」、NFTを活用したアプリの考案など、ここ数年エンタメ界以外の活動に積極的に取り組んでいる。なかでもユニークなのが、農業系スタートアップ企業、ノウタスでのブドウの新種開発だ。パーソナリティを務めるラジオ番組のゲストとして出会ったノウタス代表、髙橋明久氏と意気投合。農業が抱える課題に関心を持ち、“社員”になったのである。
「広告塔ではなく、きちんと関わりたかったので、(所属)事務所とも相談し、社員にさせていただきました。名刺の作法からパワポの使い方、プレゼンに営業と、いろんなことを学べ、激動の2年間でしたね。会社組織や仕事の流れなど、知らないことを知るのは大変やけど、ものすごく楽しい! 最近、100%自費で、僕の口癖とかを搭載した“AIシンゴ”を開発しているんですよ。AIの勉強始めたらハマって。これ、エンタメに活用できたら面白いんちゃうかなと。僕に不測の事態が起こった時も、AIシンゴは24時間365日稼働できますからね(笑)」
“半分論”を武器に、村上信五はこの先も未知の世界に軽やかに挑み続けるに違いない。
村上信五/Shingo Murakami
1982年大阪府生まれ。2004年にCDデビュー。SUPER EIGHTとして活動する他、ソロでも活躍。『EIGHT-JAM』(テレビ朝日系)、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)、『村上信五くんと経済クン』(文化放送)にレギュラー出演中。