ABEMAの番組『愛のハイエナ』の超人気企画「山本裕典、ホストになる。」。そのなかで俳優・山本裕典にホストとしての心意気とテクニックを熱血指導するのがホストクラブブランド、エルコレのプロデューサー“軍神”こと心湊一希だ。強い組織をつくる指導力と相手の心を摑むコミュニケーション術、そしてホストへの転身後に圧倒的な成功を収めた激動の半生を探る。インタビュー第3回は、相手の心を掴むコミュニーケーション術について。【他の記事はこちら】

女性を喜ばせる秘訣は“脚本を書く”こと
トップ営業マンとして活躍、自身の会社も立ち上げビジネスパーソンとして順風満帆な日々を送っていたはずの心湊一希(みなといつき)は、34歳で一念発起しホストの世界へ飛びこむ。
「営業の仕事でいろんなものやサービスを売りましたが、自分を商品にして売ったことはなかったので挑戦してみようと。実際、ホストを始めてみると営業マン時代の経験がかなり活きました。
営業って相手のことを好きになって、その人のために尽くすのが仕事でしょう? 自分の言葉が相手に響かないこともありますが、ならどうすればいいか考えて実践することでどんどん道が拓ける。お客様が喜んでくれて僕も楽しくてお店も繁盛するって、こんないい仕事ないですよ!」
とはいえ、周りは自分よりもかなり若く経験のあるホストばかり。そのなかで頭ひとつ抜けるため、心湊が心がけていたことがある。
それは、“会話の脚本を書く”ことだ。
「どんな会話をして、どういう表情をして何をして、相手がこういう反応をしたらどう切り返して笑顔にするか……。あらゆることを細部まで一度イメージして、頭のなかで脚本を書いておくんです。
漫才だってドラマだって、面白いエンタメにはちゃんと台本や筋書きがありますよね。ホストは人を楽しませるプロなんだから、相手を笑顔にするための演出プランを念入りに準備しておかなくてはいけないと思います」

1982年千葉県生まれ。デイトレーダー、営業マンを経て起業を経験した後、34歳でホストに転身。1年目から年間売り上げ1億円を達成し、その後も3年連続で1億円を超える成績を残す。月間最高売り上げは5500万円に達し、圧倒的な成績を収めた後にプレイヤーを引退。現在はホストクラブのブランド、エルコレのプロデューサーとして、新宿・歌舞伎町で「Lillion」と「LiTA」、「MIST」、大阪・ミナミで「GO」を手がけている。ABEMA『愛のハイエナ』の人気企画『山本裕典、ホストになる。』にて、山本裕典を指導する様子が大きな話題に。また、リアルホストドキュメンタリー『エルコレ〜歌舞伎超TV〜』では演者として出演している。
ホスト業界を根本から変えて悪いイメージを払拭する
エンターテインメントを作りだす意識で、相手との会話も脚本に起こす。
綿密に練られた演出と言葉で多くの人の心を掴み、入店わずか2ヵ月でNo.2の売り上げを叩きだすことに。しかし心湊は、その時点ですでに自分個人の売り上げよりも店全体の利益を考えるようになっていた。
「『業界未経験の自分になんでみんな負けるのか、悔しくないのか』って、他のホストをあえて煽ったんです。かなり嫌われましたけど(笑)」
他のホストたちも心湊に負けじと意地を見せ、その結果店の売り上げは1ヵ月で1億超えに。心湊自身も1年目にして年間売り上げで1億を達成。他のホストクラブへ移籍した後も、自己最高月間売り上げ5500万という金額を叩きだすなど圧倒的な成功を収めた心湊だったが、わずか4年でプレイヤー引退を決める。
「ひとつの場所に留まっているんじゃなくて、環境を変えていくのが好きなんです。それにプレイヤーとして働いている間に、ホストクラブ業界には搾取の連鎖がある、酷い世界だってことも痛いほどわかった。だから、僕の次の仕事はそれを変えることだと思いました」
一部では、従業員に不当な負担を強いるような構造が存在しているホスト業界。そうした業界の悪しき慣習を少しでも変え、一般の人たちが抱くネガティブなイメージを払拭したい――。そう考えた心湊は、ホストクラブのプロデューサーとして動き始めた。
「マネジメントやマーケティングの知識も経験もないオーナーが、他の世界では満足に働けないような未熟な男の子たちをかき集め、金を稼がせてそれを搾取する。こんなことがまかり通っている現状は変えなきゃいけないし、働く男の子たちもそこから救わなければいけない。
そのうえで僕はこのホスト業界を、誰もが楽しめるエンタメの世界にしたい。イメージの悪いホスト業界だからこそ、一般の企業よりもコンプライアンスに厳しくなきゃいけないし、マーケティングもしっかりデータ分析して、道筋をたててお店も経営していこうと決めたんです」
第4回に続く。