世界的ヒット作『ガンニバル』の完結編となるシーズン2が2025年3月19日よりディズニープラス スターで独占配信。主人公の阿川大悟を演じた柳楽優弥は「単なるホラーとして観るのはもったいない」と語る。インタビュー後編。#前編

時代の終わりと始まり
2022年にディズニープラス「スター」で独占配信された『ガンニバル』のシーズン2が2025年3月に配信開始された。限界集落を舞台とし、禁忌をテーマにした本作だが、主人公の阿川大悟を演じた柳楽優弥は「単なるホラーとして観るのはもったいない」と語る。
「もちろんホラーやサスペンスとしても良質なエンターテイメント作品に仕上がっているという自信はあります。でも自分であらためてこの作品を見たときに、現在の日本社会のあり方みたいなものも含まれているように思いました。
誰もが悪いとわかっている、でも変えられない状況があり、そこは強大な権力で守られている。時代を変えるには誰かが立ち上がり、立ち向かっていかなければならない。
僕自身は演じているとき必死だったし、ただ家族と自分の正義を守るために戦う男のように感じていました。
でももしかすると監督はそこに日本という国の今を見ていたのかもしれません。古い時代の終わりと新しい時代の始まり、そこに当然のように起きる凄惨なバトルを、舞台となった供花村をとおして描いたのではないでしょうか」

“Jドラマ”をもっと観てほしい
シーズン1は、日本だけでなくグローバルでもヒットを記録。柳楽は、高揚感と肯定感を感じながらシーズン2の撮影に望んだという。
「僕は日本の映像作品で世界と勝負したい。日本のスタッフ、キャストの力を世界に示していきたいと思っているんです。
今回の場合はドラマ、いわば“Jドラマ”ということになるんですが、ディズニープラスの配信ということで、シーズン1は海外でも多くの方に楽しんでいただけた。プレゼンテーションでシンガポールに行ったときも韓国をはじめ、海外の方から『面白かった』と言ってもらえたんです。
まさに自分がやりたかったこと、そのスタートラインに立てたかなと。もちろん日本のファンの方からの声もありましたし、よし、やってやるぞって気分で撮影に臨めました」
現代の日本という国の縮図
柳楽の狂気をはらんだ迫真の演技が物語の大きな推進力になっているのは間違いないが、柳楽以外のキャストも名演も見逃せない。
大悟の妻を演じた吉岡里帆、敵対する事受けの新しい当主は笠松将。倍賞美津子や中村梅雀、六角精児といったベテラン勢の怪演も供花村のおどろおどろしさに拍車をかける。
「この作品には俳優もスタッフもハートのあるエネルギーの強い人が集まった。それが作品の迫力に繋がっているんだと思います。
緊張感のある現場でしたが、みんなプロですから現場を離れた瞬間に和気あいあいと楽しむ。ロケのときみんなでカラオケもしましたよ。激しいアクションも多いし、撮影自体は大変でしたが、楽しむことができる現場でした」
作品の見どころをあらためて聞いた。
「アクションもすごいですけど、やっぱり人間そのものを見てほしいですね。さまざまな人の思い、そして裏切り。村にまつわる歴史的な謎が絡み合った物語ですが、ラスト30分でそれぞれのキャラクターの本質みたいなものが見えてくると思います」
柳楽自身にとっても思い入れの強い作品に仕上がったという。
「この作品を現代の日本という国の縮図のように見る海外の方もいて、それも面白いし新鮮。ああ、そういう見方もできるのかなって。
海外作品と戦っているつもりはないんですが、僕は日本の映像の力を信じているので、その魅力をこれからも発信していきたい。“Jドラマ”をもっともっと世界に観てもらえるように頑張っていきます」

1990年東京都生まれ。2004年『誰も知らない』で史上最年少のカンヌ国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞。以後、多くの映画、ドラマで活躍。演技力の高さで定評があるが、『ガンニバル』では激しいアクションも見せる。
<衣装クレジット>ブルゾン¥48,400(ティントリア マッティ 954/トレメッツォ TEL:)03-5464-1158) その他はスタイリスト私物