PERSON

2025.03.13

多彩な球種を操る、ソフトバンクの次世代投手・大津亮介は遅咲きだった

プロ2年目の2024年、中継ぎから先発に転向し、リーグ優勝に大きく貢献したソフトバンク・大津亮介がスターとなる前夜に迫った。

日本製鉄鹿島時代の大津亮介。

中継ぎから先発に転向、リーグ優勝に大きく貢献

2025年2月14日、3月5日と6日にオランダ代表との強化試合を行った侍ジャパントップチームの28人。初選出が20人という代表チームの将来も見越した選出となっているが、投手陣のなかで貴重な存在となりそうなのが大津亮介だ。

ルーキーイヤーの2023年は中継ぎとして46試合に登板して2勝、13ホールドをマーク。2年目の2024年には先発に転向すると、夏場以降に少し調子を落としたものの19試合に先発して7勝7敗、防御率2.87という結果を残してチームのリーグ優勝にも大きく貢献した。

才能が開花し始めたのは大学4年

そんな大津は2022年のドラフト2位で入団しているが、アマチュア時代は早くから評判だったわけではない。

九産大九州では主に内野手としてプレーしており、2年春に出場した選抜高校野球でも背番号は13で、試合にも出場することなく大会を去っている。ちなみに当時のチームのエースは今シーズンからDeNAでプレーしている同学年の岩田将貴だった。

本格的に投手に専念して才能が開花し始めたのは帝京大に進学後のことだ。ただ投手歴の浅さもあって3年まではリリーフで短いイニングの登板に終わり、4年春は新型コロナウイルス感染拡大の影響でリーグ戦が中止になるなどアピールの機会は多くなかった。

ようやくプロも狙える選手として認識したのは4年秋になってからである。特に印象に残っているのが2020年9月19日に行われた筑波大との試合だ。当時のノートを見ると、以下のようなメモが残っている。

「大学生にしてはまだまだ細身だが、手足の長い投手らしい体つきで、フォームに伸びやかな感じがある。ゆったりとした動きで左足を上げ、軸足にしっかりと体重を乗せてから直線的に捕手に向かってステップし、全体的な動きもスムーズで躍動感がある。

気になるのは少し左足を着地してから上半身が前に出てくるのが早いところ。体が正対するのも少し早く、打者からするとタイミングが取りやすいように見える。

それでもリリースの感覚が良く、左右のコントロールも安定。カーブは落差があり、スライダーも手元で鋭く変化する。フィジカル面が強化されて、球種も増えてくれば将来的にはプロ入りも十分狙える素材」

この試合で大津は6回を投げて8安打を許したものの、与えた四死球は0で、わずか66球で1失点としっかりと試合を作り勝利投手となっている。ストレートの最速は147キロをマークし、数字に見合うだけの勢いも感じられた。

大学から社会人で球種・フォームが成長

結局、大学では実績が乏しかったこともあって卒業後は社会人野球の日本製鉄鹿島に入社。1年目から都市対抗予選でも登板するなど経験を積んでいる。

そしてドラフト指名解禁となった2022年、大津はさらに成長した姿を見せることになる。この年の3月10日に行われたJR東日本とのオープン戦ではリリーフで2回を投げて1失点だったものの、130キロ台中盤のフォークとツーシームも駆使して2奪三振を記録。ストレートとスライダーの良さを残しながら、投球の幅をしっかり広げていることを印象づけた。

また7月に行われた都市対抗の本選でも先発を任されると、立ち上がりに苦しんだものの、その後はしっかり立ち直って8回を投げて3失点と試合を作り、チームの勝利にも貢献している。

この時のメモは以下のとおりだ。

「好調時に比べるとストレートの勢いは少し物足りなかったが、アベレージで143~144キロはマークしており、数字以上にボールの質の良さを感じる。

フォームの良さは大学時代から変わらないが、さらに左足を踏み出す時に“間(ま)”を作れるようになった。そのため140キロ台中盤でも打者は差し込まれることが多い。

(中略)

カーブ、スライダー、カットボール、フォーク、チェンジアップの変化球も腕を振ってしっかり操る。体が細いのは相変わらず気になるが、逆にここから筋肉量増えればさらなるスケールアップも。20代後半で大成しそうな雰囲気は十分」

こうして見ると、大学から社会人で球種、フォームの両面で成長してきたことがよくわかるだろう。またここで取り上げた3試合の記録を振り返っても与えた四球はわずかに1と、常にコントロールが安定していたことも特筆すべき点だ。

それが2位という好評価でのプロ入りに繋がった一因とも言えるだろう。

冒頭でも触れたようにプロ入り2年でリリーフ、先発の両方で結果を残してきたことは大きなプラスである。ソフトバンクの先発投手陣はベテランと外国人への依存度が高いため、そういう意味でも大津の存在は大きい。

順調に成績を伸ばしていけば、2026年のWBCで侍ジャパン入りも現実的な目標となりそうだ。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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