PERSON

2025.03.03

約49億円を配った前澤友作は、なぜ「お金配りはもうしない」と決めたのか?

1兆円企業を一代で築いた男、前澤友作。2024年2月にカブ&ピースを設立し、「国民総株主」の実現に向け動き出した稀代の経営者が描く未来、ZOZOでは成し遂げられなかった理想とは? 前澤氏初の著書となる『国民総株主』の一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はこちら】

前澤友作「国民総株主」

お金配りを始めたきっかけ

お金を配るなんて不思議に思われるかもしれませんが、僕は数年間で約49億円を見ず知らずの人たちに配りました。

初めてお金配りをしたのは、2019年の1月。当時、僕はZOZOの社長でした。1月1日から始まるZOZOTOWNの新春セールをいかに盛り上げるか。ZOZOとして新春セールにかけられる広告予算には限度がある中、社長である僕が個人の資金でPRする分には予算は自由だろうと。会社ともいろいろ話した結果、個人的に「お年玉キャンペーン」をツイッター(現・X)上で実施し、ZOZOの新春セールのPRも同時にすることにしたんです。

これが、最初の「お金配り」でした。

最初のお金配りでは、100万円を100人に配りました。個人資産1億円を使って「100万円が100人に当たるから、みなさんZOZOの新春セール、見に行ってみてね!」と、軽いノリでした。

でも、いざやってみたら、ものすごくバズった。記録としてはリツイートが500万件を超えました。後々ギネス世界記録の公式認定証を頂くことになるのですが、当時のリツイート記録を大幅に更新して、大キャンペーンに発展していったんです。

「みんな、こんなにお金に困っていたんだ」

盛り上がったこと自体はそれはそれでよかったのですが、お金配りをやった結果、いろいろなことに気づかされました。

まず一番に思ったのは「とにかくみなさんお金に困っている」ということ。本当に困っている人がたくさんいて、喉から手が出るほどその100万円を欲している。生活苦でどうしようもなくて、すがるような気持ちでこのキャンペーンに応募している。それまでやっていたツイッターでの発信や、それに反応する人とのコミュニケーションでは感じられなかったそうした声に、お金配りをしたことをきっかけにどんどんと気持ちが動かされている自分がいました。

そんな声に接するたびに、「お金配り」に対する考え方がだんだんと変わっていきます。単なる「ZOZOを盛り上げるためのキャンペーン」から、「このお金配りを通して、苦しい思いをしている人たちを救えないか」みたいな意義あるものに。

その後もいろいろなお金配りキャンペーンをしました。
たとえば「シングルマザーや、シングルファザーの方を対象にしたもの」だったり、「夢ややりたいことがある方を応援するもの」だったり。

結果として、トータルで総額約49億円の私財を約280万人に配りました。

お金を配れば配るほど、虚無感に駆られた

でも、やってもやっても、ぜんぜん足りないんです。逆に、やればやるほど、変に期待させてしまったり、苦しい思いをしている人たちの声が自分のもとに寄せられたりして、自分自身もだんだん苦しくなっていきました。

「こんなに困っている人がまだまだたくさんいる。誰かの役に立っているつもりでいたけど、まだまだ自分の力なんて小さい。つらい思いをしている人たち全員の声には、とてもじゃないけど応えることができない」
「むしろこの行為自体が自己肯定のため、自分の欲を満たすためみたいになってはいないか」
そんな虚無感のような、自己嫌悪のようなものに陥ってしまいました。

最後のお金配りは宇宙からとなりました。そのときはあんまり深く考えずに、応募してくれた人全員に500円を贈ろうと。もらった人も、宇宙からってことできっと思い出にもなるし、喜んでくれるだろうって。

「次はお金じゃなくて株を配ろう」

地球に戻ってから、次の自分の人生について考えていました。

お金配りで聞こえてきた困窮の声、宇宙から見た儚はかなく美しい地球。

この先自分にできることは何だろうと。実は、「株を配ろう」というアイデアは、今から17年前くらいに考えていたものです。
ZOZOの社長だったときに、すべてのお客さまに株を配りたいとの思いから至ったアイデアです。これを実現させられないか。事業を通して株を配る方法はないか。

僕は第二の人生のテーマを決めました。

お金に困る人を1人でも少なくしたい。お金配りなんていうその場限りの方法ではなく、もっと根本から持続的に誰かを救って、誰かの役に立つことがしたい。
この世の中は資本主義だ。資本を持っている人に有利にできている。それなのに残念ながら日本人で株を持っている人は3割にも満たない。ここから変えていかないと根本的な部分の解決にはならない。

「そうだ、株だ」
「株をすべての人に持ってもらうところから始めればいいんだ」
「国民総株主だ!」

準備がようやく整いました。
なんやかんやで宇宙から戻って約3年。
遂に動くときがきました。

これから僕が配るのは「株」です。
株をみんなに持ってもらって「国民総株主」を目指します。

【その他の記事はこちら】

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スタート:開始予定時刻 6:00~
チケット:¥1,000,000~(1組最大3名)
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TEXT=前澤友作

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