PERSON

2025.02.03

挫折をして落ち込んでいる人は「挫折をできた人」であり、成長の見込みがある

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「志望していた仕事に就けず、挫折をしてしまい落ち込んでいます。今後、どのように自分と向き合っていけばいいのでしょうか?」という御相談をいただきました。

就職、異動、進学、さまざまな変化が訪れる春は、さまざまな挫折が起こりうる季節。

誰もが挫折をするものですが、自己嫌悪、自己不信になった自分をリカバリーしていく手立ては、なかなか見つけることができませんよね?

そこで今回は、これまで約1万人の若者の「挫折」や「失望」を目撃してきた僕が、彼らにかけてきた言葉と、「挫折をして落ち込んだときの思考法」をシェアしていきたいと思います。

「挫折をした人」は「挫折ができた人」でもある

まず、いま挫折をして落ち込んでいる人は「見込み」があります。

スポーツの試合で負けてもヘラヘラ笑っている人は挫折をしませんが、悔しさが湧きあがる人は挫折をします。

あなたは後者で「勝とうとしていた人」、言い換えると「成功させようとした人」だからです。

エベレストに登頂した人も、フルマラソンの完走者も、達成の動力源は「成功させようとした」から。

あなたも同じ資質の持ち主なので、まずは挫折をした自分を赦し、自分の美点を誇りましょう。

吉本NSCには、全国から「自分はおもしろい」と信じている若者が入学しますが、やがてレベルの高さを痛感し、挫折をする生徒が数多くいます。

僕はまず、そんな彼らに「挫折したこと」でなく「挫折できたこと」の意味を伝えるようにしています。

「君は、芸人になりたいと思い、故郷から出るというアクションを起こしたことで挫折をしたよね。ということは、挫折ってのは挑戦や行動を起こした人だけが手にできる戦利品で“挫折できる場所に来た”とも考えられないかな?」と。

そう伝えると、挫折を“成長の階段の一つの段差”として前向きにとらえてくれます。

実際、僕自身も田舎から都会へ出てNSCに入学し、同期の野性爆弾、ブラックマヨネーズ、次長課長、チュートリアル徳井らのレベルに面を食らい、数年で芸人を廃業しています。さらに、作家に転身してからも、クビ、番組打ち切り、劇場閉鎖など幾多の挫折を味わいました。

しかし、それらはすべて、地元を飛び出したり、転職をしたり、企画を出したり、アクションを起こしたからこそ。新しい行動を起こしたので、新しい挫折がやってきただけ。

それを「また挫折してしまった」と思うか、「これは新しい挫折」だと思考できるか、そこが大切なんですね。

挫折はしていいけど屈折はするな

前述したように、挫折は誰もがするものです。一度も骨折していない人はけっこういますが、一度も挫折をしていない人は滅多にいない。朝の満員電車も、大勢の人が乗っているのではなく、大勢の挫折が乗っている。それくらい“人生のあるある”です。

しかし、なかには挫折から立ち直れない人もいます。僕の知見だと、そういった方は“挫折をこじらせている”ケースが多い、言わば“屈折してしまっている”んですね。

例えば、昔のNSC生に、自分の漫才に自信があるのに評価や成果につながらず、深く落ち込んでいる生徒がいました。

二人で話をしてみると、「相方が悪い」「客が分かっていない」「講師の評価が平等でない」など、堰を切ったように感情をあらわにしました。

このように“自分は正しいけど世間がおかしい”と思考しはじめたら要注意。ひどくなれば心が病むか、他者に危害を加えてしまいます。

僕は、自分の恥ずかしい挫折経験を彼に話しました。当時の僕が屈折した考えだったから芸人廃業につながったとも伝えて、こんなことも言いました。  

「もし僕がジグソーパズルだとしたらね、どの挫折も“現在の自分をつくった大切な1ピース”だったと感じるよ。たぶん1ピースでも欠けていたら、こうやって講師をやっていないと思う。挫折は行き止まりのように見えて、曲がり角だったりするから、もうちょい壁に沿って歩いてみたら?」と。 

その後、彼は無事にNSCを卒業して芸人を続けてくれましたが、今は地元に戻って働いているそうです。

毎年、彼から届く新年のあいさつには心が和みますが、しっかりサポートできたのだろうか……。これも一つの挫折として胸に刻んでいます。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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