PERSON

2025.01.18

鳥羽周作シェフ「センスや感覚ではなく、結局はロジック」

仕事が上手くいく人といかない人の差はどこにあるのか? それは「いかに他者への想像力を発揮し、意中の人にモテるかが鍵」と語るのが、「sio」オーナーシェフの鳥羽周作氏だ。多くのクライアントに選ばれ続けてきた鳥羽氏が、そのノウハウを伝授する『モテる仕事論』より一部を抜粋・再編集して紹介する。最終回は、料理の味にもビジネスにも大事な“ロジック”について。【その他の記事はこちら】

鳥羽周作

味をロジカルに考える「うま味のリュックサック」とは

ビジネスにおいて一番ポイントになるのは、センスや感覚ではなく、結局のところロジックがあるかないかだと思います。

ロジックは努力で得られるものであり、センスや感覚より強い。センスや感覚は、あくまで個人的なもので、「わかる人とわからない人」の壁に阻まれてしまう。

一方、ロジックは普遍的です。壁がなく、場合によっては無限の広がりがあります。

さらにセンスや感覚は、どこかあやふやで不安定ですが、ロジックは揺るがない。センスや感覚で物事に向かうとギャンブル性が出てしまいますが、ロジックだとそういうことはありません。勝つべくして勝つということです。

例えば、相手に何を伝えるか。もう少し強い言い方をすると、いかに相手を「刺す」か。そこで一番効果的なのはロジックです。

僕も以前は、少しもロジカルではなく、「気合いを入れたら必ず刺さる」とか、「とにかく、まくしたてればいい」とか、そんな感覚的なことばかり考えていました。でも経験を積むうちに、感覚よりもロジックの方がずっと強いことがわかりました。

例えば、うちの店では僕が厨房にいなくても、僕の味がそのまま出せていることに、よくお客さんが驚かれます。こう言うと、僕が細かいレシピでスタッフを管理していると思われるかもしれませんが、全くそうではありません。

そもそも僕はスタッフをうるさく縛り付けたりはしません。ただ、ものすごく密にコミュニケーションは取ります。

料理についても、僕はロジックに落とし込みます。そのロジックがしっかりスタッフに伝わり、浸透しているため、僕がその場にいなくても、僕が作るのと変わらない料理ができるのだと思います。

僕がスタッフに伝えるロジックの一つに、「うま味のリュックサック」というのがあります。

例えばバターは、脂の固まりですから、無塩で食べてもおいしく感じません。塩が入って、初めておいしく感じます。かつお出汁も同じです。かつお出汁も塩が入っていないと、香りだけでうま味を感じない。塩を加えることでおいしく感じます。

つまり、うま味というのは得体の知れない、何かフワフワしたもの、形のないものなのです。それがどういうものかはっきりさせるのが、塩なのです。ぼんやりしたところに塩が入ると、うま味というリュックサックが現れる。

うま味のリュックサックには容量があります。塩が多すぎると、形崩れを起こし、しょっぱさが前面に出てしまう。一方うま味の量が多いと、苦味や酸味など、ほかのいろんな味を詰められます。つまり塩が出せるのは、うま味の輪郭です。うま味の中に詰めるものを全部塩にすると、しょっぱくなってしまいます。

輪郭を出せるのは、塩だけではありません。酸味でも輪郭が出せる。うま味の容量を10として、塩を6、酸を4にすると、塩を10にするより、輪郭がくっきりします。

でもそれだと今度は味が尖るので、甘味を加えると、ほどよく甘じょっぱくなったり、甘酸っぱくなったりします。そのバランスで味は決まります。

鳥羽周作/Shusaku Toba
レストラン「sio」オーナーシェフ。sio代表取締役。 Jリーグの練習生、小学校の教員を経て、31 歳で料理の世界へ。 2018年「sio」をオープン。同店はミシュランガイド東京2020から6年連続で掲載。 現在、「sio」「sio Aoyama」「o/sio」「o/sio FUKUOKA」「㐂つね」「ザ・ニューワールド」「おいしいパスタ」「NAGANO」「FAMiRES」と9店舗を展開。 書籍 / YouTube / SNSなどで公開するレシピや、フードプロデュースなど、レストランの枠を超えて様々な手段で「おいしい」を届けている。モットーは『幸せの分母を増やす』。

TEXT=鳥羽周作

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