仕事が上手くいく人といかない人の差はどこにあるのか? それは「いかに他者への想像力を発揮し、意中の人にモテるかが鍵」と語るのが、「sio」オーナーシェフの鳥羽周作氏だ。多くのクライアントに選ばれ続けてきた鳥羽氏が、そのノウハウを伝授する『モテる仕事論』より一部を抜粋・再編集して紹介する。第4回は、手土産を通して考える「モテる」について。【その他の記事はこちら】
モテる手土産の選び方
細かい気遣いの違いが如実に表れるのが、手土産です。
例えば飲食店に手土産を持っていく時、鈍い人は生のシューマイとか、調理しないといけないものを持っていったりする。
多少わかっている人は、調理しなくていいもの、いなり寿司やかつサンドを持っていく。ただでさえ調理で忙しいのに、そこに調理しなきゃいけないものを持ってくる人は、かえって迷惑。そういうことに気付くかどうかが、想像力だと思います。ホールケーキやメロンもあまりいいとは言えません。切ったり、皿に盛ったりしないといけないからです。
お酒などもそう。相手の好きな種類や銘柄が何かという以前に、初めての場合は、その人がまずお酒を飲むかどうかもわからないでしょう。手土産にはそういう想像力が、すごくはっきり表れると思います。
想像力とは、本当にちょっとした気付きです。相手をリサーチしたりするまでもなく、相手の属性やタイミングを考えたらわかることがほとんどです。だから「モテ」の初心者は、まずそこから始めるのがいいのではないでしょうか。
例えば上司にコーヒーを出す時、「今日はいつもとは違う、部長のお好きそうなのを淹(い)れました」と言って出せば、「おっ、何?」と言ってくれるでしょう。モテるとっかかりは、日常に溢れています。モテようと思えば、いつでもモテることができる。今からモテようと思えば、モテる。要は気付くかどうかです。
LINEの返信も同じです。今までは既読で放置していたのが、既読と同時に「すぐ確認します。今しばらくお待ちください」と一言添える。こうすれば、もうモテます。既読になって放置されると不安になるタイプの人もいるでしょう。だから、この一言が効くんです。
「ありがとうございます。何日までに確認します」。この返信が、相手が不安にならない気遣いになり、その結果モテることになります。LINEの会話の途中で、急にいなくなるのではなく、「ごめん、今から2時間ほど買い物に行ってくるね」と一言断るのが、モテるLINE。
自分の店が流行ったり、料理のコースが評価されたりするのも、これと同じです。僕はお客さんに「モテている」のです。
相手が男性でも女性でも関係ありません。また「モテる」ことは、あらゆるジャンルに通じます。恋愛、接客、ビジネス……。モテ方はいろいろありますが、根は一つにつながっていると思います。
ビジネスのクライアントに対しても同じです。相手が落ち込んでいる時には、その人が言ってほしい、元気になれる言葉をかけるし、好きな物がわかれば、それを用意してプレゼントします。こちらの強い思いを伝えたい時は手紙も書きます。
そういうことを実行し、続けられる人だけが見られる景色がある。仕事でも恋愛でも、「僕はこの人が好きだ。一緒に何かやりたい」と思った時、僕にとって唯一大事なのは、そのピュアな思いをずっと持ち続けられるかどうかだけです。
鳥羽周作/Shusaku Toba
レストラン「sio」オーナーシェフ。sio代表取締役。 Jリーグの練習生、小学校の教員を経て、31 歳で料理の世界へ。 2018年「sio」をオープン。同店はミシュランガイド東京2020から6年連続で掲載。 現在、「sio」「sio Aoyama」「o/sio」「o/sio FUKUOKA」「㐂つね」「ザ・ニューワールド」「おいしいパスタ」「NAGANO」「FAMiRES」と9店舗を展開。 書籍 / YouTube / SNSなどで公開するレシピや、フードプロデュースなど、レストランの枠を超えて様々な手段で「おいしい」を届けている。モットーは『幸せの分母を増やす』。