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2024.06.10

部下のモチベーションが上がらない…吉本人気NO.1講師が教える「よいコーチング術」とは

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「部下のモチベーションを上げたいです。うまくコーチするコツがあれば教えてください」という依頼をいただきました。

これは、本コラムを読んでくださっている多くのリーダーも抱えているお悩みではないでしょうか?

そこで今回は、僕が1万人の芸人の卵に実践してきた、「若手のモチベーションの上げかた」をシェアしてみたいと思います。

そもそもリーダー側のモチベは上がっていますか?

まず、部下のモチベーションを上げる「よいコーチング」とはどういったものでしょう?

嫌われ役に徹する? 私見は捨ててホメて伸ばす?

いえいえ、どちらも違います。

僕に言わせれば、「よいコーチング」とは“相手のモチベを上げながら、自分のモチベも上がっていく手法”のことです。

いくら部下の「やりがい」や「ドキドキ」を引き出そうと思っていても、リーダー自身が指導を通して「やりがい」や「ドキドキ」を見出せていないとうまくいきません。

かつての僕も、若手のやる気をうまく引き出せない講師でしたが、オズワルド、コットン、EXIT兼近くんなど、「未来のスター芸人の、人生初のネタを観ることができる仕事なんだ!」と気づき、やりがいやドキドキ感をもって現場に行くと、どんどん生徒らとの関係が良好になっていった経験があります。

みなさんのポジションも、「新世代の仕事観・人生観を知れるチャンス」といった役得や、「デジタルネイティブ世代からSNS戦略を学べる」といった“教育の外にあるモチベの源泉”が必ずあるはずです。

まずは、私たちリーダー側のモチベを上げることを心がけていきましょう。

モチベを上げるキーは「内鍵」か?「外鍵」か?   

さて、部下のモチベを上げる手法は大きく2種類です。私たちリーダーが「外側から扉を開ける」か、彼ら自身が「内側から扉を開ける」かです。

彼らが内鍵をかけている場合。いろいろ手を尽くしたくなるでしょうが、いくら外からノックしても、ただの「うるさい上司」になるだけ。

“モチベを上げるキッカケは彼らの内側にある”ということを知り、辛抱強く「その時」を待ってみることも必要です。

ちなみにM-1王者・令和ロマンや、最近めきめき知名度を上げているナイチンゲールダンスも、最初は内鍵をかけているタイプでした。

なので僕は、いつか外に出てくる「その日」のために、せっせと周辺環境を整備してみました。

例えば、すでにモチベを上げている他の生徒たちと、参加したくなる授業や、仲間に入ってみたくなる関係性を築いていったのです。

半年後、彼らは自発的に内鍵をあけ、授業に参加し、卒業する頃には、頼れる同期のリーダーになってくれました。

相手が内鍵の場合は、焦らず、相手を否定せず、私たちは“いつか飛び立ってもらう滑走路をせっせと整備する”。そんな感覚が大切なんです。

外鍵タイプのキーは「オリジナルなインセンティブ」

外鍵タイプの相手にはインセンティブ。いわば「報酬」がモチベを上げていく動機になります。

給与アップ、昇進や出世などもそれに当たりますが、リーダーにはそこまでの権限はないので、適切な「評価」や言葉によって「承認欲求」を満たしていく必要があります。

さらに僕は、「オリジナルなインセンティブ」を心がけてコーチしています。これは“自分ならではの報酬”を意味し、お金はかかりません。

例えば、「あなたの人脈で同郷の先輩を紹介する」や、「悩みやストレスを緩和する映画や本を教える」など、自分のキャリアや経験を活かして様々なバリエーションが付与できます。

芸人学校では、意欲はあっても、良き相方とコンビを組めずにいたり、スランプでネタが書けなくなったりして、孤立し、辞めていく生徒が一定数います。

そこで僕は、学校側にお願いして、コンビを組んでいなくてもOK、ネタを見せなくてもOKの「キャラのいいヤツだけ集めて騒ぐ授業」というのをやってみました。

授業を増やすのは負担になりましたが、そこに参加し、自信をつけていった女性徒が、現在の「ぼる塾」なので、自己流のインセンティブを付与してよかったなと思っています。

すぐにうまくできなくてもいいんです。コーチングとは長い旅ですから。焦らず、じっくり、若手を励まし、自尊感情をもたらしていきましょう。

それでは、また来週。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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