放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
「リモートワークに慣れてしまい、人と対面するのが面倒だし、苦手になりました。このままでいいのでしょうか?」という相談をいただきました。
これは、同じ悩みをもつビジネスパーソンも多いでしょう。今月でコロナが5類に移行して丸1年。すっかり「非対面」に慣れてしまい、他者と対面するメリットを見出せない人も多いようです。
そこで今週は、人と対面するのが「苦手、億劫、面倒」な人たちへ、僕が生徒たちに伝えてきた“対面がもたらす3つの得”をシェアしてみたいと思います。
人と会うと、新しい自分と出会える
今3つの学校で講師をしていますが、僕の授業は「オール対面」を推奨しています。
なぜなら、他者と「会う・話す・ふれあう」という行為は、“相手を知る”よりも“自分を知る”利点があるからです。
ギャル系の女性に緊張してしまう自分、メガネ男子に妙にそそられる自分、知らないアーティストの曲を聴かされ、そこからドハマりしていく自分など、対面すると“意外な私が内側からあふれてきます”。
これはビジネスシーンも同様で、新しい人と会えば会うほど、自分の意外なスキル、気づかなかった長所、改善すべきタスクなど“新しい自分と出会えます”。
そして、この気づきは、非対面よりも対面のほうが、より解像度が鮮明になるんです。
ちなみに、M‐1、キングオブコント、R‐1で活躍している教え子たちは、僕の授業で、全国からやって来たライバルと対面することで、「オレは、漫才でなくコント向きだな」「ピン芸人でなくトリオを組もう」など、“新しい自分”を知ってブレイクスルーしていったのです。
いい仕事は「人」が運んでくる
よく成功者は「自分は運がよかっただけ」と言いますが、「運」は“はこぶ”と書くので“能力で勝ちとる”よりも“誰かが運んでくる”と考えたほうが得をします。
この先、AIがどんなに社会進出しても、仕事の入口(人事や企画採用)と、仕事の出口(最終決断や評価)を担うのは人間です。
人間は、身内や知人の子どもにお年玉をあげても、通りすがりの子どもにはあげない生き物です。
運やチャンスも同じで、決定権をもつ人に“知られている人”や“頭に浮かぶ人”が受けとりやすくなります。
その知遇を得るには、フェイストゥフェイスで、他愛もない会話をしたり、タクシーが捕まらずいっしょに歩いたり。リモート会議ではできない雑談や、エピソードを共有したほうが懐に入れたりするものです。
ちなみに僕は、ABEMAの社員さんと会い、何気ないスポーツ談義をしたことがキッカケで、「スポーツに強いですよね?」と、サッカー・カタールW杯の仕事を任され、本田圭佑さんの解説など、大きな話題とヒットコンテンツをつくることができました。
そう、「いい仕事」「やりたかった仕事」も、対面が運んでくる可能性があるのです。
あまり語られない、対面の「タイパの良さ」
最後に、SNSやネット記事の影響もあって「対面はタイパ悪い」というイメージがついていますが、僕はひそかに「対面もタイパがいい」と思っています。
タイパを主眼に置くと、どうしても「対面先に行く時間」「服選びやメイク」「交通費や外食費」などが発生し、億劫になります。
一方で、SNS上で知り合った異性と恋をして、半年間ネット恋愛をしたけど、いざ会ってみると「なんか違った」はよくある話。
逆に、リモート会議上では「なんかイヤなやつ」だけど、会ってみると「案外いいやつ」で、物事が一気に進みだすという“タイパの良さ”は、あまり語られていません。
さらに、「若者は対面がキラい」と思っているリーダーも多いでしょうが、僕の周りの10代・20代は、けっこう対面や会食の機会を欲しています。この“世間の決めつけ”に流されない自分軸をもつことも必要な時代です。