放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
「仕事をこなす量を増やしたい、スピードを上げる方法を知りたいです」という質問をいただきました。
「スピードの話」は「スピード感」が大切なので、早速、8つの業種(放送作家、コラムニスト、小説家、NSC講師など)をこなす僕が実戦中の手法と思考を綴っていきたいと思います。
「回りくどい」手法やアドバイスは遠ざける
ちまたには、「仕事の効率化」を謳った書籍やネット記事があふれていますが、僕からすると「おや?」なアドバイスも多いです。
例えば、よく「仕事が早い人は整理整頓ができている」「まずは仕事環境を整えろ」という教訓を目にしますが、僕が知っている仕事の早い一流クリエーターは、けっこうデスクや部屋がぐちゃぐちゃです。
また、よく「仕事の優先順位をつける」や、「ToDoリストを作成する」といったアドバイスも見かけますが、選別や作成する時間がもったいないし“人は「動く」より「判断」で疲れていく生き物”です。
「整頓」「順番決め」「リスト化」のような“回りくどいアドバイス”は、1泊旅行なのに1週間かけてパッキングしているくらい非効率です。
ゲームのレベル1で、やたら出てくるザコキャラをサクサク片づけていくように“終わらせられるモノから終わらせる”感覚をもつ。まずはこれをインプットして次に進みましょう。
「丁寧」と「完璧」という言葉から離れる
もしも「仕事のスピードを上げる&こなす量を増やすゲーム」があるとしたら、天敵は「丁寧」と「完璧」です。
丁寧に仕事をしたい人、完璧に仕上げたい人はビジネスパーソンの鏡ですが、この2つにこだわり過ぎる人は“仕事量ではなく残業時間が増える傾向”があります。
僕の場合、最初は100点の仕上がりを目指しますが、一定の時間を過ぎてもアイデアが前進しないときは、90点→80点→70点と、完成度を妥協していきます。
「それって、やっつけじゃないの?」と思う人も多いでしょうが、実は「70点くらいかな?」と思って提出した企画のほうが採用頻度は高かったりするんです。
それはなぜでしょう?
ビジネスには「提案者」と「選定者」がつきものですが、私たち提案者が「100点の出来ばえ」を差し出しても、選定者に目利きのセンスがなければ採用にはならないから。
“伝わる人には1ページで伝わるけど、伝わらない人には1万ページでも伝わらないのがビジネス”なので、自我のレベルを落とした70点の仕事のほうが、案外スッと受け取ってもらえたりするのです。
大切なのは、丁寧や完璧といった“正しさ”に固執せず、ピッチングマシーンからポンポン出てくる球を、大谷翔平選手のように軽くクールに打ち返していく。この反復がホームランにつながっていくと感じています。
自分時間を増やすと、こなす仕事が増えるカラクリとは?
最後にもう一つ。仕事のスピードを上げる&こなす量を増やすために、僕は“自分時間を増やす”ことを大切にしています。
「自分時間を増やすと仕事量が減るだけでは?」と考えるのが一般的かもしれません。
しかし、「時間の使い方」と「集中力」は“「余裕がある」ときよりも「余裕がない」ときのほうが高まります。”
そして、仕事のスピードを上げる最大の障壁は“いかにやる気になるか?”なのですが、自分のために時間を割いたあとは、おのずと仕事モードに切り替えやすくなります。
さらに、「やる気」は“起こるのを待つ”よりも“とりあえず始めてみると、そのうち出てくるもの”なので、自分時間を確保することが、かえって仕事のスピードを上げることにもなるのです。
僕の場合、どんなに忙しいときでも、博物館めぐりや、歴史研究といった自分時間を必ずつくっています。
この時間で得た新しい知見が、新しい仕事をさばくスキルにもなる。こうして、多くの仕事をこなせるようになっていくのです。
それでは、また来週お逢いしましょう。