数多ある音楽、本、映画、漫画。選ぶのが難しいからこそ、カルチャーの目利きに最上級の1作品を厳選して語ってもらった。今回紹介するのは、撮影監督/映画監督の今村圭佑。【特集 最上級主義2024】
「劇場でひとり観た映画に人生で二度感銘を受けた」
「この作品を初めて観たのは高校3年の時です。地元のミニシアター系の劇場で観たのですが、ちょうど高校生の時に“映画でも観るか”とたまたま行った先で上映されていたのがこの作品でした。劇場内に自分ひとりだけというシチュエーションだったからかもしれませんが、すごく感銘を受けました。
先生から“将来やりたいことを見つけなさい”と言われていたので、すぐに“映画を撮りたい”と言いに行ったほど。
ただ当時の僕は映画小僧というほどではなく、デートで映画を観る程度。この作品をいいなと思ったのは本当ですけれど、半分嘘をついて大学に進学しました。そういう意味で僕の人生を変えた作品です。
その後、今の仕事目線で改めてこの作品を観て思ったのは、記憶に残っていたリアルな空気感や、草が風でキレイに揺れる感じは、作り手の繊細なこだわりにのっとった演出がなされていたのだということ。技術的なことをまったく知らない高校生の自分がいいなと感じた理由がそこでクリアになりました。
プロフェッショナルとしての細かなこだわりは、時として一般の観客の方に伝わりにくかったりするものです。でも何も知らない高校生にも伝わったのですから、自分の小さなこだわりもきっと伝わるはずだと自信になりました。当時の答え合わせができた二度目に鑑賞した時のほうが、今の自分に強く響いたかもしれません」
この記事はGOETHE 2024年2月号「総力特集:最上級主義 2024」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら ▶︎▶︎特集のみ購入(¥499)はこちら