PERSON

2023.06.26

【YU】音楽生成AIは驚異ではない? むしろ感謝すべきワケとは

AIはアーティストにとって敵ではなく、むしろ相談相手だというYUさん。第5回はAIをテーマにお届けする。連載「大川放送局」とは……

第5回「AI(人工知能)」

ハーイ! みんな元気かい? 僕は気が狂いそうなぐらい元気だよ! 前回の大川放送局は少し堅苦しかったね。読み返してみたんだけど、訳の分からない機械の訳のわからないマニュアル本みたいな感じで、後半は校長のスピーチみたいな話になってしまってsorry! みんなを炎天下の中に置き去りにしてしまったって反省しているよ! まあそれもそれで放置プレイってことでご愛嬌!
 
ところで今回の大川放送局はその名にちなんで放送スタイルでお届けしよう! 今回のテーマは、皆んな大好きアーティフィシャル・インテリジェンスについて。は? また訳のわからないことを大川が言い始めた? sorry! みんな大好きAI(人工知能)についてってことさ! 別に好きじゃない? 別に興味なし? ついてけないので苦手? そんな声もちらほら聞こえてくるけどNONONO!

多分僕たち人類はもう人工知能無しじゃまともに生きていけないところに来ちゃったって話だから、耳をかっぽじってよく聞いてほしい!
まず僕らが好きとか嫌いとかでどうにかなる話じゃない規模感で物事は進んでいる。インターネット?意味わからないから興味ない!って言ってる人2000年初期にいたよね。スマホ?使いこなす自信ないから、私ポケベルでいいわ。いたいた! 僕の周りにもそんな感じの人いたなあ。ポケベルは流石にいないか! とにかく懐かしいね!

電気を発明してしまった人類の僕だけど、やっぱり夜道は暗いし危ないから松明かざすよみたいな? ないない! そんな人いたらその人が危ないよね! すぐに110番! いや119番か。

まあそんなことは置いておいて、AIといえば2022年に元Googleのエンジニアが、ラムダってAIに対して意識が芽生えたかも?的なレポートを公開して、巷で話題になったよね! 僕的にはイヨイヨか!ってワクワクしていたんだけど、どこか遠い国の話なんて思っていたわけ。けどイキナリ今年になって簡単にAIのすんごいパワーを使えるChatGPTとかGoogleBardとか?がリリースされちゃって。AI、近所のコンビニにくる!てな感じで、僕としてはもうパニックさ!

まあ使ってみた心境といえば、アマゾンの奥地しか知らなかった僕が、いきなり渋谷センター街に放り出されて遊んできなよ!って言われた感じ? カオス! まあ、僕としては想像よりも早く僕ら一般ピープルが人工知能の恩恵を受けられることになったので、THANKS GOD(サンクス ゴッド)って寝る前に毎日お祈りしてるのだけど、みんなはどうかな? 

で、何がそんなに便利なの?って思う人がいたら、是非とも自分でググってみてほしい。んまあ、そうすればそのググってみるっていう言葉自体がナウイみたいな感じでノスタルジックに響いちゃう日が近いと感じるんじゃないかな? 使ってびっくり玉手箱。僕の想像力のキャパは余裕で超えてきちゃった。ポッカーンてな感じ。でもね、安心してよ! がっかりすることはひとつもない、僕らの未来はいつだってサンシャインに照らされている! 職のひとつやふたつ失ったとて大したことじゃない! ネバーマインド、ドントギブアップ!

ただし、今までのこれはこうして、これはこう!みたいなものがガシャンガシャンって崩れていく音がうるさくて僕は夜もまともに眠れない! まあそれはそうとて僕ら人類はどうせすぐに適応しちゃうわけだ。そう思わないかい?誰も朝ごはんのオムレツを作るのに火石を打ちつけている奴はいないってことだよ。これから人類の文明がどう発展していくのか、どう崩壊していくのか、心の底から楽しみだ!! ここで一句お届けしよう!

気が狂い 夜もねむれぬ 大川悠

失礼。少し興奮しすぎたみたいだね。深呼吸して、ここからは少し落ち着いて話をしよう。

ちょっと前までの僕は、AIというのが幾ら発達したところで所詮は単純作業の効率化って域は超えられず、芸術や音楽、作詞、コピーライティングはもちろん、斬新なビジネスアイデア、新鋭なデザインアイデアだったり考察や哲学など「クリエイティブ」という領域は決して足を踏み入れることのできない!!
そいつぁ人間様の聖域なのだあ!とタカをくくっていた。ところがどっこいどうだろう。2023年現在、残念ながら僕らがこれまで信仰していたクリエイティビティのヒエラルキーピラミッドは粉々に砕け散ったとさ。ちゃんちゃん。

いや、わかるよ! わかるんだよ君のその気持ち。認めない! 人間の作るものの方がすごい! ロボットなんかに味は出せない!!ってね。ここは素直に現実を受け止めよう。ロボットにも繊細なダシの味がわかる時代が来てしまったのだ。

さて、僕のいる音楽のフィールドの話をしよう。AIにとっちゃ作詞や作曲はむしろ得意分野なのではないか?と感じさせる。つまり、パソコンさえあれば、音楽的な専門知識や経験がなくたって君にも簡単に作曲ができるということだ。

例えば「梅干し」という単語が思いついたとしよう。梅干し、失恋バラードの歌詞を書いてくれとChatGPTに言えば、3秒後にはAメロBメロサビまで書いてくれる。もちろんそれだけの指示だと仕上がりは悪いが、指示の出し方次第ですごいクオリティに十分になりうる。もっとサビで泣ける言い回しは出来ないか?Aメロに白いご飯を登場させたいけど、できる?みたいな感じで、ボタンひとつでバンバンとアイデアをくれる。

伴奏やメロディーを自動で生成してくれるツールもいくつも登場している。まあ、ぽいぽいっと作ったそれが超絶的名曲になりうるということだ。

驚きなのはこれだけじゃない。アーティストにとっては素晴らしき相談者になってしまうのは作曲の面だけではないのだ。例えば、次の曲のプロモーションとして、他の人がやっていなくて、より多くの人に届けるにはどんな手段があるのかを提案してほしい!と言えばいくつもアイデアを提案してくれる。こちらの要求の角度次第で、レコード会社の中で何人ものスタッフたちと何時間も会議して考えたアイデア以上のものが、ものの数クリックで出てきてしまう可能性がある。

なかなか、ショッキングな現実だとは思わないかい? 今までの苦労はなんだったんだって嘆くアーティストや音楽業界人も多いだろう。

もちろん、僕も含めて我々はまだそこまで使いこなせていない。だけど、逆に使いこなせなかったら、難なく使いこなしてくるAIネイティブの次世代が押し寄せてくると思うとオチオチはしていられないなあというのが正直なところだ。

誰かに恋をした時、恋に破れ絶望した時、ただ気持ちをあげたい時、今の自分の状況や環境、心境をAIが解析して、自分の脳波がもっとも揺れ動き、感動する旋律のパターンと文字配列の組み合わせをボタン一つで作って聴ける日がそう遠くないんじゃないかな、なんてことも思う。まあ洋服でいう、プレタポルテからオーダーメイドってところさ。そうなってくると、今ほど作詞作曲するアーティストの需要は無くなってくる。

とまあ、これだけ見ても、AIが単純作業だけではなく、クリエイティブシンキングという聖域に足を踏み入れることに成功していることを感じていただけるだろう。いや、もう、足を踏み入れているどころか、立ち入り禁止の場所で屋台を出して、カーニバルのパレードをして、打ち上げ花火をバンバンと打ち上げている。

でも、何も悲観することはない。これは人類の敗北ではないのだ。いやそもそも誰も勝負なんかしていないので勝ちも負けもない。ただ単純に、考えるという一番めんどくさい行為をAIに託したに過ぎないのだ。作曲でいうと、アーティストが左脳を使って思考するプロセスで感じるストレスを手放すということだ。

そんなことを言うと、人類が考えなくなる! ヤバイ! キケン! NONONO。今度は君の方こそ落ち着く番だ。

僕らは、彼らの登場のお陰で限られた人生の時間と労力をセーブできる。
そしてそのセーブした時間と労力を人類はさらなる高次元への活動へと注げばいいというだけの話なのだ。

メロディーが降ってきた。気がついたら歌詞が出来上がっていた。
そんな名曲が生まれるまでの過程の話を君も聞いたことがあるだろう?
つまり、名曲が生まれる過程で左脳を使った思考プロセスのストレスは必要条件ではないのだ。重要なのは何か創ろうとする動機の方だ。創ろうとしなければ、どんなスーパーAIがあろうと、創られるものはない。

そして僕はこう思う。

暗い部屋の中、机の前に座り肘をついてウーンウーンと思考を張り巡らし、頭で考える時代は終わった。じゃあ僕らはどうしたらいい?

答えはとてもシンプルだと。

部屋から飛び出し、手を動かし足を使い、目を見開き、耳をすまし、五感で、魂で考えろ。

それは僕たち、人間にしかできない。

追伸: ところで、このコラムの一部始終は僕が自分で書いたものだと思いますか? それとも、的確な指示を与えられたChatGPTによって、AIが書いたものだと思いますか?

YU
1989年2月26日生まれ。80'sサウンドをルーツに持ちながら、邦楽と洋楽の垣根を超えていく4人組ロックバンドI Don't Like Mondays.のボーカル。日本や海外での音楽活動やそのファッションセンスが多方面から注目を集めており、唯一無二の存在に。2022年1月9日に配信リリースされた楽曲「PAINT」がTVアニメ『ONE PIECE』の主題歌に。現在、YUがメインDJを務めるレギュラーラジオ番組、Interfm「 "I Don't Like Mondays. THE ONE"」、CROSS FM「GROW! I Don't Like Mondays. YUの "大人のレシピ"」が放送中。2023年7月に行われる国内フェスの「NUMBER SHOT2023」や「LuckyFes」、海外では「BUBBLEPOP」への出演が決定しており、さらに、10月1日(日)より、2023 A/W TOUR "RUNWAY"を開催予定。

■大川放送局
80'sサウンドをルーツに持ちながら、邦楽と洋楽の垣根を超えていく4人組ロックバンドI Don't Like Mondays.のボーカルYUの連載「大川放送局」。ステージ上では大人の色気を漂わせ、音楽で人の心を掴んでいく姿を見せる一方で、ひとたびステージを降りた彼の頭の中はまるで壮大な宇宙のようだ。そんな彼の脳内を巡るあれこれを、ラジオのようにゆるりとお届け。

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TEXT=大川 悠

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