実母との関係について綴ったエッセイ『Dear ママ』を上梓した吉川ひなのさん。インタビュー後編では、パートナーとの関係性、そして娘にモテるパパになるための極意を語る。
子供たちの前では、絶対に夫の悪口は言わない
11歳になる吉川ひなのさんの長女は、食事中に父親の膝に乗ってしまうくらいの「パパ大好きっ子」だという。思春期にさしかかった女の子が、父親にそこまで懐くことは日本では珍しいことかもしれない。そもそも吉川さんは、パパの育児をこれまでどう見てきたのだろう。
「最初は嫌だったんですよ(笑)。夫は子供たちに対してもすごくストレートに言う人で、『傷ついちゃったらどうしよう』と。子供たちが『ダンス見て〜』と踊りを見せてくれた時とか、夫は『全然下手』と普通に言ったりする。冷たい感じがして、後で夫に怒ったりしていました。
けれどよく見ていると、子供たちは全然傷ついていないし、パパのことを嫌いになっていない。むしろ大好きなんです。子供たちを愛したうえで、彼と私はやり方が違うだけなんだと思えるようになりました。子供たちと彼の関係ですから、私が口を出すべきではなかったんです」
吉川さんから見て、夫は「自分を取り繕うことがない」人物だという。だからこそ、子供たちが安心して身を任せられるのだと感じている。
「カッコよく思われたいとか全然ない。その時々で子供たちに本当のことを言って、友達っぽくもいられる。だから子供たちも『昨日パパをマッサージしてあげたんだから、今日はパパがしてよ』とか、遠慮がないんです(笑)」
親を客観視させた、長女の天才的テクニック
父と母が、子供に本音で話し、子供たちはそんな両親に甘える。その光景は、吉川さんが長年、焦がれていた家族の姿そのものだった。
「私は自分が子供の頃、父は母のものだと思っていました。だからすごく遠慮していたんです。母が知らない話を父と先にしてはいけない、父に甘えてはいけないと。だから子供たちを見ていると『本当によかったね、自分のパパのお膝に乗っかり放題で、いいじゃん!』って心から思うんです」
娘モテしている父親だが、吉川さんは「パパがこんなにモテるのは、私のおかげなんですよ」と笑う。
「子供たちの前では、絶対に夫の悪口は言わないようにしています。そして、夫の話をよく聞くことも心がけています。そういう姿を見せることで、子供たちもいつもパパに意見を聞き、参考にしていますね。だから『あなたがこんなに子供に人気なのは、私のおかげだよ』って、本人にも言っています(笑)」
そう意識はしていても、やはり夫婦喧嘩をしてしまう日もある。それでも「子供の前でお互いを責めるのはやめよう」と意識していた2人は、ある日、食卓を挟んで喧嘩とわからないように話し合いをしていたという。
「そうしたら、当時7歳だった娘が『今のパパとママの動画、撮っておいたよ。あとで見てね』と携帯で撮っていたんです。それを見てみたらすっごい険悪な感じで『うわ! こんなふうになっていたんだ、ごめんね!』となりましたよ。長女のこの、喧嘩を止めるテクニックはすごい、天才か!? と思っちゃいました(笑)。戒めにその動画は消していません(笑)」
伝えることを決して諦めない
結婚13年目、子育てを通して、吉川さんと夫との関係性も変化してきた。
「第一子を妊娠中に、夫は『妊娠しているのは君なんだから、俺が飲みに行くのをやめる必要はない』なんて、今思い出しても腹の立つようなことを言っていました(笑)。けれど今は、家族を最優先している夫です」
結婚当時は言えなかったこと、それがどんなに昔のことでも、今でも引っかかっているのなら、伝える努力をする。子供たちに対して正直であろうと意識しているからこそ、夫婦間もいつも正直にいたい。タイミングや言葉を選びながらも、伝えること自体は諦めない。
「『今のあなたなら、あの時、私がどんなに寂しかったかがわかるでしょうよ』って、当時伝えられなかった分は、そういう言い方で伝えています。『確かにそれは嫌だったね』と言ってもらえて、ああよかったと。人間同士だからいろんな時期がありますよね、これまでもきっとこれからも」
いつまでも娘にモテる父親でいたいなら、家族という共同体のベースである、妻との関係性を大切にすべき。吉川さんは改めてそのことを教えてくれた。
※前編は関連記事よりご覧いただけます
吉川さん着用衣装:ワンピース¥ 89,100(edit & co. Dress Me / edit & co. TEL:03-5464-7767) ネックレス ¥6,000(グレイ/ブランドニュース TEL:03-3797-3673) ピアス ¥24,090(ripsalis)、リング ¥38,500(タラッタ/ともにロードス TEL:03-6416-1995)