かつて夢見た暮らしをかなえた仕事人たちの家は、浪漫に溢れている。その家づくりのスケール感はもはや、大人の壮大な遊びなのだ。今回紹介するのは、クリエイティブオフィスキュー会長であり、『水曜どうでしょう』(HTB)など数々の番組の企画・出演に携わる鈴井貴之氏の邸宅。【特集 浪漫のある家】
クリエイティブオフィスキュー・鈴井貴之「クリエイティブに向き合える場所」
札幌からクルマで約90分、北海道の中部に位置する赤平市。映画監督で、TEAM NACSなどを輩出したクリエイティブオフィスキューの創業者である鈴井貴之氏は11年前から、札幌と赤平の2拠点で暮らしている。
「都会の人間からは、なんでわざわざ田舎に、なんて言われましたね。けれど作品をつくること、面白い企画を考えることって、場所を選ばない。どこにいたっていいんです。大泉洋をはじめ、東京での活動を続けるTEAM NACSのメンバーがいつでも帰ってこられる場所をつくりたい気持ちもあり、僕はどーんと北海道の原野に腰を据えて自分の活動をすることにしました」
赤平に6600坪もの広大な森を購入、熊笹を刈り、木を切り倒し、文字どおり開墾するところから家づくりは始まった。当初は母屋だけだったが、年々増築を重ね現在は、吊り橋で母屋とつながるツリーハウス、2つの離れ、ドッグランに露天風呂、サウナ、2階建てのガレージ、カーポート、さらにフットサルコートに畑や池と設備は増え続けている。
「せっかくある土地、面白いことをやってみたい、遊びに来る人にも楽しんでもらいたいとアイデアが湧きでてきて。ツリーハウスは、業者の方と話しているうちに『絶対面白い!』と。ゲストが喜んで泊まっていきますよ。風が吹くと揺れて怖いみたいですけど(笑)」
ガレージには窯があり、冬でもBBQができるようになっているほか、趣味のミニカーやプラモデルがぎっしり。さらに現在は、沢遊びや釣りをするため、沢に降りる道を開墾中だという。エンタテインメント性溢れる仕かけがまだまだ増える予定だ。
「大きなものはプロにつくっていただいていますが、自分で土木作業もやっています。それまでは創作って何かを退けたり、壊さないと始められないと思っていました。けれど、この何もない原野では、つくりだすことだけを考えられる。それってすごく健全なことだということに気がつきましたね」
もともと赤平生まれの鈴井氏。夕張市の財政破綻を受けて、これまで札幌に住みながらも赤平市の会議に出席し、再生事業にも関わってきた。
「けれど会議が終わったら、そのまま帰っていく。これでは言っていることに説得力がない。住んでちゃんと仲間として認められたいと、この地を選んだんです」
移住してからは、『水曜どうでしょう』や、制作したドラマ『不便な便利屋』の撮影を自身の赤平の土地で行い、現在は全国からファンが「聖地」として赤平を訪れるようになった。
「北海道では、多くの田舎が限界集落となり、忘れ去られようとしています。赤平はかつては炭鉱で栄えた街です。こういう街があったからこそ、現代の繁栄がある。忘れ去られていくのがシャクで、この地で作品をつくっているんですよ」
現在、新たに赤平を舞台にした作品や企画を準備中だという。
「僕は都会が大好きでネオンがないと生きていけない人間でした。けれど今では草刈りしている間が一番アイデアが浮かぶんです。それに田舎にいると、『雪が降る前に、ここを更地にして、来年の春からあれをつくろう』とか、先々のことを考えて動かないといけない。そういう姿勢になれるって、作品づくりにもとてもプラスになるんです」
鈴井氏を整え、その創作意欲に消えることない火を灯す、それがこの地と、この家なのだ。
創作意欲を掻き立てる! 邸宅の細部をウォッチ
DATA
所在地:北海道赤平市
敷地面積:21,818平米
延床面積:増築を続けているため
不明
設計者:建築工房らくだ/ゼストシステム ほか
構造:木造
Takayuki Suzui/鈴井貴之
1962年北海道赤平市生まれ。『水曜どうでしょう』(HTB)など数々の番組の企画・出演に携わる。映画監督として現在まで4作のメガホンを執り、赤平を舞台としたドラマ『不便な便利屋』(TX/2015)では脚本・監督を務めた。鈴井貴之 作・演出・出演舞台 OOPARTS Vol.6「D-river」DVD 好評発売中! ¥4,378 https://cuepro.office-cue.com
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