PERSON

2022.11.04

高級不動産販売業・会長が選び抜いた、270度の眺望が叶う都内の絶景邸宅

かつて夢見た暮らしをかなえた仕事人たちの家は、浪漫に溢れている。その家づくりのスケール感はもはや、大人の壮大な遊びなのだ。今回紹介するのは、セブンシグネチャーズ・インターナショナル会長、中野陽一郎氏の原宿にある邸宅。【特集 浪漫のある家】

中野陽一郎氏邸宅

マンハッタンでセントラルパークを見下ろすかのような錯覚が起きる眺望。右手に西新宿の夜景。目の前は明治神宮と代々木公園の緑。

数々の縁を紡いでくれるプライベートダイニングルーム

天空に抱かれながら、日中は圧倒的な公園の緑に癒やされ、夜は街の夜景を見下ろして充実感に満たされる。そんな眺望を独り占めできる部屋が原宿にあった。所有者は「トランプ・インターナショナル・ホテル・ワイキキ」を始め、ハワイの高級不動産の日本市場での販売を担う、セブンシグネチャーズ・インターナショナル会長、中野陽一郎氏だ。

「不動産を取得する際の絶対条件が眺望、いわゆるビューの素晴らしさなんです」

なぜなら部屋はいかようにも手を加えられるが、ビューだけは購入後にいっさい変えることができない。それだけに建設前に図面やGoogle Earthを駆使して想像を膨らませ、周辺ビルの屋上から実際に確認するという。

中野陽一郎氏邸宅

陽が落ちて空がブルーに変わっていく楽しみな時間。

「もちろん販売業者の眺望シミュレーションも見せてもらいますが、やはり自分の目と想像力で最後は判断します」

角部屋ゆえに270度の眺望がかなうこの部屋からは、左の眼下に東郷神社、窓の外には明治神宮と代々木公園の緑が広がり、夕方以降は渋谷と西新宿の高層ビルの夜景が楽しめる。

「陽が完全に落ちたあと、青空が刻々と色を変え、辺り一面が青い光に照らされるブルーモーメントが一瞬訪れる時がある」

この景色は購入当時から独り占めするつもりではなかった。

中野陽一郎氏邸宅

ディナースペースの家具はBoConcept。部屋をグレーとブラウンでまとめたので、ブルーのベルベットの椅子が絶妙な差し色に。ペンダントライトはニューヨークのホーリーハントのもの。

中野陽一郎氏邸宅 箸

とあるレストランで名入りの箸を知り、プライベートダイニングに招いたお客様へのお土産にと用意した。

「ここはプライベートダイニングとして、仲のいい友人や仕事の関係者を招き、食事を楽しむスペースにしたかったんです」

信頼するシェフを呼び、お鮨、フレンチ、イタリアン、エスニックなどを、4人から6人で堪能し、移りゆく窓の外の景色を存分に楽しんでもらう。

「そこで部屋全体をリノベイトする際に、照明計画に徹底的にこだわったんです」

中野陽一郎氏邸宅

ベッドルームは照明を巧みに使い落ち着く空間に。

中野陽一郎氏邸宅

ベッドルームとエントランスの両方からアプローチできるバスルーム。

リビングルームの照明は4段階に変更できる。1段目が仕事をし、書き物をする生活の灯り。2段目がダイニングテーブルのライトアップとキッチンに明かりを灯す、ディナータイムの灯り。3段目が部屋全体の灯りが落ちるリラックスタイム用。そして4段目がグレアレスライト。

「どんなに夜景が素晴らしいレストランでも、人や光がガラスに映り込んで外が見えにくいことがありますよね。グレアレスライトだとそれがないんです」

グレアレスライトはライトに照らされる範囲を狭めて、照らしたい部分だけを明るくするので、部屋に明暗の差が生まれ、高級感も演出できる。これらをデザイナーに的確に指示するのは、すべて中野氏の経験からだ。

中野陽一郎氏邸宅 調度品

飾りたい調度品に合わせてオーダーした棚。

中野陽一郎氏邸宅 調度品

モダンな家具とオリエンタルな古美術が絶妙なバランスで配置。

「コロナ以前は年の3分の1ほど国内外の大型ホテルやブティックホテルを仕事のためにリサーチしていて、その結果、一番好きになったのがパーク ハイアット系のインテリア。購入した物件のインテリアはすべて違っていますが、知人から『常にぶれない、中野さんらしい部屋だね』と言われるほど一貫性があるようです(笑)」

過去にも、採算度外視のリノベイトで、中野イズムを貫いたプライベートダイニングをつくり、活用した経験がある。

中野陽一郎氏邸宅

左:バング& オルフセンのオーディオを設置した柱の中に、配線などを隠してある。 右:夜景を邪魔しないよう、テレビは下から迫り上がる仕かけに。手前のライトはコードレス(充電式)のクリスタル。

「結果として、食事をしながら空間を味わっていただくことで、仕事の話をしなくとも、僕自身の所有する物件やセンスに信頼を得てもらう結果となった。プライベートダイニングルームをきっかけに紡いだご縁は、数知れないですね」

そんな中野氏のブランディングの拠点ともいえる場所は、モダンでありながら、オリエンタルのアンティークが空間に深みを与えている。エレガントの域を超えない和洋折衷が持ち味のインテリアに、絶景という相乗効果が加わり、最高のプライベートダイニングルームとなった。

「ここで仕事をすると、発想が無限大に広がるんです」

DATA
所在地:東京都渋谷区神宮前
専有面積:105.67平米
施工者:三井デザインテック
構造:鉄筋コンクリート造

Yoichiro Nakano
1966年生まれ。上智大学卒業後ゴールドマン・サックス、SBCウォーバーグ、コメルツ証券などを経て独立。ハワイの高級不動産「トランプ」「リッツカールトン」「パークレーン アラモアナ」などの販売を手がけ、BlackSand Capitalの日本市場アドバイザー等を歴任。

【特集 浪漫のある家】

TEXT=今井恵

PHOTOGRAPH=高島慶(Nacasa & Partners)

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