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2022.10.18

食とワンセット!? 気鋭デザイナーの服選びの基準とは

「森ちゃんらしい服だね」。それが最高の褒め言葉だと話す森田恭通。シンプルな服の時は「大丈夫?」とかえって心配されるという(笑)。そんな森田氏の服選びは、食とワンセット。食事に行く店を頭に描きながら服を選ぶという森田のファッション観とは。デザイナー森田恭通連載「経営とは美の集積である」Vol.29。【過去の連載記事】

kolorのデザイナー阿部 潤一氏と森田恭通氏。

kolorのデザイナー阿部潤一氏と森田恭通氏。デザインやアート、食にと阿部氏との話はいつも尽きることがないという。

kolor、sacaiほか日本人デザイナーと親交のあるデザイナーのファッション観とは

妥協しない服という「ゲーテ11月号」の特集テーマを聞いた時、僕のファッションは妥協しない服の典型ではなかろうか? と考えた。

僕はどちらかといえばカジュアルかつ個性的。まず、スーツを日常とされる方とは少し違います。仕事柄、ネクタイを必要とするシーンはあまりなく、海外のフォーマルシーンなどでは、着物を着ることもあります。

ファッションは年齢とともに変化するもので、僕自身もさまざまな服を着させていただきました。16歳の頃から僕は服が好きすぎてアルバイトを始めたくらいでしたから(笑)。時には憧れだったVersaceも背伸びをして買っていた時代もありました。その後の僕のファッションの概念を最初に変えたのは、海外のセレクトショップです。香港のJOYCEのオーナーのセンスたるや、インテリアを含めて本当に素晴らしいものでした。ロサンゼルスのMAXFIELD、パリのColetteからも、たくさんのインスパイアをもらいましたし、眺めているだけでも楽しかった。上下セットアップの概念を崩し、自分らしく組み合わせていいんだと、その当時、尖っていた僕のファッション観の後押しもしてくれました

僕の時代には百貨店がファッションの主戦場でしたが、後々、バイヤーが買いつけてきた服が並ぶ個性豊かなセレクトショップが次々と誕生したりと、場は広がり今ではオンラインでも世界中の服が手に入ります。

僕自身、最近は圧倒的に国内のデザイナーに注目しています。kolor、sacai、HUMAN MADE、MASTERMIND……。海外でも、とても人気のブランドです。時折、海外で彼らの服を着ていると、エレベーターに乗り合わせたその国の方から「イイネ!」と言われることもあります。そのなかでも今の僕に大いなる影響を与えてくれるのはkolorです。デザイナーの阿部潤一さんがデザインする服は、デザインはもちろんのこと、パターンもしっかりひいてきた方なので、テーラリングがとても美しい。だからこそのアシンメトリーなデザインも、異素材の組み合わせも、バランスが素晴らしいのだと思います。ユーモアがあるのに、きちんと見える。そういった意味でも尊敬するデザイナーでもあり、希少なブランドだと思います。

そして日々の洋服選びの基準は、何を着て、誰とどこに行くのか。食事は和食、フレンチ、イタリアン、中華などシーンを頭に描いて選びます。僕の場合は仕事と食がワンセットの機会が多いので、店の雰囲気を頭に描きながら服を選ぶことがほとんど。

さらに僕の周りにはお洒落な方ばかり。そのなかでも、特筆すべき憧れの方のひとりでもあるのは、ユナイテッドアローズ創業者の重松理さん。以前、大島紬つむぎのジャケットを着ていらして「僕もいつか着こなせる大人の男になろう」と固く心に誓ったものです。

服はそれを身につける人に影響を与える力があると思っています。素晴らしい服を身につける日はこのうえなくハッピーだし、人と会うことがさらに楽しみになる。身につけることによって、僕たちに力をも与えてくれる服。そう考えると、服に妥協は必要なし。僕は心からそう思います。

Morita Yasumichi
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍する傍ら、2015年よりパリでの写真展を継続して開催するなど、アーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」を主宰。

過去連載記事

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連載
森田恭通/経営とは美の集積である。

デザイナーとして、多くの経営者の経営展望や理念、彼らの求める機能やニーズに応えてきた森田恭通氏。そのなかに見えたのは、経営者こそが持つ、オリジナリティ溢れるセンスと美学だという。「経営」と「美」の関係性、その先にあるものとは。

TEXT=今井 恵

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