仕事で成功を収める経営者の多くが腕時計に情熱を注ぐのはなぜなのか? 時計がビジネスマインドにもたらす価値を探る。【特集 高級腕時計のシゲキ】
「自分を追いこんで発破をかける起爆剤」
不動産業やフィットネスジム「Y-4GYM」の経営に手腕を発揮する一方、日本最大級のボディコンテストに挑戦するためストイックに肉体を鍛え上げるなど、公私を問わず精力的に活動している寺尾陽太朗氏。腕時計との関わりも、自らを叱咤し鼓舞するスタイルと通ずる。
「お金があるから時計を買うのではありません。むしろ、高級腕時計を購入することで、仕事をもっとやらざるを得ない状態に自らを追いこむのがほとんどです。社会人1年目でロレックスの『デイトジャスト』を購入した時から、腕時計はそういう存在。若い頃は特に時計を買うたびに貯金を使い果たしていたので、その後しばらくは極貧生活を送ることに(笑)。でも、腕時計を購入することで、やってやろうと前向きになれる。辛いことがあって挫けそうになる自分を奮起させる、そんな意味合いが大きかったですね」
純粋な憧れから集め始めた腕時計は、自らの心を満たすだけでなく、営業時のコミュニケーションツールにもなった。しだいに昇進や起業などビジネスのステージが上がるたび、自身のキャラクターを相手に強烈に印象づける武器としてもコレクションを充実させていき、購入するブランドの幅も広がっていったという。
「今のお気に入りは、昨年の夏に購入したオーデマ ピゲの『ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン』です。初めて手にしたトゥールビヨン搭載モデルなので、これでやっと高級腕時計の世界の入り口に立てた、と感じましたね。ここぞという時に愛用しています。腕時計の世界は、本当に沼が深い。知れば知るほどすっかり深みにはまってしまって、今でも欲しいものがどんどん増え続けています。いつかはローマン・ゴティエのような、独立時計師が手がけたモデルも手にしてみたいと思っています」
さらには腕時計をきっかけにして、愛好家同士の新たな人脈を築けたのも予想外のメリットだった。
「腕時計のおかげで、ただ仕事をしているだけでは出会えなかったような方々とも縁を持つことができました。いろいろな考えや情報を学ぶことができ、私自身とてもいい刺激になっています。いい腕時計を手に入れるほど、魅力的なつながりが生まれると実感していますよ。そういう意味でも、やっぱり腕時計は自分に発破をかける起爆剤なんです」