2022年6月19日(日)、東京ドームで歴史的な戦いが行われる。それがキックボクシング史上最高の天才と呼ばれる那須川天心と、ナチュラル・ボーン・クラッシャーことK-1のカリスマ武尊が対決する「THE MATCH 2022」だ。今回は、そんなふたりを独占取材したインテビューした、ゲーテ2022年6月号の記事とともに、ふたりの決戦に対する熱い想いを振り返る。
世紀の一戦
格闘ファンが待ちに待った明日、東京ドームで開催される「THE MATCH 2022」。キックボクシングの天才である那須川天心とK-1のカリスマこと武尊が、日本の格闘技史に刻まれる熱戦を繰り広げる。「世紀の一戦」と呼ぶにふさわしい、真の"最強"を証明する戦いだ。
すべては、那須川が突きつけた"無謀"ともいえる挑戦状から始まった。
7年前、大田区総合体育館で開催されたキックボクシングの大会で、トーナメントを勝ち抜いた彼がリング上でマイクを握り叫んだ言葉。
「国内にやりたい選手があとひとりいる。K-1の武尊選手、かかってこいや、って感じです」
K-1王者である武尊に挑んだ那須川は、当時まだ高校2年生。バンタム級7位の対戦相手を1ラウンド開始後58秒でノックアウトするほどの実力はあったが、武尊とは所属団体も違えば競技も違う。ふたりの戦いの実現は、簡単なことではなかった。
だからこそ、彼は武尊に挑んだ。当時、活動を休止していたK-1が「新生K-1」として復帰してまもない頃。テレビで闘争心むき出しでリングに立つ武尊は光り輝いて見えた。そんなK-1王者に勝つことで、格闘技をさらに盛り上げ、キックボクシンをメジャーにしたい。5歳の頃から毎日トレーニングをしている彼にとって、今回のマッチは「格闘技を変える」という夢への一歩なのだ。
那須川天心「キックボクシングをメジャーにしたかった」
「僕まだ高校生だったんで、契約とか団体の壁とかの話がよくわかんなかったんです。僕がやりたいって言えばやれんのかなっていう、まあ、子供の考えですよね。それで物議もかもしたんだけど。でも格闘技ってそういうもんだと思ってた。強い奴がいれば、戦いたいと思うのが当たり前だろうと。自分の団体で最強の8人の選手が出場するトーナメントで優勝して、周りを見渡したら、自分と同じ階級で目立ってたのは、K-1の武尊選手しかいなかった。これは戦うしかないだろうって」
7年前のその日を思いだしながら、那須川天心はそう話し始めた。試合後のマイクアピールで格闘家が対戦相手を名指しするのは珍しいことではない。ただし、普通は対戦可能な相手に限られる。那須川と武尊は所属団体が違う。しかも那須川のキックボクシングと武尊のK-1は、厳密には違う競技だ。不可能ではないが、簡単に実現できる対戦ではない。けれど逆にそれが、リング上で派手に武尊に対決を呼びかけた理由でもあった、と那須川は言う。
「本気でキックボクシングをメジャーにしたかったんです。熱心なファンはいてくれたけど、世の中的にいえばまだまだ少数派だったから。僕がトーナメントで勝っても、スポーツ紙の一面にはならない。普通の人は誰も知らなかったと思う」
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どっちが最強か?
一方、若干高校2年生の那須川に戦いを挑まれた武尊。当時、K-1チャンピオンになり世界中から挑戦を受けていた彼にとって、那須川は"挑戦してくる選手のひとり"という認識でしかなかった。
復活したばかりの新生K-1は、選手の活躍によりメディアに取り沙汰されることが増えてはいたが、他のスポーツに比べるとまだ道半ば。武尊もまた格闘技を盛り上げるために日々奮闘していた。
そんな時に投げ掛けられた、「なぜ天心選手と戦わない、逃げてる」というバッシング。どんなにいい試合して、どんなに勝ち続けても、それしか言われない武尊は、那須川天心の存在を憎んだこともあったという。
だが、武尊は語る。「天心選手がいたから、ここまでこれた。彼がいたからこそ、僕はどんな手強い相手にも勝つことができた。今は感謝の気持ちしかないけれど、これで勝たなかったら僕は何も証明できない。今まで苦しんだことのすべてが無になる。この試合には、勝つという以外の選択肢はないんです」と。
7年前、ふたりは同じ55㎏だった。しかし、その後、スーパー・フェザー級での世界制覇にまで上り詰めた武尊は、那須川と戦うウエイトにまで下げるため、今日まで過酷な減量を続けてきた。
武尊「天心選手に勝たない限り、格闘家人生は終われない」
武尊への取材開始時は夜7時を過ぎていたので、インタビュー中に食事をしてもらうことになった。午後8時までに夕食を摂ると決めているのだそうだ。那須川天心との対戦は3ヵ月ほど先だったが、武尊は既に追いこみ期間に入っていた。
「今は試合に向けた練習を毎日ひたすらやってます。5時間から6時間。多い日は7時間」
ウエイトトレーニングもするのかと問うと、武尊はスープをひと口啜り、首を横に振った。
「筋トレはしません。打撃の筋肉以外は必要ないので。打撃に必要な筋肉は、打撃でつけるのが一番なんです。だから筋トレするよりサンドバッグを叩いたり、ミット打ちをします。他にはフィジカルトレーニング、心肺機能を上げるために、走りこみとかはやってますけど」
減量は始めたのかと聞いて、愚問だったことに気づいた。武尊の目の前にあるのは、カップ1杯のスープとごく少量のサラダらしきものだけだった。
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──所属団体が違うため、戦うことができなかった那須川天心と武尊。明日の戦いは、どっちが最強かを決める運命の一戦だ。
実現までに7年の歳月がかかった、日本格闘技界史上最大の決戦を絶対に見逃してはいけない。
THE MATCH 2022
日時:2022年6月19日(日)12:00会場・14:00開始予定
会場:東京ドーム
※ABEMA PPVにて全試合生配信
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