アスリート、文化人、経営者ら各界のトップランナーによる新感覚オンラインライブイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第4弾が、5月13日から3日間にわたって開催され、35人の仕事人が出演し、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回、青山学院大学 教授・陸上競技部 監督の原 晋さんとSATORI代表取締役の植山浩介さんによる特別講義を一部抜粋して掲載。すべての講義を聴くことができるアーカイブ配信はこちら。※5月17日〜5月31日18時までの無料限定公開。【短期集中連載「Climbers 2022 – 春 –」はこちら】
退路を断って臨むからこそ応援してもらえる
植山 SATORIは、2014年にトライアックス(※植山氏がSATORI社創業の前に経営していた会社)の社内ベンチャーとしてスタートしました。技術的にはすばらしいサービスだったのですが、投資家たちにプレゼンしても、最初はよい反応を得られませんでしたね。それは、私自身の覚悟が決まっていなかったから。お金も時間も、人間関係も、いろいろな選択肢、いわば逃げ道を残したままだったので、周囲に本気度が伝わらなかったのだと思います。でも、退路を断ち、預貯金も時間もすべてSATORIにつぎ込もうと覚悟を決めたら、不思議と背中を押してくれる人が現れました。
原 僕も、青山学院大学の監督の話が来た時、周囲からは、「会社に籍を置いたまま、やった方が安全じゃないか」と言われました。でも、とある人から「覚悟を持ってやるからこそ、おもしろいんだ」といった助言をいただいたこともあり、会社を辞め、監督に就任したんです。そうすると、応援団はついてきますよね。
チームとしての理念やビジョンは明確に
原 青学で最初にやったのは、チーム理念をつくること。「箱根駅伝を通じて、多くの人に感動を届ける」をコンセプトに、社会に貢献する人材の育成と、自主性を重んじることを大切にしました。理念のないところに組織の発展はありませんからね。(原監督の)一期生には、「君たちには、部の礎になってほしい」と伝えました。みんな箱根駅伝を目指して集まっているので、ある意味、がっかりさせてしまう発言ですが、私は将来のビジョン、夢を語ったのです。その代わり、「10年後に箱根で優勝した時は、君たちのおかげだと必ず言うから」と。
植山 どこを目指しているのかを明確にすることは大事ですね。私はその上で、社員に、当社で何をやりたいのか、コミットさせるようにしています。スポーツと違い、ビジネスは選択肢がたくさんあり、転職も可能。成長したい、成功したいと思うモチベーションは、人それぞれなので、一定のやり方を押しつけるのは無理があります。目標設定から完全にカスタマイズすべきだと、私は思っています。それには、上司の目が行き届くよう、小さいチームである必要がある。当社では、1チーム5人くらいに設定し、四半期ごとに、上司が部下に面談をしているんですよ。
リーダーとは、ポジションではなく“意識”
原 チームにおけるリーダーとは何か。監督やキャプテン、寮長は、たまたまそういうポジションをいただいているだけで、1年生も含め、メンバーひとりひとりがリーダーという意識を持つことが大切。その意識が、我がチームをつくっているのだと思います。箱根駅伝の連覇も、記録更新は当然の目標ですが、それに留まらず、パワー型ではなく、サーバント型の組織マネジメントの有効性を、スポーツ界に広めていきたいと思っています。
植山 「リーダーになったら、こんなマネジメントをしたい」という声を聴くことがありますが、リーダーになってからでは遅い。プレイヤーの時から、周りのため、チームのために動けるリーダーマインドを持つことが必要だし、それを持っている人がリーダーになるのだと思います。これからは、次世代のリーダーを生み出すべく、尽力したいですね。
原 失敗とは、行動を起こした結果ではありません。立ち止まることこそが失敗。答えが見えづらい現代ですが、チャレンジ精神を忘れず、がんばっていきましょう!
原 晋さんと植山浩介さんの講義全文を動画でチェック。※5月17日〜5月31日18時までの無料限定公開。