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2022.05.25

【松田公太】「起業で一番重要なのは情熱」──短期集中連載「Climbers 2022 – 春 –」

アスリート、文化人、経営者ら、各界のトップランナーによる新感覚オンラインライブイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第4弾が、5月13日から3日間にわたって開催され、35人の仕事人が出演し、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回はタリーズコーヒージャパン創業者、EGGS 'N THINGS JAPAN代表取締役の松田公太さんによる特別講義を一部抜粋して掲載。すべての講義を聴くことができるアーカイブ配信はこちら。※5月17日〜5月31日18時までの無料限定公開。【短期集中連載「Climbers 2022 – 春 –」はこちら】

5年という期限を設け、その期間内で結果を出す

父の仕事の関係で、5歳の時にセネガルに移り、その後はアメリカのボストンで暮らしました。私が高校生だった1980年代半ばには、アメリカでは、すでに起業は珍しいものではなかったので、「いつか自分も」という想いがありましたね。それに、当時から、食の仕事での起業を考えていました。「生の魚を食べるなんて野蛮だ」と、鮨はアメリカでバカにされていたので、日本食の価値を認めさせたいと思ったのです。

高校卒業後、日本に戻って大学に進学しました。私は、海外暮らしが長くて、日本のことを何も知らないわけです。それはマズイと思いましたし、上下関係の厳しさなど、今まで自分が経験していないことに触れてみたいという気持ちもありました。大学卒業後、銀行に就職したのもそのためです。周りからは、「絶対合わないからやめろ」と止められたのに(笑)。

ただ、最初から銀行は5年で辞めるつもりでした。これは父の影響ですね。父は、「オリンピックは4年に1回。期限があるから、その間必死になってやるから、あの域に到達するんだ」と。4年がしっくりこなかったので、5年と設定し、実績を残そうと決めました。具体的に目指したのは頭取賞です。結局2年連続で受賞するなど、成果をあげられましたが、そのくらいでないと、外の世界で成功しないと思っていましたから。

就職して5年になる少し前から、起業について具体的に考え始めました。そんな時にボストンで出会ったのがスペシャリティコーヒーです。コーヒーを飲む習慣はなかったのですが、一口飲んでそのおいしさに恋をしてしまった。その数ヵ月後、シアトルに行き、いろいろなスペシャリティコーヒーチェーンがある中、一番おいしいと思ったタリーズコーヒーに、「いっしょにやりたい」と直談判しました。

社長自らチラシを配布し、リピーターを開拓

タリーズの経営者にはなかなか会ってもらえませんでした。当時、タリーズはまだ4店舗しか展開していなくて、海外進出など考えてもいなかったようです。でも、日本から若いお兄ちゃんが来て、「やりたい、やりたい!」と熱烈にオファーしてくる。「しかたがないから、とりあえずやらせてみるか」といった感じだったのでしょう。なので、契約内容も厳しくて、1年で利益が出なければ、商標権をはじめすべて返還することになっていました。

なんとか銀座に一号店をオープンしましたが、最初は赤字続き。私は、社長兼店長だったので、リピーターを開拓しようと、近くのデパートの店員さんにチラシを配りに行ったりしていましたね。それが功を奏し、徐々にリピーターが増え、行列ができるほどになりました。行列ができると、それがまた、新たなお客様を生むんですよ。「あと赤字が2、3ヵ月続いたらおしまいだ」というところから、最後は、損益分岐点の600万円の倍まで売り上げが伸びました。

起業に必要なのは、「目的」と「目標」、そして「情熱」

起業にあたって一番重要なのは情熱だと思います。そして、目的と目標を明確に持ち、それに向かって、目標をひとつずつ置いて進んでいくこと。まずは5年かけてそれをやり、さらにそこから1年、また1年と、(目的や目標に向かう)道から外れないよう進んでいくのが大切だと思います。

採用に関しても同じで、私は、目的と目標をしっかり持っている人といっしょに働きたい。それがないと、上司と馬が合わないとか同僚としっくりこないといった理由で辞めてしまうケースが多いような気がします。けれど、「5年間ここで頑張ろう。成長しよう」といった目的や目標がある人なら、少なくてもその5年間は、同じ方向を見て、いっしょに頑張れますから。出資をする際も同様。しっかりした目的や目標を持ち、最後まで頑張る人であれば、たとえうまくいかなかったとしても、「次またがんばろう!」と声をかけられます。

最近は、「目的や目標がわからない」という言葉もよく聞きます。けれど、自分の人生を振り返り、喜怒哀楽を見返せば、そこにヒントがあると思います。それでも見つからなければ、今やっている仕事を徹底してやってみる。頑張れば頑張るほど、「これをやっている時が一番幸せだ」とか「悲しい」といったことが見えてくるだろうと思います。そうすれば、いつか、使命感を伴ったものに出会えるはずです。

松田公太さんの講義全文を動画でチェック。※5月17日〜5月31日18時までの無料限定公開。

【短期集中連載「Climbers 2022 – 春 –」はこちら】

TEXT=村上早苗

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