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2022.05.20

【ハリス】「仕事は文化祭と夏休みの繰り返し」──連載「NEXT GENERATIONS」Vol.6

新世代のアーティストやクリエイター、表現者の仕事観に迫る連載「NEXT GENERATIONS」。第6回は、前回に引き続きコンテンツディレクターのハリスにインタビュー。今後の新たなエンターテイメントの可能性や本人のインスピレーションの源など、ハリスの意外な一面を紐解く。前編はこちら

連載「NEXT GENERATIONS」

ブリアナ・ギガンテと“KAWAII”のコラボレーション

コロナ禍のあおりを受けて一時閉店中となってしまった「KAWAII MONSTER CAFE」。ハリスにとってKAWAII MONSTER CAFEは、ー番やり甲斐のある仕事であり、今も店への想いは熱い。

「海外のファンの方も多かったので、やはりコロナの影響は大きかったです……。今の一番の目標はKAWAII MONSTER CAFEの再オープンなんです。そのためなら、『僕はどこにでも住みます!』って言ってるくらいなので(笑)。原宿以外に店舗ができたとしても、そこに引っ越します」

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実はゲーテ4月号の【シン・男の流儀】特集に登場して話題をさらったブリアナ・ギガンテとは仲の良い間柄。2022年もコラボレーション商品「KAWAII MONSTER CAFE×ブリアナ・ギガンテ『Briana Kawaii Collection』」を3ヶ月連続で発表している。

「ブリアナ・ギガンテさんとは、6〜7年くらい前から知り合いでした。KAWAII MONSTER CAFEでポールダンスのショーをしてもらったこともありますよ。コロナ禍でショーや大規模なイベントが難しかった時に、YouTuberの方とコラボして国内にKAWAII MONSTER CAFEの良さを発信したいと思ったのが、YouTubeやSNSなどでの共演のきっかけです」

実際に「ブリアナ・ギガンテシェイク」というコラボメニューを作って、KAWAII MONSTER CAFEで販売したことも。“KAWAII”の中にも大人っぽさを表現するため苦味のあるコーヒーゼリーを使用し、官能的な唇形のチョコや黒蜜をトッピングしたシェイクは、大きな反響を呼んだ。

“食×エンターテイメント”は体験価値が高い

ハリスいわく、食とエンターテイメントは相性抜群だという。

「“食×エンターテイメント”っていうコンテンツは、やはり体験価値が高いと思うんですよね。食べておいしい、見て楽しい、空間の雰囲気がいいとか。やっぱり、ごはんを食べながらショーを見れるって特別だったなって思うんです。僕自身お酒が好きなのでクラブにはよく行くんですけど、それとはまた違う雰囲気ですよね。ショーの演出にマッチしたメニューを提供しているので、『空間・ショー・食』の三位一体を成り立たせることができる。それぞれがお互いリンクすることで本当に忘れがたい体験になると思うんです。あと、KAWAII MONSTER CAFEのフードは本当に美味しかった。見た目は結構ヤバイのに(笑)。あのギャップ自体がエンターテイメントだったし、それができるのはやっぱりモンスターカフェしかないなって思います」

KAWAII MONSTER CAFEで提供されていたフードメニュー

実際にKAWAII MONSTER CAFEで提供されていたフードメニュー。

ハリスは、かつて「エンターテイメント×環境保全」をテーマにした「絶滅体験レストラン」というイベントのアートディレクターを務めたことがあったという。このまま環境破壊が進むと多くの生物が絶滅してしまい、今ある食べ物が食べられなくなる未来を想定した体験型レストランだ。

そこで提供されたメニューは、カラスやシカ肉、昆虫などを使ったもの。環境問題を独自の切り口で表現したイベントとして、メディアでも多く取り上げられた。生態系の崩壊や動植物の絶滅を五感で体験できる取り組みとして認められ、世界自然保護基金「WWF JAPAN」の後援もついた。その頃から既存の「食」とは異なるアプローチをとっていたのだ。

インスピレーションの源は田舎の大自然

群雄割拠なエンターテイメント業界で、常に新たなアイデアを模索し、キャストを魅了するコンテンツを生みだしているハリス。彼は誰から最も影響を受けたのだろうか。

「間違いなくレディー・ガガさんです! 今着ているTシャツも彼女のものなので(笑)。将来的には同じステージに立つことが夢でもあります。ただ、レディー・ガガさん以外の好き好きはその時々で結構変わりますね」

それ以外にも影響を受けたものを訊ねると、驚きの答えが返ってきた。

「僕は長野県安曇野市出身なのですが、子供の頃から昆虫や魚が大好きなんです。川でニジマスを釣ったり、山で昆虫採集もしていましたよ。人間には作れない昆虫や魚の自然な色に惹かれるんです。その時に身につけた色彩感覚は、今の僕のディレクションにも表れていると思います」

現在手がけている仕事からはかけ離れた、意外な答えだった。しかし、彼がこれまで携わってきた絶滅体験レストランやKAWAII MONSTER CAFEの、奇抜な色彩やダンスの振り付けには、どこか自然の動植物に共通する要素があるようだ。今は東京の原宿を中心に活躍するハリスだが、そのアイデアの根底には、安曇野で育まれた経験が生きているのだろう。

やりたい仕事が常にできるようなレベルに

2022年4月下旬から8月31日まで期間限定オープンしている「my Ty rooms HARAJUKU」では、ディレクションを担当しているハリス。宿泊施設の一室を世界150ケ国以上で愛されているぬいぐるみTyとコラボして独自の世界を表現した。今回、取材・撮影したのもその部屋だ。

「Tyとのコラボは2回目なのですが、今回は1,000〜1,500体ほどのぬいぐるみを使用しています。前回は少し子供向けだったので、今回は大人でも楽しめるようにしています。ぬいぐるみを触るものとしてではなく、インテリアとして使って見せることを意識しましたね。アートギャラリーのようなイメージで。実を言うと僕自身はヴィヴィッドな色使いのものより、真っ黒とかギラギラしたメタリックなものが好きなんです(笑)。なので、そういった要素もポイントポイントで入れ込んであります」

クリエイターとして自分の思い描いたことを自由に表現してるように見えるハリス。そこには、流行を追いかけるより自ら流行を作り出すパワーを感じられるが、一方でビジネスとしてどう成り立たせるかを常に考えているという。そんな彼は、今後の“KAWAII”の未来をどう考えているのか。

「これはKAWAII文化に限った話ではないのですが、世の中全般的に、大きい金額をかけて箱物を作って維持するより、小リスクのポップアップショップが増えるのではないかなと思っています。あとはVRなどの没入型の体験ものですね。没入型は圧倒的に感動度が高いと思うんです。没入ができる空間作りってリアルでやると本当に難しいんですよ。KAWAII MONSTER CAFEは窓ガラスを一切なくすなど工夫して没入できる空間作りをしていましたけど、これからはVRやメタバースなどのそっちの世界になっていくんじゃないかなって思っています。実際、少しずつですがメタバースで“KAWAII”が来てますからね」

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最後にハリスの意外な仕事観を聞くことができた。どんな仕事であっても自分のスタイルにはめ込むスタンスで臨むのかと思いきや、「自分が嫌だと判断した仕事は全くやる気がおきない」とキッパリ。特に審美眼がないスタッフとの仕事にはためらいが生まれるのだとか。

「僕にとって仕事は、ずっと文化祭と夏休みの繰り返しみたいな状態。やりたいことをやって、ただ、たまにやりたくないこともやる感じが文化祭っぽいです(笑)。そして、本当にやりたくない時は夏休みのように完全に休んで。すごい面倒くさがりなので、本音を言うとやりたくない仕事は全くしたくない(笑)。特にセンスがない人と仕事をすると、自分のセンスも損なわれるからよくないなって思いました。少し偉そうですかね(笑)? やりたい仕事だけを常にできるように自分を成長させたいですね」

クリエイターらしく自分の思ったことを遠慮なく発言し、「好きなものは好き」「嫌いなものは嫌い」とはっきりと物事を捉える視点は、日本社会を包む同調圧力からは無縁の世界に映る。自分が信じるものを突き詰めたいという想いが端々からあふれていたハリスの言葉だった。

 

my Ty rooms HARAJUKU

my Ty rooms HARAJUKU
原宿にあるホームシェアリング施設“MOSHI MOSHI ROOMS”「HARAJUKU」と世界150ケ国以上で愛されているぬいぐるみブランドTyがコラボ。「my Ty rooms HARAJUKU」と銘打ち室内をArt Galleryのような空間に仕立てている。部屋の中のさまざまなオブジェやインテリアの中にTyが溶け込んでいるHARAJUKUの異世界を体験できる仕様となっている。
住所:東京都渋谷区神宮前2-18-7 3F
開催期間:2022年4月23日(土)〜8月31日(水)
宿泊人数:1人~4人
料金:1室1泊 ¥44,000~
詳細はこちら

 

Harris
『KAWAII MONSTER CAFE HARAJUKU』や『Ty』などのブランドのほか、カルチャープロダクション「ASOBISYSTEM」に所属するアイドルグループのコンテンツディレクターを兼任。2014年に結成されたダンスアーティストグループ「I PRIDE」のメンバーでもあり、ダンサーやモデルとしても活動中。数々のイベントやショーを通して“KAWAII”を原宿から世界に発信し続けている。

 

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TEXT=荒尾英

PHOTOGRAPH=デレック槇島(StudioMAKISHIMA)

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