TV、書籍、YouTube、SNSなどでレシピを公開し、レストランの枠を超えて「おいしい」を届けている、鳥羽周作シェフの書籍『本日も、満席御礼。』が発売となった。プロサッカー選手になることを諦め先生になり、その後、料理の世界へとギアを変更。31歳で料理の世界へ。数多くの苦境や挫折を乗り越え、一つ星を獲得するスターシェフへ登りつめた、最注目シェフ兼実業家による人生哲学。今回、特別に『本日も、満席御礼。』を抜粋・編集して一部公開!
「コピー」をつくるな。「イズム」をつくれ
「イズム」とはどういうことか?
たとえばホンダとかトヨタといった会社は、創業者はそこにいないけれどブランドの魂は残っています。それが「イズム」なのだと思います。
僕は、お店に「僕のコピー」をつくりたいわけではないのです。その人らしさはあっていい。個性を殺したいわけじゃありません。「イズム」を持った集団をつくりたいだけ。
ただの「コピー」だと飽きられてしまいます。でも、個性に「イズム」がプラスされると、カラーが出ます。それぞれのスタッフに、同じ「鳥羽イズム」みたいなのを感じられる。そうなれば最高です。
ぜんぶ僕と同じようにやる集団はつまらないし、僕のようにやるのはそもそも無理です。生まれ変わらないと無理。絶対に同じようにはつくれません。だから、80%の「イズム」を注入して、残りの20%で色づけするのがいいんです。
うちにはレシピがありません。
レシピにして「誰でもできること」に落とし込んでしまうと、クオリティが下がってしまうからです。料理が均一化してしまって誰でもできるような料理になってしまう。「レシピ」を伝えるのではなく「イズム」を伝える。プロセスの自由度は高いけど、目指すゴール設定はきちっと守る。それが僕らのやり方です。
ゴールに行き着く過程はそれぞれが見つけるものだし、そこで考えることこそが大切です。
レシピがあると、ひとつの料理を丸暗記すれば、その料理はできるようになります。でも別の料理をつくるときに、またゼロから丸暗記しないといけなくなる。逆に「イズム」があれば、なんでもおいしくつくれるようになります。
レシピではない方法で、クオリティを保つ。難しいのですが、それを実現する唯一の方法が「イズム」です。ゴールにたどり着くための思考パターンや思考能力を共有していく。それ以外のやり方でクオリティを担保しながら、たくさんの優秀な人材を育てるのは難しいと思っています。
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『本日も、満席御礼。』
幻冬舎 刊/¥1,500+税
なぜ、鳥羽の店は常に満席なのか? 鳥羽は言う。「ぼくは(食の世界に)選ばれた人間だと思う。待遇があまり良くないと言われる食の世界を変えていきたい。食を通じて、愛を配り続けます。プロと一流の違いは愛の濃さだと思うんです。お客さんへの愛、クライアントへの愛、愛があれば、最高の想像力が生まれるし、プラス最高の技術で仕事をすれば、それが人に幸福をもたらす。もう、そこの差しかない」。2022年4⽉27⽇発売