まだまだ先行きが見えない日々のなかでアスリートはどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う連載「コロナ禍のアスリート」から、バスケットボール日本女子代表の戦いをまとめて振り返る。※2020年、’21年掲載記事を再編
1年延期がレギュラー争いに大きく影響したバスケ女子代表の現在地
開催国枠で東京五輪に出場するバスケットボール女子日本代表のし烈なチーム内競争が佳境を迎えている。世界ランキング10位の日本は今月10、12、13日に同48位のポルトガルと横浜武道館で強化試合を3戦行った。
東京五輪代表候補に名を連ねる16人が試合に臨み、69-47、68-43、67-58で3連勝。今月下旬に発表予定の東京五輪の最終メンバー12人への生き残りを懸けた熱い戦いが繰り広げられた。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、日本にとって約1年4ヵ月ぶりの国際試合。2017年から指揮を執るトム・ホーバス監督(54=米国)は「ポルトガルのフィジカルは日本ではあまり経験できない。よい経験ができた」と収穫を強調した。
第1戦の序盤は動きの硬さが目立った。第1クオーター(Q)を終えて12点のリードを許すなど五輪出場権のない格下に苦戦。徐々に追い上げて40-40で第4Qに突入すると、三好南穂(27=トヨタ自動車)が4本の3点シュートを沈めて白星を手にした。
2大会連続の五輪出場を目指す三好は'16年リオデジャネイロ五輪では吉田、町田に続く3番手のポイントガード。グループリーグで強豪フランスを相手にステップバックから鮮やかな3点シュートを決めて5大会ぶりの8強入りに貢献した。
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なぜ女子バスケ日本代表はスター不在で銀メダルを獲得できたのか
東京五輪で女子バスケットボール日本代表が世界を席巻した。1976年モントリオール五輪の5位を上回る史上最高成績となる銀メダルを獲得。男女通じて初めて表彰台に立ち、トム・ホーバス監督(54)「スーパースターはいないが、スーパーチーム。最高のステージで日本のきれいなバスケを見せることができた。日本のバスケは新しい時代に入る」と誇った。
大会前の日本の世界ランクは10位。1次リーグを2勝1敗で2位通過し、決勝トーナメントでは準々決勝でベルギー(世界ランク6位)に86-85、準決勝でフランス(同5位)に87-71と格上を次々と撃破した。決勝では1次リーグで敗れた米国(同1位)と再戦。五輪55連勝で7連覇を達成した絶対女王に75-90で屈したが、堂々たる戦いぶりを見せた。
歴史を動かしたチームにスターはいない。今大会は身長1m93cmのエース渡嘉敷来夢(30=ENEOS)がケガでメンバー落ち。平均身長1m76cmは、出場12チーム中2番目に低い。インサイドに選手を配置しない5アウトのシステムを採用し、3点シュートと、成功率の高いペイントエリア内にシュートを集中させる戦術を徹底。中間距離の"ロング2"を極力減らした。
3点シュートの1試合平均は試投数31.7本、成功率38.4%ともに出場12チームでトップ。全6試合で35本中17本成功の林咲希(26=ENEOS)、44本中19本成功の宮沢夕貴(28=富士通)らシューター陣はもちろん、センターの高田真希(31=デンソー)が13本中7本成功するなど、誰もが外から打てるのが最大の武器だった。
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バスケット女子日本代表を銀メダルに導いたホーバス氏が男子代表監督に抜擢されたワケ
東京五輪でバスケットボール女子日本代表を銀メダルに導いたトム・ホーバス監督(54=米国)が男子日本代表の監督に就任することが発表された。日本独自のスタイルで世界を席巻した手腕が評価されての抜てき。就任会見では「女子を長い間やってきたので、びっくりしました。すごい大きなチャレンジ。こういうチャレンジは大好き。面白い道だと思います」と語った。
男子の本格的な指導経験のない監督に男子日本代表を託す異例の人選。日本バスケットボール協会の東野智弥技術委員長(51)の頭にホーバス監督を女子から男子にスライドさせるアイデアが浮かんだのは、東京五輪で男子日本代表が3試合を終えた直後だったという。「複数の候補が挙ったなかで、トム・ホーバスしかいないと思いました。2019年W杯で5戦全敗、東京五輪で3戦全敗に終わった男子には日本らしいバスケで勝つことが求められる。それはまさにホーバス監督が女子でやってくれたこと」と強調した。
東京五輪の男子日本代表は1次リーグでスペイン、アルゼンチン、スロベニアと同組に入り、3戦全敗。3点シュート成功率34.5%は出場12チーム中7位で、1試合平均の試投数28本は9位だった。対する女子は3点シュート成功率38.4%、1試合平均試投数31.7本はともに出場12チーム中トップ。外からのシュートの積極性と精度が男女の明暗を分けた大きな要因だった。
ホーバス監督はインサイドに選手を配置しない5アウトのシステムを採用。3点シュートと、成功率の高いペイントエリア内にシュートを集中させる戦術を徹底し、中間距離の"ロング2"を極力減らした。チームに100を超えるフォーメーションを記憶させ、相手や戦況に応じて使い分ける臨機応変な采配も披露。東野技術委員長は「日本バスケの文化を知り、世界に勝つための戦術を練ることができる。ストラテジーの天才」と評価する。
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