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2021.09.30

バスケット女子日本代表を銀メダルに導いたホーバス氏が男子代表監督に抜擢されたワケ

まだまだ先行きが見えない日々のなかでアスリートはどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「コロナ禍のアスリート」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

男子の本格的な指導経験はなし

東京五輪でバスケットボール女子日本代表を銀メダルに導いたトム・ホーバス監督(54=米国)が男子日本代表の監督に就任することが発表された。日本独自のスタイルで世界を席巻した手腕が評価されての抜てき。就任会見では「女子を長い間やってきたので、びっくりしました。すごい大きなチャレンジ。こういうチャレンジは大好き。面白い道だと思います」と語った。

男子の本格的な指導経験のない監督に男子日本代表を託す異例の人選。日本バスケットボール協会の東野智弥技術委員長(51)の頭にホーバス監督を女子から男子にスライドさせるアイデアが浮かんだのは、東京五輪で男子日本代表が3試合を終えた直後だったという。「複数の候補が挙ったなかで、トム・ホーバスしかいないと思いました。2019年W杯で5戦全敗、東京五輪で3戦全敗に終わった男子には日本らしいバスケで勝つことが求められる。それはまさにホーバス監督が女子でやってくれたこと」と強調した。

東京五輪の男子日本代表は1次リーグでスペイン、アルゼンチン、スロベニアと同組に入り、3戦全敗。3点シュート成功率34.5%は出場12チーム中7位で、1試合平均の試投数28本は9位だった。対する女子は3点シュート成功率38.4%、1試合平均試投数31.7本はともに出場12チーム中トップ。外からのシュートの積極性と精度が男女の明暗を分けた大きな要因だった。

ホーバス監督はインサイドに選手を配置しない5アウトのシステムを採用。3点シュートと、成功率の高いペイントエリア内にシュートを集中させる戦術を徹底し、中間距離の”ロング2″を極力減らした。チームに100を超えるフォーメーションを記憶させ、相手や戦況に応じて使い分ける臨機応変な采配も披露。東野技術委員長は「日本バスケの文化を知り、世界に勝つための戦術を練ることができる。ストラテジーの天才」と評価する。

前監督は通訳を介して指示

コミュニケーション能力の高さも重視された。東京五輪で男子を指揮したフリオ・ラマス監督(57=アルゼンチン)は通訳を介して指示。東京五輪のアルゼンチン戦の第3クオーターで4点差に迫った場面でのタイムアウトなど限られた時間で効果的な言葉を掛けることができなかった。

その点、ホーバス監督は’90年に日本人女性と結婚して2人の子供がおり、日本語が堪能。細かい表現など分からない単語もあるが「自分の言葉の方が伝わる」と通訳を使わずにダイレクトに指示を出す。熱い言葉で選手を奮い立たす術に優れ「言葉の魔術師」とも称された。加えて、八村塁(23=ウィザーズ)、渡辺雄太(26=ラプターズ)の所属するNBAクラブの監督やGMと英語で直接対話できることもメリット。日本代表の2枚看板の状態把握や、招集期間の交渉などがスムーズに進むことが期待される。

女子日本代表を率いた4年間、ホーバス監督は熱血指導で選手を鍛え上げた。試合中はベンチから丁寧な日本語で選手を怒鳴り散らし、練習では体の角度や相手との距離などに数cm単位までこだわり「世界一の練習をしてきた」と自負。東京五輪で女子の主将を務めた高田真希(32=デンソー)は「練習は心拍数的にも頭的にも、相当きつい。練習では要求と違えば何度でもやり直させられる。正直、試合の方が全然、楽だった」と証言する。

ホーバス監督は「選手と信頼関係があったから、そういう指導ができた」としながらも「私は熱い人。それがDNAなのでスタイルは変わらない。男子でもいい関係をつくって、選手のために厳しくする」と明言。八村、渡辺らスター選手のいる男子でも妥協を許さない姿勢を鮮明にした。基本的なスタイルは「女子の時とほぼ変わらない」と速い攻守の切り替えや、正確な3点シュートを駆使したスタイルを継続する方針。男子は女子に比べて活動期間が限定され、特にNBA組は世界大会の4週間前にしか合流できない可能性が高いが「そういうチャレンジは好き。簡単ではないができる。100%頑張ります」と言い切った。

公式戦の初陣は11月下旬の’23年W杯アジア1次予選(開催地未定)の見込み。最大の目標となる’24年パリ五輪については「簡単に目標は言わない」と慎重だった。’17年に女子日本代表監督に就任した際は東京五輪での金メダルを掲げたが、Wリーグ監督や代表コーチを経験していた4年前とは状況が違い、男子では未知数の部分も多い。世界との距離を測りながらターゲットを定めることになる。女子の名将が男子でどこまで通用するのか。今後の試金石にもなるチャレンジが幕を開けた。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=長田洋平/アフロスポーツ

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