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2022.02.22

【新庄剛志】BIGBOSSの新刊『スリルライフ』の制作裏を公開! ライバルはお笑い業界!?

2022年の主役は間違いなくこの人。北海道日本ハムファイターズの新庄剛志BIGBOSSが思いの丈を語った新刊本『スリルライフ』が発売された。監督就任への軌跡や今シーズンの戦略から人生、プライベートまで赤裸々に語った1冊にはビジネスパーソンにも役に立つBIGBOSSの哲学が詰め込まれている。10時間以上におよぶインタビューを行った担当編集がその制作の裏側を明かした。

「天然だと思っている人が多いけれど、全部事前にしっかり計算している」

どうやらただの目立ちたがりのチャラ男ではなさそうだ。衝撃の監督就任会見から3ヶ月が過ぎ、そろそろ彼の“正体”がバレつつあるような気がする。新庄剛志BIGBOSSの新刊『スリルライフ 天才ではないが、天然でもない』(マガジンハウス)は、監督就任後に行われた10時間以上におよぶインタビューによって構成された。初回のインタビュー、最初の質問は「なぜ僕らは、新庄剛志にこんなにワクワクさせられるのか?」というものだった。

「スリルがあるからだと思います。僕は『そこまでやっていいのかな』とか『そんなこと言っていいのかな』ということをやっちゃうから、見ている人もハラハラする。そこが面白いと思ってもらえているんじゃないですかね。ハイリスク・ハイリターンが好きなんです。今、みんなリスクを避けるじゃないですか。でも誰にも怒られないように、叩かれないようにと思って行動していたら面白いことなんかできない。僕はリスクがあっても、自分がやるべきことをやる。そのための勘と経験と度胸は誰にも負けない自信があるんですよ」

彼への質問は、事前に準備したものから、その場で思いついたものまで、200問以上あった。驚いたのは、どんな質問にもBIGBOSSが即答することだった。長年インタビューの仕事をしているが、これだけのロングインタビューだとじっくり考える時間も長くなり、後半になればなるほど答えがなかなか出てこないことも多い。だが、BIGBOSSはちがった。どんな質問に対しても、サッと自分の考えを語りだす。クレバーで頭の中がしっかりと整理されていると感じた。

「僕のことを天然だと思っている人が多いですよね(笑)。でも自分が何をやればどんな反響があって、それがどうつながっていくかということは、全部事前にしっかり計算しています。監督就任会見で真っ赤なスーツを着たのも『これからプロ野球を変える!』という意思を示したかったから。地味なスーツにネクタイを締めて『チーム一丸となって優勝を目指します』と言ってもニュースにならない。これまでの人と違うことをして、盛り上げ、プロ野球を見てみたいと思ってもらうためには何を着て、何を言えばいいか、とことん考えて、あのスーツを選んだんです。誰かを傷つけてまで自分がやりたいことを貫く気はありません。ただ批判もあるだろうなというのは覚悟しています。批判は怖くないですよ。批判されて自分が間違っていると思ったら、修正すればいいだけですから」

「天才だと思われたくて、練習嫌いのフリをしていた」

突飛に思える言動にも、すべて彼なりの計算が秘められている。もちろんBIGBOSSらしい破天荒なエピソードもたくさん語ってくれた。
「整形はサングラスを変えるくらいの感覚」、「主食は菓子パンと缶コーヒー」、「(トライアウト挑戦時)石ころを投げてトレーニングした」、「人生で本を一冊も読んだことがない」……。

ものすごく常識人だと思ったら、とんでもなく非常識な話も飛び出す。ずっと話していてもまったく飽きない。インタビューを行った昨年末は、ご存知のようにテレビに出たり、球団のイベントに出たりとBIGBOSSは超多忙だった。文字通り寝る間もない生活のなかで、かなり疲れていたはずだ。だが、彼は嫌な顔を見せるどころか、いつも楽しそうに、丁寧かつ真剣に自分の思いを語ってくれた。

「僕が考えているのは、プロ野球をどうやって盛り上げるかということ。そのためにはファイターズの選手が野球を楽しまなきゃならない。でも楽しむためには、野球がうまくならなきゃならないから、練習はかなり厳しくなると思います。ライバルは他のチームとかスポーツではなく、お笑い業界ですね。M-1グランプリとか、若い人も盛り上がるじゃないですか。あれくらい注目されるスター選手がどんどん出てくればいいなと思っています」

野球に関しては、ストイックでシビア。オフの間は、歴代の名監督の采配を徹底的に研究し、チームの導き方を考えた。「天才だと思われたくて、練習嫌いのフリをしていた」という現役時代も実は誰よりも練習していたというから、選手に求めるハードルも高い。

「今の若い選手にただ厳しく言ってもダメだということはわかっています。そこはコーチも含め、しっかりコミュニケーションして、『楽しいけど厳しい、厳しいけど楽しい』と思ってもらえる工夫、努力は必要。最初の1年は僕自身も勉強だと思っています。プロ野球に来る選手は、みんな潜在能力が高い。あとは僕がそれをどう伸ばしてあげられるか。選手たちを見ながら、この子らをどうやってスターにするかということを考えているとすごくワクワクしてくるんですよ」

長引くコロナ禍で明るい未来を見出しにくい時代に、BIGBOSSのようなリーダーが登場したのは必然のように思える。野球と選手への大きな愛と情熱、さらには勝利を得るための緻密な計算と、奇想天外なエンターテイメント性。そこにはプロ野球だけでなく、ビジネスや人生を楽しむためのヒントがたくさん隠されている。

『スリルライフ 天才ではないが、天然でもない』
新庄剛志 著 マガジンハウス ¥1,650

TEXT=川上康介

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