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2021.12.18

15歳で起業したセブンセンスの吉田拓巳が26歳になって見据える未来とは?

吉田拓巳という名前を聞いたことがあるだろうか? 日本最年少社長として15歳でセブンセンスを福岡に設立。以降、映像制作、空間プロデュース、企業ブランディングを軸に、時代の最先端を行く数々のクリエイションを発表し続ける26歳だ。2018年5月には無料配車サービス「nommoc(ノモック)」事業をスタートさせ、2020年2月には九州最大規模のイベントスペース「Whask(ワスク)」を開業するなど、その活動はリアルとデジタルを往来する。すべての分野でDX化が当たり前に求められる現代社会を生き抜くために、まず彼の名前を知っておいて損はないはずだ。前編と後編の2回にわたってインタビューをお届けする。【後編はこちら】

10代でリアルとデジタルの融合を見抜いた天才児

吉田拓巳という男には、たくさんのインパクトのある肩書と実績がある。

10歳で初めて映像制作を開始。15歳で会社を立ち上げた日本最年少社長。16歳でWebサービス「お年玉.me」をリリース。17歳で10代のネット疑似選挙サイト「Teens Opinion」を開設。22歳で無料配車サービス「nommoc(ノモック)」を設立すると、株式投資型クラウドファンディングでの5000万円の資金調達が開始から4分30秒で過去最速完了。他にも国内最大級音楽フェス「ULTRA JAPAN」で画期的な映像演出を担当したり、エイベックスが手掛ける未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」のテクニカルディレクターとして500機のドローンを使ってショーを行ったり……。彼のクリエイションは、コピーを読んだだけでも「どんなものなのだろうか?」と人を惹きつけてしまうのである。

「ビジネスとクリエイティブはセットだと考えています。名前もロゴもキャッチコピーもめちゃくちゃパワーを使っていて、そういう全方位的な積み重ねこそ、話題を呼ぶ要素となると思うのです。ノモックのコピーも何個も考えたのですが、最終的に『移動を無料に』にしました。まず人に"なんだろ?"と思ってもらって、それを補完する短いアニメーションをSNS上で拡散する。思えば、昔からその考えは一貫していました。10歳で映像やるとか、15歳で会社作ったとか、お年玉.meや10代ネット議員疑似選挙もそう。人が一瞬"なんだろう?"と引っかかるようなコミュニケーションを戦略的にとることで人に知ってもらう。人と違うことをやるというのは一見損するように見えて、一方で得すると思っているんです」

確かに15歳でゼロから立ち上げた会社では、大企業のような巨額の宣伝費をかけられはしない。高校は通信制だったので、福岡の自宅でひとりインターネットで様々なことをリサーチしながら、自らの事業が成功するために何をすればいいのか、ひたすらアイデアを練り続けた。「10代で僕は学校に行かなくていいなと思っていたけど、両親は高校ぐらいは行ってくれと。僕のアイデアはネットが情報源だった。人から教えてもらうと答えしかないので、広がりがまったくないから」。吉田拓巳とはそういう人間なのである。

「最初は映像だけをつくっていたのですが、それを納品して終わるみたいな繰り返しだった。でもその当時からフェスに参加するなど、その場でしか体験できないものこそがネット社会が進むと逆に価値になるのでは? となんとなく思っていた。企業やブランドも今までは、テレビCMの看板を買うのが広告戦略だったけど、近年は徐々にイベントに協賛してブース作ったり、新作発表でポップアップを建てたり、手法が変化してきている。そういう流れになってきて、僕にも仕事がより回ってくるようになりました。僕の根本的なメインの考え方というのは、リアルなものをテクノロジーを使うことでより拡張できたり、アップデートできるのではないかということです。もともとリアルなイベントでコミュニケーションを作っていたのですが、それをもうちょっと簡略化してデジタルに近いようなコミュニケーションをとったり、ソリューションとして移動サービスを作ったり。すべてリアルなものの延長線上なんです」

コロナ禍におけるデジタル社会だからこそ、人はリアルを求める。だからこそ、リアルをデジタルの力でアップデートする。最近のビジネスの軸である九州最大のイベントスペース「Whask (ワスク)」の運営や、無料配車サービス「nommoc(ノモック)」の立ち上げなど、彼の事業形態はとても幅広いが、10代の頃から根本的なビジネスに対する考えは一貫している。

コンテンツこそ人を呼ぶという考え方

福岡の大名エリアに位置するイベントスペース「Whask (ワスク)」は複合商業施設CAITAC SQUARE GARDEN内にある。あえて無機質なホワイトキューブのスペースにしており、どんなイベントでもすぐに仕様を作り上げることができるようにしているという。アートの展示会場、アパレルのポップアップショップ、ラグジュアリーブランドの商品販売会、アーティストとのハイタッチイベント……。デジタルを駆使して、さまざまなコンテンツ募集を呼びかけ、リアルに人が集う空間をプロデュースする。

「コンテンツが人を呼ぶのかなとは常に思っている。大規模な宣伝をやるのではなく、常にコンテンツが変わり続けている空間をつくりたい。コンテンツが入れ替わる方が、新しい人を呼び込むエコシステムがつくれるのではないかと考えました。単なるギャラリーではなく、"何にでも使える"というコンセプトを絞らないコンセプトです」

では、無料配車サービスはどうなのだろうか? 現在はコロナ禍でサービスがストップしているが、吉田の脳内ではこのサービスを利用した未来の世界が広がっていた。

「これまでいろんな会社さんから発注を受けてイベントなどをつくっていたわけですが、質のいいコンテンツを作り続けるのはキリがある。"去年はこれをやったとか、他のブランドはこの人呼んでいました"とか、ですね。ユーザーに何かしらの対価を提供しなければならない中で、まず"無料で移動ができれば誰でも嬉しいだろうな"と考えていました。ノモックでは、無料で目的地までお連れする間に、企業さんとのタイアップによって簡易的なイベントに参加しているかのような体験ができたりするソリューションを作っています。将来的には、人が運転することがなくなる時代が来てタクシーに乗ってお金を払うみたいな概念が変わると思っていて、この事業はその先駆けとしてやっています」

メタバースについて

2021年に入り、Facebook社がメタバースに可能性を見いだし、会社名をMeta社に変更。仮想空間が注目されている中で吉田はどのような考えを持っているのだろうか。

「必ずその世界が来ていることは間違いないとは思います。たとえば、東京とかは特にリアルな空間は埋め尽くされているから、その空間でゼロから何かを作りあげたりできれば面白い。ただ、質の高いコンテンツがその中で生まれないと、まだまだ結構厳しいんじゃないかなと思っていて。僕もちょこちょこメタバース上でアーティストのライブとかを見るのですが、リアルでやっているライブを空間上にもっていっているだけなので、何も面白くない。ジャスティン・ビーバーのアバターに近づけても、テンションは上がらないですからね。YouTubeでDJの映像を見てもつまらないように……。それにVRをつけるのって、実際めっちゃめんどくさい。眼鏡とかで実現できたらいいのかもしれないけど、まだ時代に見合ってない気がします。たとえば衝撃があったら痛いとか? 映画の『マトリックス』とか向こうの世界で死ぬと本当に死んでしまいますよね。ちょっと大げさですが、そのぐらいだと、人は没入すると思います」

どんなにテクノロジーが発達しようが、吉田の目から見ても、やはりリアルに勝るものはないということなのだろう。最後に素朴な疑問をぶつけてみた。なぜ頑なに彼は福岡から拠点を移さないのだろうか。

「いい意味で福岡は、東南アジアっぽい何かがふつふつとしている感じがあって。福岡にいて何かやる方が得するなと。最近、よりそういう雰囲気が出てきて、ちょうどいいんですよね。これから、よりグローバルに事業を展開したいと思っているし、もっと世界で仕事がしたい。そういう意味でも立地的にも福岡はアジアの中心地なので、そこがいいかなと思う。福岡って、上海と東京のちょうど間ぐらいの距離って知っていました?」

Takumi Yoshida
1995年、福岡生まれ。実業家、クリエイター。日本最年少社長として15歳でセブンセンスを設立。16歳で10代のネット擬似投票サイト「Teens Opinion」をリリースし、大きな話題を呼んだ。2014年、一般社団法人日本広告業協会主催コミュニケーション大賞 ‒ Innovative Communication Award-(ICA)大賞受賞。MINMI主催のイベント「FREEDOM」や全国ツアーをはじめ、国内最大級の音楽フェス「ULTRA JAPAN」の映像演出、未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」のテクニカルディレクター、空間プロデュースや企業のブランディングも手掛ける。2018年5月無料配車サービス「nommoc(ノモック)」事業スタートし、創業時の投資型クラウドファウンディングでは4分半で5000万円の調達を成功させるなど、多くの注目を集めている。

「KISS,FUKUOKA」が実現!

吉田がイベントスペースを運営する福岡・天神エリア最大規模の複合施設「CAITAC SQUARE GARDEN」において、開業後初となる X’mas EVENTが2021年12月18日(土)~12月25日(土)に開催される。東京を愛する気持ちをKISSマークに置き換え表現した東京の新しいカルチャー「KISS,TOKYO」とのコラボレーションにより「KISS, FUKUOKA」が実現。フォトブースやアイテム販売、ワークショップなどさまざまなイベントを展開する。

TEXT=鈴木 悟(ゲーテ編集部)

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