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2022.01.19

15歳で起業したセブンセンスの吉田拓巳が26歳になって見据える現実とは?

吉田拓巳という名前を聞いたことがあるだろうか? 日本最年少社長として15歳でセブンセンスを福岡に設立。以降、映像制作、空間プロデュース、企業ブランディングを軸に、時代の最先端を行く数々のクリエイションを発表し続ける26歳だ。2018年5月には無料配車サービス「nommoc(ノモック)」事業をスタートさせ、2020年2月には九州最大規模のイベントスペース「Whask(ワスク)」を開業するなど、その活動はリアルとデジタルを往来する。すべての分野でDX化が当たり前に求められる現代社会を生き抜くために、まず彼の名前を知っておいて損はないはずだ。インタビュー後編の今回は、吉田の拠点である九州最大規模のイベントスペース「Whask (ワスク)」を訪ねた。【前編はこちら】

flower view / witness(左)、NEW WORLD ORDER / m2n(右)の作品の前に立つ吉田拓巳。

デジタル時代だからこそ重要視するリアル

15歳で初めて起業してからちょうど10年が経過した2020年6月。セブンセンス代表取締役の吉田拓巳は、自らの拠点である福岡市警固地区に九州最大級のイベントスペース「Whask(ワクス)」を開業した。それは、リモートワークとホームステイが推奨され、ビジネスから遊びまですべてにおいてオンラインを重視する風潮が押し寄せた時期と重なる。だが、そんなことはお構いなしと言わんばかりに、彼はあえて”リアル”な場の提供を推し進めたのである。

「Whask」は複合商業施設CAITAC SQUARE GARDEN内に構える。どのような企画にも適した空間となる四方オールホワイトの330平米のスペースである。続けて’20年秋、同じ場所にポップアップショップや物販店としても利用可能な小さなスペース「Whask POCKET SHOP」をオープン。昨年末にはそこで東京の新しいカルチャー「KISS,TOKYO」とのコラボレーションにより生まれた「KISS, FUKUOKA」の開催や、新しい作家との出会いの場を提供する「Meet the Art」をプロデュースするなど、数々のリアルイベント実現に奔走した。なぜ彼は、一見、時代と逆行するかのようなビジネスモデルにこだわり、あえてそこに勝機を見出そうとしているのだろうか。

「コロナによって人は、体験価値というものをより重要視するようになってくると考えています。たとえば、アートって写真で見ても僕は全然買いたいとは思わないんです。でも、実際に観に行って、コンセプトを聞いて、共感したりすると、これまでいいと思わなかったもので買ってしまう場合があります。そして、買う瞬間にアドレナリンが出るんです。それは決して、画面だけで読み取れないものだし、オンラインが求められる時代になったからこそ、リアルな場所で起こる同時多発的なものや予想をしていないことがポイントになるのかなと思っています」

「Whask」の空間コンセプトを「どこまでもWhiteな空間。 Whiteは自由であり変化の象徴。多様に変化できる空間から、新しい文化が発信される」と掲げる。コロナ禍によって急速にDX化が求められる。そんな風潮に乗るのは当たり前のことだ。しかし彼は、単にその波に乗ろうとする人々に対してのアンチテーゼとして、あくまでも冷静にリアルなコンテンツの重要性に目を向けるのである。いや、デジタルネイティブである26歳の起業家だからこそ、DXの本質を理解できるのかもしれない。

「オンライン上での表面的な宣伝よりも、僕はコンテンツが人を呼ぶと考えている。昨年末のイベントも、施設名を押し出すのではなくて、あえて”KISS, FUKUOKA”というコンテンツを全面に出していくことで、それが街に広がり、”あれはどこでやっているんだ?”と伝播的に知られるようなコミュニケーションがとりたかったんです。だって、たとえばいくらメタバースで音楽ライブを聴きに行っても、鳥肌は立たないですからね。じゃあ、なんでリアルな場では鳥肌が立つんだろうと考えると、やっぱり、あの爆音と歓声なんです。メタバースも、もう少し熱狂の中で会場に入る感じとか出てくれば、変わってくると思うのですが」

実際に体験したものにしかわからない世界

リアルを追うというのは、もちろんインターネット上での発信を手放すということではない。SNSなどで自らのコンテンツをあくまでもわかりやすく伝えることを心がけた上で、リアルな場所へと人々を誘導する。あくまでも人間の本質は、デジタルだけで完結しないという意味である。

「実際にデジタル上で見ただけの情報って、何が凄いのかということを人に説明したり、共有したりするのが難しいと思っている。先日、エスパス ルイ・ヴィトン大阪で開催されているゲルハルト・リヒターの展覧会『アプストラクト(Abstrakt)』に行ったんですけど、その場に行っていない人にあの凄さをうまく話せなかったんです。それは、実際に見ている人と見ていない人とでは、情報の厚みが全然違うからです。あの別次元の感覚に陥る感じとかは、写真だけだと伝わらない。言語化できない部分っていうのは自分たちが思っている以上に割合が大きいんです」

現代のビジネスシーンでも、Googleを代表とするテクノロジーを追い求める企業が出社の必要性を説き始めている。余談や余白こそ、新たなアイデアを生む要素となる。そうしたシリコンバレーの動きは、吉田は自らの思考とシュリンクすると考えているのである。

「Whaskでは余白をあえて作ったんです。なぜなら、余白がないとインストールできなくなってしまう。そして、その余白感みたいなものは個人としても大事だということがコロナで証明された。結局、人の話って、インプットがないと入ってこないし、自分の興味あるものしか見えないんです」

最後にこれだけは聞いておきたかった。福岡在住26歳、気鋭の起業家がアイデアを生み出す根源とは?

「そもそも、ひらめくということが僕は存在しない思っている。日々の経験の中で得られた情報の積み重ねで、あるキーワードが入った時にたまたまアイデアになるだけ。ネットだと最短ルートで答えにたどり着けて、世界のすごいものが写真で見られたりするのですが、リアルで得た情報との厚みは全然違う。現場に行く途中で発見するものがとても大切で、結局はそうした情報の積み重ねだと思います。たとえば、東京って三倍ぐらいの速度感で物事が動いているので、溜めたものをブーストさせるために頻繁に出向いたりするんです。一方で僕が拠点にする福岡は一倍速だから本当に作りたいもののベース作りには適した場所だし、いい意味で東南アジアや台湾みたいな”これから上がっていきそう”な雰囲気もあっていいんですよ。要するに、人は脳みそだけでは本質の思考は切り替えられない。表面的な情報だけでなく、人の行動って”寒いから”とか”暖かいから”とかに結構左右されるはず。だから僕は、無理やりにでもその環境に身体ごと持っていくのがいいなと思いますね」


Takumi Yoshida
1995年、福岡生まれ。実業家、クリエイター。日本最年少社長として15歳でセブンセンスを設立。16歳で10代のネット擬似投票サイト「Teens Opinion」をリリースし、大きな話題を呼んだ。2014年、一般社団法人日本広告業協会主催コミュニケーション大賞 ‒ Innovative Communication Award-(ICA)大賞受賞。MINMI主催のイベント「FREEDOM」や全国ツアーをはじめ、国内最大級の音楽フェス「ULTRA JAPAN」の映像演出、未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」のテクニカルディレクター、空間プロデュースや企業のブランディングも手掛ける。2018年5月無料配車サービス「nommoc(ノモック)」事業スタートし、創業時の投資型クラウドファウンディングでは4分半で5000万円の調達を成功させるなど、多くの注目を集めている。

DIRECTION=二本柳陵介(ゲーテ編集部)

TEXT=鈴木 悟(ゲーテ編集部)

PHOTOGRAPH=林田大輔

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