起業家やフリーランス、複数の会社の社員等が共同で利用できるシェアオフィスがコロナ禍にあって注目を集めている。自分の会社に行かないで仕事をするーー。その最前線をレポート!
大企業の挑戦を支援し、日本の未来を担う場所
大企業の事業改革や新規事業の創出をサポートするインキュベーションセンターとして、森ビルが虎ノ門ヒルズビジネスタワーにオープンしたのが新しい形のオフィス、ARCHだ。入居するのは、部長以上の決裁者を含む大企業の新規事業チームで、2020年4月に43社でスタート。現在は72社にまで増加している。

【ARCH 虎ノ門ヒルズ インキュベーションセンター】世界でも稀有な大企業の新規事業担当者に特化したインキュベーションセンターとして2020年4月にオープン。
「日本ではスタートアップ企業は盛り上がりを見せていますが、大企業における新規事業はあまりうまくいっていなかった」
そう話すのは、ARCH企画運営室 室長の飛松健太郎氏だ。

現在の会員企業は72社。オープンスペースでの交流のほか、勉強会やランチ会、部活など会社の垣根を越えた会員同士のコミュニケーションを促している。
「担当者に抜擢される傾向にあるのは、既存事業で結果を残し、新しいものに対して感度が高い社員です。でも、大企業にいると分業での仕事には慣れていても、ゼロからイチを生み出す経験が足りず、途中で行き詰まってしまう人も多いんです」
こうした会員をARCHではさまざまな形で支援している。例えば、会員に進行中のプロジェクトについてヒアリングし、課題を抱えたA社とそれを解決できそうなB社に声をかけ、両社の交流を促すこともある。またARCHでは、多くの会員がオープンスペースで仕事をしているため、会員同士の日常的な交流を通して、外部人材の活用法やコンサルティング会社の評判など、社内では得難い情報を得ることもできる。

インテリアデザインはWonderwall®片山正通氏が担当。
「イノベーションはゼロからイチを生みだすというよりは、多くがすでにあるアイデアを足し合わせることで生まれます。ARCHでは銀行や広告代理店、ロジスティクスなど多様な業種の新規事業担当者が集まっている。だからこそ、各々が進める新規事業だけでなく、会員同士の既存事業が結合すれば、思いもよらなかった展開が生まれる可能性を秘めています」

森ビル ARCH企画運営室 室長 飛松健太郎
1978年生まれ。2008年森ビル入社。オフィス事業部を経て、’15年よりイノベーション創出領域における企画や運営、営業全般の活動に携わる。’20年にARCH企画運営室 室長に就任。