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2021.08.06

【西野亮廣】認知作品は時間を奪わない

常に時代の先頭を走り続ける西野亮廣の新連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」!
いまだに売れ続けているベストセラー『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』の刊行から4年経った、今の西野さんの頭の中とは? 衝撃多めの連載、第二回。
※ここで掲載する記事は、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』に投稿した記事を、連載用に加筆修正したものです。

連載「革命のファンファーレ~現代の労働と報酬」

西野亮廣さんポートレイト

第二回 サービス提供者に求められる「現代の時間」の捉え方

あらゆるサービスは「可処分所得の奪い合い」から始まっています。
「可処分所得」というのは、所得から、税金やら社会保険料などを差し引いた「手取り収入(お客さんが自分の意思で自由に使えるお金)」のことです。
それがある時から「可処分時間(お客さんが自由に使える時間)の奪い合い」になったことは、すでにご存知だと思うので、ここの説明はスッ飛ばします。

現在、あらゆるサービスが「お客さんの時間を奪う戦争」に参加していますが、「それ…もう、流行んねーよ」というのが今回の内容です。
怒らずに聞いてください。

人はなぜ「知っている作品」を観に行くのか?

昨夜、映画製作チームの皆と次回作について話し合いました。
作品の中身は勿論のこと、「コミック原作やテレビドラマの映画化が全盛の中、“オリジナル作品”を世の中に届ける為にはどうすればいいのか?」というのがメインテーマです。

お腹を痛めて作品を生んだところで、お客さんに観てもらわなければ、その作品は世の中に生まれたことしてカウントされません。
作品を作る作業が「出産」であれば、作品を届ける作業は「育児」であり、「育児放棄」をしてしまう作り手は、作り手として生きていくことはできません。

作者が作品を届ける作業に精を出せば出すほど、一部の人間は、その作者を「商売人」と揶揄しますが、親が命を懸けて守らなければいけないのは「自分の外面」などではありません。
「我が子」です。
僕は(作品の)親なので、泥水をすすってでも、ボロを着てでも、世界から誤解され、時に、殴られてでも、我が子を育てあげます。

さて。
2016年に出版したビジネス書『魔法のコンパス~道なき道の歩き方~』では、「お客さんは確認作業でしか動かない。現代において『ネタバレ防止』は、まったく逆効果だ」と説きました。
「ルーブル美術館の近くに寄った際、なんとなく入館料を払って中に入って『モナリザ』を観る理由は、教科書で『モナリザ』を観たことがあるからだろう?」と。

旅行もそうですね。
人は、テレビかネットかパンフレットで「見たことがある場所」しか、旅行先として選びません。

当時、この本を出版した時(「ネタバレは積極的にやった方がいい」と提案した時)に、「ネタバレをしたら買う理由がなくなるじゃないか!」という反論があったので、絵本『えんとつ町のプペル』を全ページ無料公開して、ヒットさせて、黙っていただきました。

少し手厳しい表現になりますが、『ネタバレを防ぐ』が有効打となるのは、中身を知られたらマズい「サプライズ性のある商品」か、シンプルに「クソ商品」だけです。
学生時代を振り返ってみると、『もののけ姫』の公開時は、事前番組で“ほぼ全ての”内容を観ましたが、迷わず映画館に足を運んだものです。
「本物を観たい」という動機です。

人は、利益を得られるかもしれない局面では『確実に手に入る道』を選び、反対に、損失を被るかもしれない局面では『最大限に回避する道』を選びます。
要するに、「ハズれる可能性が含まれているところに張るぐらいなら、実入りが少なくても確実に当たるところに張っちゃうよね」という話です。

今、日本は猛スピードで貧しくなり、日本人は猛烈に忙しくなっています。
「日本人は、お金と時間の無駄遣いをものすご〜く嫌っている」と言えるかもしれません。

昔に比べて「知らないもの」「見たことがないもの」「ネタバレしていないもの」に賭けるリスクが高くなっているので、「知っている(見たことがある)『本物』」に人が集まる流れは避けられません。
『劇場版 鬼滅の刃』がそうでしたね。

当時、絵本『えんとつ町のプペル』の無料公開は業界関係者からも激しく非難されましたが、「中身が分からない絵本」をヒットさせるなんて、現代では、ほぼほぼ不可能です。
#ほぼほぼね

と、まぁ、ここまでは『損失回避マーケティング』の話で、こんな話は、千年前からさせてもらっていて、わざわざ2021年にする話ではありません。
前フリが長くなりましたが、ここからが本題。

「現代の集客」についての話です。

「認知作品」は時間を奪わない

聞くところによると、「テレビ初公開のあのヒット映画!」の視聴率は、そこまで良くないそうです。
#メガヒット作品は別ですが

それよりも、千万回こすられている『天空の城ラピュタ』や、『となりのトトロ』の視聴率の方が良かったりします。
テレビ局は、番組改編の時期(裏で新番組が始まる時期)に、ジブリ映画をぶつけたりすることもあるかもしれません。
「皆が観たことがあるジブリ映画」は今尚、テレビのキラーコンテンツです。

多くの人が「内容を知っているジブリ映画」にチャンネルを合わせる理由は、もちろん、『損失回避』もあるでしょう。
「面白いかどうか分からない裏番組を観るぐらいなら、ラピュタを観よう」といった。
これは、さっきの話ですね。

僕はそれ以外にもう一つ、「多くの人が『内容を知っているジブリ映画』を選ぶ理由」があると考えています。

それは、『内容を知っている作品は席を外せるから』というものです。

番組の途中でトイレに行っても、ゴミを出しに行っても、ストーリーを知っているので、ストーリーに戻ってくることができます。

テレビ初公開の「まだ観たことがない作品」だと、それはできません。
ストーリーに着いていくには一言一句逃すわけにはいかず、テレビに2時間ヘバリついておかなければならないのです。
つまり、「知らない作品」は自分のタイミングで席を外せないので、ものすご〜く時間を奪われちゃうんです。

究極はスマホです。
「知らない作品」はスマホをイジりながら観ることができません。
テレビ画面から目線が外れてしまうからです。

『天空の城ラピュタ』が放送される時に、「バルス祭り」が起きますが、「皆が『バルス』のタイミングを知っている」というのは勿論のこと、そもそも、スマホをイジれるのは「ストーリーを知っているから」です。
ストーリーを知っているから「バルス」に備えられるし、ストーリーを知っているから、Twitter画面に目を移すことができます。

ジブリ作品は、友達とLINEしながら観ることができるので、まるで時間を奪いません。
作品の内容が知られれば知られるほど時間を奪わないので、“人間が忙しくなればなるほど”強くなります。
気づきましたか?
今、僕は変なことを言ってますよね?
「可処分時間の奪い合い」どころか、「ジブリって時間を奪わないからイイよね」と言っているんです。

そろそろ話をまとめますね。

「可処分時間の奪い合い」の向こう側

可処分時間の奪い合いが激化し、僕らは「時間貧乏」になりました。
その辺りから「隙間時間で楽しめる短いコンテンツ」が出てきて、「隙間時間の奪い合い」になりましたが、そこも、もう埋まってしまったのが現代です。
こんな時代に、時間を奪いすぎる「Clubhouse」が定着するわけがないんです。

可処分時間の奪い合いは厳しくなり、隙間時間の奪い合いも厳しくなりました。
今、求められているのは、「時間を奪わないコンテンツ」であり、「好きな娘からのLINEを続けさせてくれるコンテンツ」です。
近年、音声メディアが伸びている理由は、ハードウエアが出揃ってきたことの他に、「ながら聴きできるから」と言われています。
まぁ、そうだと思います。

ただ、音声メディアの中でも、なかなか面白いデータが出ています。
僕は、「Voicy」という音声メディアで毎朝7時に喋っているのですが、行間を詰めるように(ハイテンポ)で喋ると再生回数が減って、行間を空けながら(ローテンポ)で喋ると再生回数が増えるんです。
要するに、「お客さんをラジオの前に釘付けにしちゃダメだ」という話です。
少し離れても、また話に戻って来られるように(お客さんの時間を奪わないように)しておかなくちゃいけないんですね。

現代のサービス提供者には、このあたりの距離感を掴むことが求められています。
と言いつつ、そこそこの長文で時間を奪っちゃいましたね。
ごめんなさい。呑みに行ってきます。

西野亮廣氏ポートレイト
Akihiro Nishino
1980年生まれ。芸人・絵本作家。モノクロのペン1 本で描いた絵本に『Dr.インクの星空キネマ』『ジップ&キャンディ ロボットたちのクリスマス』『オルゴールワールド』。完全分業制によるオールカラーの絵本に『えんとつ町のプペル』『ほんやのポンチョ』『チックタック~約束の時計台~』。小説に『グッド・コマーシャル』。ビジネス書に『魔法のコンパス』『革命のファンファーレ』『新世界』。共著として『バカとつき合うな』。製作総指揮を務めた「映画 えんとつ町のプペル」は、映画デビュー作にして動員170 万人、興行収入24億円突破、第44回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞という異例の快挙を果たす。そのほか「アヌシー国際アニメーション映画祭2021」の長編映画コンペティション部門にノミネート、ロッテルダム国際映画祭クロージング作品として上映決定、第24回上海国際映画祭インターナショナル・パノラマ部門へ正式招待されるなど、海外でも注目を集めている。

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TEXT=西野亮廣

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