2013年8月号からスタートした連載も約8年が経過。メインキャスターを務める『Nスタ』も5年目を迎えた。ひとりの仕事人としても、大人の女性としても刻一刻と変貌を遂げているホランさん。ゲーテだけに明かしてくれた現在地とは?
“やってみたい”の気持ちを素直に追いかけていた
TBSの報道番組『Nスタ』のキャスターも5年目を迎え、お茶の間の顔としてもおなじみとなったホラン千秋さん。しかし本誌での連載が始まった約8年前はがむしゃらな時代だった。
「20代の時はあれこれ考える暇もなく、結果を出すために、とにかく与えられた場で全力を尽くすことに必死でした」
今でこそ数々のレギュラー番組を持ち、その姿を見ない日はないが、かなりの苦労人であることは有名な話。もともとキッズモデルとしてデビューしたのち、中学生の時に現在の事務所に所属。役者を目指し、大学でアメリカ留学もするがなかなか芽が出ない10代を過ごした過去がある。留学中に日本について聞かれて“伝える”という楽しさをふと、思い出したのが23才の時だった。
「以前は役者として売れることにこだわっていましたが、大学卒業とともに芝居にひと区切りをつけ、もっといろんなことにチャレンジして、自分の可能性を探してみようと思ったんです」
そう思えたことがきっかけとなり、ラジオ番組やTVのMCなどが続々と決まり始め、現在皆が知るホラン千秋が生まれた。
目指す方向とは? という問いに、「今は“コレ”と決めつけず、求められ続ける人でありたい」と答える。
「私たちは“場”を与えてもらって初めて輝けます。10年近く必要とされない時期があったからこそ、チャンスをいただけるのは嬉しかったし、もっと期待に応えたくなる。人って求められると嬉しいんですよね。もともと目指していた場所ではなかったけれど、間口を広げて“やってみたい”の気持ちを素直に追いかけていたら、少しずつ道が拓けていったんです」
それは目の前に来た仕事を“こなす”ということではない。
「キャスティングされたということは、私が求められている理由があるはず。なぜ私だったのか徹底的に分析します。毎回違う共演者のなかで、どう立ち回れば面白くなるのかも常に考えます。自分の立ち位置を理解してやるべきことをやる。そうして自分のコメントが使われれば嬉しいし、それでテレビの前の皆さんの一日を一瞬でも照らすことができたら本望です」
本誌の連載を始めたことも、仕事への向き合い方を考えるきっかけになったという。
「当初原稿を書かせていただく機会があり、編集長にその不安を話したら『書く筋肉をつければいいだけだから』と言ってくれて。テレビも同じで、いきなり上手くコメントができるわけじゃない。トレーニングと一緒で、変化があるかどうかわからなくてもひたすら地道に続ける。うまくいけば自信がつくし、コメントが使われなければなぜだろうと考えてみる。その繰り返しだと思っています」
現在ではさまざまなジャンルで活躍しているが、その考えはどの場面でも当てはまる。
「怠けるとすぐわかるんですよね。仕事って楽しい! と思うためにも“筋トレ”は必要。自分のためにやり続けるんです」
苦しさと引き換えに価値あることを手に
どんなに活躍しようともホランさん自身から「忙しい」という言葉を聞いたことがない編集部。この約8年で感じるのは「夢中の人」であること。仕事ひとつひとつについて自己分析をし、結果を振り返る努力を忘れないように徹底していることを今回、初めて明かしてくれた。
「私は好きなことがそのまま仕事になっているので、人が趣味に没頭するように、この好きな仕事に没頭しているだけ。もっとできることを増やしたいし、頼られる存在になりたいです。そう思えるから諦めずにやってこられたと思います。その代わり、好きなこと以外はすご〜く力を抜いて生きています(笑)」
そう話しながらも「苦しくて、辞めようと思ったこともある」と語るホランさん。
「でも、それを忘れるくらい、凌ぐくらい、仕事には楽しさがある。振り返ると、苦しさと引き換えに、なんて価値のあるものに出会えてきたのかと。何のために頑張っているのかが明確であれば、必ず乗り越えられると思っています」
これまで悔しい思いも数えきれないほど経験してきた。
「まだ若い頃、あるアスリートと対談させていただいたんです。放送後、反省会で『対談が貴重な経験になりました』と発言したら、『あれはインタビューであって、対談ではない。君は対等な立場じゃないんだよ』とはっきり言われました。もちろん指摘はその通りなんですけど、悔しかったですね。いつか見返してやろうと(笑)。そのことは強烈に覚えています」
そんな負けず嫌いなところとともに、実は「ネガティブな性格なんです」とも話す。
「だからこそ、がんばれたのかも。ネガティブも悔しさも全部ガソリンにして燃やしてきました。歯を食いしばって走り抜いた日々が、今の私の支えになっています」
好きなタイプは私のことを大好きな人(笑)
「人生を楽しむには、仕事が楽しいということが必要条件」というホランさんだが、そのプライベートも気になるところ。現在、32歳。その人生観とは?
「ひとりでも幸せな瞬間はいっぱいありますけど、この人と一緒にいたら楽しい! なんていう人ができたらいいなとも思います。でも本当に神のみぞ知るって感じですが(笑)」
好きなタイプは「私のことを大好きな人がいい(笑)」と言いながら、実際に惹かれる人はちょっと違うらしい。
「魅了されるのは、やっぱり仕事ができる人。自分にはない才能に惚れてしまうんです」
ただ問題は、自分にないものや自分より優れた何かを持っている人を好きになってしまうがゆえに、自分を過小評価することになってしまう点。
「そういう才能ある人はきっと私抜きでも人生が成立してしまうんだろうなと思うと、自信を失っちゃうんです。本当は私のことを必要としてほしいんだけど……矛盾していますね(笑)」
仕事以外は悩める乙女。そんなホランさんもいつか家庭を築くなら、何でも話せるホラン家が理想だという。
「何でも話して、お互いを受け入れられたら。男も女も関係なく、親も子供も自分らしく生きられる時代。何があっても私は家族の味方よ、といえる安心感のある家庭にしたいです」
ニュースでは真摯に事実を伝えているかと思うと、バラエティでは芸人との丁々発止の掛け合いや、時には頑固な自身のキャラクターさえ自虐ネタに場を盛り上げる。そしてこうやってカメラを前にすれば、人を一瞬で釘づけにする魅力を纏う美しき女性が現れる。
「どんな場でも結果を出すために全力を尽くす」という彼女にとって、そのどれもがホラン千秋そのものだ。努力を他人に見せることをよしとせず、仕事に向かうその姿は清々しい。まだ見ぬ、ホラン千秋に会えることが今後も楽しみでならない。