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2021.01.24

チームラボ猪子寿之「アート×サウナで『東京、危ないとこだ』といわせたい」

サウナ、冷水、アート浴の3つの連続的な体験を創ることで、鑑賞者がととのい、アートと一体化し、世界や時間と再びつながる(リコネクトする)。猪子寿之氏率いるアート集団チームラボが3月から東京・六本木で開催する「チームラボ & TikTok,チームラボリコネクト」は、 “サウナとアートによる新しい体験”を提供する展覧会だ。インタビューの前編はこちら

猪子寿之

サウナは「脳をハックするもの」

――では、今回の「チームラボリコネクト」の概要について聞かせてください。

展覧会はメインの作品が3つ。水を冷却するチラーを入れたシャワーが並ぶ2つの冷水浴の空間も作品空間になっています。シャワーが並ぶという状況が、普通のアート展ではあり得ないものだよね。その冷水浴のエリアを挟みながらサウナエリアとアートを行き来して、「サウナ、冷水、アートで休む[アート浴]」を3回繰り返す展覧会です。

――着衣での男女混浴という形式でしょうか?

そうですね。サウナの中では、こちらで作った非常に乾きやすい素材のサウナ着を着てもらいます。冷水浴エリアやアート浴エリアはサウナ着を脱いで水着にもなれます。これは条例の問題で、サウナは水着でも男女一緒に入るのは認められないという判断があるから。世界から見ても非常に変な状況なので、条例は少しずつ変わっていったらいいなと思っています。

アートサウナ

話はちょっと変わるけど、去年の1月から4月に僕はマカオにいました。新型コロナウイルスのワケのわからない情報が1月の時点で次々と飛んできていた。ウイルスは現状の生物学上、生物の定義から外れており、生物ではないことになってしまう。その頃から「生物とは何か」「生命とは何か」と考える機会がより増えたよね。そして生物学的ではない、エネルギーの視点で生命とは何かを考えるようになったんだ。

そこで考えたことは大きく2つ。一つは、生命こそが「超自然現象」だということ。

生命とは、一見すると古典的な物理の法則から大幅に外れている。簡単に言うと、宇宙のすべては(形あるものが崩れていく)エントロピー増大の法則に従っているけど、生命だけがその法則に反しているように見えるから。

つまり生命こそが、自然の法則に反する「超自然現象」なんだ。もうちょっとわかりやすく言うと、生命こそが「超常現象」なの。

もう一つは、生命は「エネルギーの秩序」であるということ。哲学的な話とか宗教的な話ではなくて、物理学の話ね。

生命というのは、単なる「エネルギーの秩序が極めて高い状態」でしかない。それを人は生命現象と呼んでいる。

と、そこで、「場にエネルギーの秩序を作ったら、『生命』に似た現象が起こるのではないか」と思って作ったのが、マカオの雲の作品《質量のない雲、彫刻と生命の間》。もう本当に「生命」に見えるから。人が雲の中に入って割れても、割れ目が治る。自己治癒する。

チームラボ《質量のない雲、彫刻と生命の間》teamLab SuperNature Macao ベネチアン・マカオ

本当に生命のように見えるし、壊れてもまた復活するし、床でも天井でもない中空にいる。物理の法則に反している。

その「物理の法則に反する状態の超自然現象」をテーマにしたのが、六本木で今回展示するメインの作品の一つ《空中浮揚》。場にエネルギーの秩序を作ると、超自然常現象が起こり、ボールが浮き中空に止まったり上下したりする。

ここでは球体が浮いてるけど、仮に空気より重かったら床に落ちる。軽いと天井にぶつかる。中空で止まったり上下したりするっていうのはおかしい。つまり、重力に反する超常現象ね。

目の前に浮いた球体を、みんなで囲って見る。よく分からない現象の中に、自分自身が埋没する。「東京、ヤバいわ」ってなってほしい(笑)。

超自然現象が起こると、意識が「持っていかれる」んだよね。全員じゃないかもしれないけど、自分はけっこう持っていかれる。そうやって、より深いところに行くことで、自分が長い時間の一部であり、世界とつながっていることにほんのちょっとでも気付ける場にしたい。だから「チームラボリコネクト」なの。「世界と時間に再びつながる場をつくりたい」という思いの展覧会ね。

アートサウナ

《空中浮揚》「チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木」東京 六本木

――サウナでととのった上で、こんなアートを見たら、海外の人も「すごい体験した」とみんな言うと思いますよ。

そうでしょう。「東京は近代の原理や考えでは解明できない危ないところだから、東京をナメちゃいけない、気をつけろ」と言われたいね(笑)。

――日本人だけがサウナの入り方をフォーマット化できたのはなぜなんでしょうか。

それはタナカカツキさんが漫画を描いたから。それが事実としていちばん大きいんじゃないかな。可視化しないと、「サウナいいよ」と言われても、あの入り方はよく分からないから。

――可視化と言語化は違うんででしょうか? 「ととのった」という言葉ができるだけでは不足だったということですか?

言語化されたこともムーブメントが起こるためにはとても大きいけど、多くの人に広まることに関しては、プロセスが明確に可視化されたことが大きいね。言葉だけだとプロセスは共有しにくいというか、やっぱり頭に入ってこないから。

言葉はなんだってよかったのかもしれない。タナカカツキさんは最初「サウナトランス」という言葉を使っていたし、その言葉のほうが温冷交代浴で得られる状態を的確に表していると思う。初めてその感覚を味わった初心者の人は、特にその言葉がしっくりくるはず。

でも、長くサウナに入っている人は、「サウナから出たあと、体調が万全になる」「頭と身体と心がすっきりして元気になる」とも感じるようになる。調子が良い状態に戻る、その現象を表す言葉が「ととのった」だったんだろうね。

でもなぜ、サウナ愛好家たちは、ムーブメント以前から、非言語にサウナと水風呂を必ずセットにして入っていたか? 日本のサウナファンはフィンランドを聖地化するけど、フィンランドのサウナに必ず水風呂が(もちろん湖も)あるわけではない。なぜ、多くの日本のサウナには、以前から必ず冷たい水風呂があったかということが実は重要なんです。サウナ施設に水風呂がなければ、サウナ愛好家も水風呂とセットで入れないもんね。

日本に現在のサウナが入ってきたのは1964年の東京オリンピックの頃なんだけれども、それより前から日本の銭湯には熱すぎる湯と冷たい水風呂があったんだよね。つまり、サウナが入って来る前から温冷交代浴の文化があって、それはもしかしたら、1300年前の行基の時代に、寺で蒸し風呂入って、水を浴びていた時からずっと続いてきたことなんじゃないかと考えている。そのことが、1300年、非言語に続いてきた連続性の上に「ととのう」ムーブメントがあるんだと思うんです。

その超温冷交代浴で得られる状態って、すごく特殊なもの。普通に脳と身体をハッキングした状態だから。

「熱すぎて死にかけて、冷たすぎて死にかけて、すぐに休んで、安心して生きていることを実感する」っていう状態が、日常にあったらおかしいでしょ? 日常がそんな環境なら、人類はもっと違う進化をしていたはずだよね。

――だから蒸し風呂は世界各地で宗教的な儀式にも利用されてきたんですね。

そうそう、行基が利用したようにね。蒸し風呂(サウナ)は「脳をハックすること」だから。やっぱり超自然現象なの。

歴史を紐解くと、仏教が伝来する前の日本には磐座(いわくら)の信仰があったよね(古神道における岩に対する信仰のこと)。重力に逆らうように積み上がった岩とかへの信仰は、「超自然現象的に見えるもの」への信仰。御船山の近くにある樹齢3000年以上といわれる御神木(ごしんぼく)なんかも同じ。幹の真ん中がくり抜かれてるのに生きてたりして、「これどうなってるの?」と思っちゃう。

そういう不自然な状態、超自然状態をやっぱり信仰の対象にしているのは、「見ていると意識が持っていかれたから」だと思う。

――歴史を紐解いて様々なものとの関連性に気づくと、サウナという存在の面白さがより際立ちますね。猪子さんはアートを創る際、このように歴史を紐解くことが多いのでしょうか。

必ずしもそうじゃないけど、歴史は好きだね。なんでかというと、人間の考え方って、社会情勢で大きく変わるじゃない。でも歴史という長いスパンで見ると、もうちょっと本質的なもの、普遍的なものが見えてくるし、今の現象を引いた立場からものごとを見ることができる。「これって歴史で何度も起きてるし、それで人間が変わることはない」とか、「これは土着の風土病みたいなもので、本質的じゃないものだな」とわかることも多い。

歴史もサイエンスも好き。究極的には「人間にとって世界とは何か」を知りたい。それが単純に面白いと思っている。世論が騒ごうがニュースとかあまり見ないね。嫌いだし、うっとうしい。日々のしょうもない出来事とかって「人間と関係ねえだろう」と思っちゃうんだよ。

 

インタビューの前編はこちら

Toshiyuki Inoko
1977年徳島県生まれ。2001年、東京大学卒業と同時に、チームラボ設立。アニメーターや技術者、建築家、数学者などで構成するアート集団として、アートとサイエンスの境界を横断する作品を制作。「チームラボボーダレス」(東京・お台場)、「チームラボプラネッツ」(東京・豊洲)などを展開する。

チームラボ & TikTok,チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木
会場:TikTok チームラボリコネクト(東京都港区六本木5丁目10-25)
会期:2021年3月 – 8月
主催:チームラボリコネクト実行委員会
協賛:TikTok
詳細はこちら

TEXT=古澤誠一郎

PHOTOGRAPH=チームラボ

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