会員数7万人を誇るオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」で発信される、人生とビジネスの極意を知る名言を西野氏自ら解説。“時代をつくる”才能の育て方を語る西野さんのインタビューはこちら!
「とにかく全員を勝たせます。」
競合相手に対して優勢になっても、とどめを刺してはいけない。恨みになって必ずどこかでやり返されますから。敗者はつくらず、全員を勝たすっていうのが最大の防御です。戦国時代に例えたら、A国とB国とC国、全部の国を僕が勝たす。そうしたら誰も僕の国を潰そうとはしません。それに100ずつ兵がいるA国とB国が戦って、20残ったA国が勝ったとしても、次はC国が攻めてきますから。残り20じゃやられますよね。つまり、兵を減らしたらダメ、戦ったら負け。戦わずして、どう面白い世界にするかを考える。「あんなに西野叩いてたのに、急に手のひらを返した奴ら、ムカつかないの?」って相方の梶原君に言われるんですけど、そこで僕がマウントをとったら、いつか自分が弱った時にやられる。勝負あったなと思ったら、僕はもうなんも言わないです。
「意味変」
『映画 えんとつ町のプペル』の前売り券が10万枚以上売れたのは、「チケット」の意味と役割を「ギフト」に変えたから。実はこういうことはいろんなところで起きていて、例えば、ミリオンセラーがたくさん出ていた1990年代後半のCD。あの頃は、CDに「インテリア」の意味があったから売れたんです。学生の頃、友達の家でCDラックにCDがたくさんささっている光景を見て、かっこいい、真似したいと思った。だけど今、それって別にお洒落でもない。だから、需要が減った。そうやって考えれば、ビックリマンチョコの意味はシールだったし、AKBのCDの意味は握手券だった。意味を変換して価値を生むというのはあらゆるヒット商品に起きているんです。
「世界の誰よりも地味な作業をやりますよ、僕は。」
間違いなく、僕が、世界中のどの作家よりも一番サインを入れているんです。サインして梱包して、レターパックで送るっていう作業をひたすら続けています。そういう地味な作業が、説得力になる。以前、タモリさんのお宅で飲もうということになり、一緒にスーパーに行ったんです。で、タモリさんが、ブロッコリーを手にとって「高いな」と言って棚に戻した。その時に鳥肌がたちました。芸能界の頂点を極めた方なのに、金銭感覚がまったく麻痺していない。そりゃ、人にささる芸ができるなと。だから真似しようと決めた。毎日サインしていると、1000冊売れましたと言われて、それがどのくらいの数なのかすぐ実感できるんですよ。そういう感覚を麻痺させちゃ駄目なんだろうなと。地味ではありますが、地味な作業は効果的です。
「人が言う“偽善”の類いを正面から全力でやります。」
そんなたいしたことじゃないですけど、やれることは全部やります。政治はもう機能していないじゃないですか。熊本の水害の時も、コロナの今も。具体的に動けてなかったりとか、誰かが動いても、それを叩きに行く人たちがいたりとか。ああいうのを見ていると、「誰かがやってくれる」って任せられないので。だから何を言われてもいいから、自分でやる。今さら何言われたって、傷つくとかないんで。
「『折り合いをつけてしまった人』には、『信じ抜けば、夢はかなう』は言えません。」
ちょっと主語がややこしいんですが(笑)、「折り合いをつけてしまった人」は、「信じ抜けば、夢はかなう」と人に言うことはできない、ということですね。ほとんどの大人は、どっかのタイミングで自分の夢に「折り合いをつけてしまった人」ですが、子供には「夢はかなう」って言ってあげたいじゃないですか。だから絵本が、『えんとつ町のプペル』が、それを代弁している。この絵本を読ませることで、「いつまでも夢を見てね」っていう大人の気持ちを伝えてるってことです。この絵本が、ギフトとして重宝される理由はそこにある。絵本って、子供が育つ過程で必ず通るものですよね。絶対通るなら、そこに店を構えておくことがエンタメをつくるうえで重要。それに絵本はコミュニケーションツールとして価値があるので、ウェブとかスマホとか、他に置き換えることが難しい。そこまでわかってて絵本を書き始めたわけではないんですが、やってみたら結構いいものでした。
「自分が死んだあとも続くエンタテインメントをつくろうと思ったら、自分が生きている間の働き方(考え)が大きく変わってくる。」
300年続くエンタテインメントと、自分の寿命で終わるものって全然設計が違うんです。自分の寿命で終わるエンタメであれば、作品だけをつくっていればいい。でも興味があるのは300年続くエンタメで、基本的に僕が死ぬ前提でつくり始めています。後世の人が『えんとつ町のプペル』の新作をつくり続けられる仕組みを構築しておこうと思うと、“今”の生き方も変わってくる。今、僕たちは、オンラインサロンの売り上げで新作をつくっていますが、僕が死んだらこの収入はなくなるでしょう。300年つくり続けることを考えたら、もっと安定的な予算の供給がいる。なので、今、生活インフラを押さえることを始めています。まずはトイレットペーパーを売ってるんですけど。人がうんこし続けるかぎり、トイレットペーパーは売れ、新作の製作費が生まれ続ける。そういうことを考えるんです。自分の人生で終わらせようと思っている人と、300年先を考えている人では、一日の時間割が全然変わってくる。面白いですよ。
「もう止めたってムダなことぐらいとっくにわかってる。そんなに行きたいなら、行っといで。ただひとつ、これは母ちゃん命令だ。絶対に帰ってくるんだよ!」
『映画 えんとつ町のプペル』の主人公・ルビッチの母ちゃんのセリフなんですが、父ちゃんのブルーノは、ルビッチと同じように「止まらない」人だった。それを母ちゃんは見てきているから、そんな父ちゃんの息子だから止めたって聞かないことはわかるんです。でも、父ちゃんは帰ってこなかった。だからルビッチには「行ってこい」じゃなくて、「帰ってこい」と言ったんです。もしかしたら、それは僕の母ちゃんもそうだったのかもしれないです。芸能界という、いわゆる水商売の世界に、18年間育てた子を送りだすのって相当の覚悟だったなと。それで帰ってこなかったら辛すぎるなと思って。だからこのセリフは、あの時、母ちゃんが言えなかったことなんじゃないかと思いながら書きました。帰ってくるって約束さえしてくれたら、「行ってこい」って言いやすいじゃないですか。
『映画 えんとつ町のプペル』
大人も泣かせるファンタジーは300年続く物語のファーストステージ
ハロウィンの夜に生まれた「ゴミ人間」のプペルと少年ルビッチの友情と冒険の物語。絵本執筆の時点からすでに映画の構想があったという本作がついに映画化。えんとつ町の秘密など、絵本には描かれていないエピソードが数多く含まれる。「絵本はあくまで一部。この映画は僕の頭のなかのえんとつ町をほとんどそのまま覗くことができる作品です」(西野氏)。アニメーションは日本を代表するスタジオのひとつ、STUDIO4℃が手がける。
< STAFF >
製作総指揮・原作・脚本 西野亮廣/監督 廣田裕介/アニメーション制作 STUDIO4℃
< CAST >
窪田正孝、芦田愛菜、立川志の輔、小池栄子 他
< 配給 >
東宝、吉本興業
西野亮廣/Akihiro Nishino
1980年兵庫県生まれ。’99年梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。2009年に初の絵本『Dr.インクの星空キネマ』上梓。以降7冊の絵本を出版するほか、『革命のファンファーレ』などビジネス書も多数手がけ、すべてベストセラーに。’16年に出版した絵本『えんとつ町のプペル』の映画化作品が12月25日より全国公開中。脚本、製作総指揮を務めた。持ち主の書きこみのある本を販売する「しるし書店」などを運営する「株式会社NISHINO」も経営。
オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」はこちら!