師匠か、恩師か、目をかける若手か、はたまた一生のライバルか。第17回は、「上場」で出会ったおふたり。
藤野英人が語る、堀 紘一
初めてお会いした時、とにかく感動したんです。ある話題を話していた時に、堀さんが「それは僕にはわからない」とはっきり言われたからです。どんな実績をお持ちの方なのか、もちろんよく知っていました。そんな人が「わからない」と自ら言われる。そうできる人は、意外に少ないんです。この人は信頼できる人だ、と思いました。大事なお金を投資するのに、この人は大丈夫だ、と思ったんですね。
上場後に、食事のお誘いをもらって。私に興味を持ってくださって、とても光栄でした。本当にいろんな話をしましたね。ありがたいことに、以後、お付き合いをさせていただくことになりました。
ずっと驚かされてきたのは、堀さんの率直さです。「あれはオレが間違っていた」とおっしゃることも多い。70歳を過ぎた社会的地位のある方が、自分の過ちを素直に認められる。本当に素晴らしいと思います。70代になったら、こんな人になりたい、と思っています。
(これより、WEB限定テキストです)
過去の自慢話のようなことも、口にされないですね。あれは自分が手がけた、なんて話もしない。それよりも今、何にワクワクしているのか、これから何をしていきたいのか、楽しそうに語られる。世の中で起きている変化に、いつも注目されて強い関心を持たれています。変化を面白く観察されているんです。ストレートな解釈と物言いは、聞いていて本当に面白いです。
会社経営についても、いろいろな相談に乗ってもらってきました。心から尊敬し、信頼できる人生の先輩です。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
堀 紘一が語る、藤野英人
ドリームインキュベータが2002年に上場する時、上場時の株価を決めるのに20数社の証券会社に行ったんです。そこで100人以上の証券マンに会ったけれど、印象に残る人はそんなにいなくて。プライベートで食事に行きたいな、と思った人は4人だけで、そのひとりが藤野さんでした。それはもう、質問のレベル、食いつき方がまるで違う。これは他の人とは違うぞ、とひと目惚れしたんですよ。それで実際に上場した後、藤野さんを食事にお誘いして。以来15年、年に2、3回は食事をしたりしています。
5年くらい前に、モンゴルに行きませんかと誘われて。僕の友人で、よく一緒にあちこちに行く作曲家の三枝成彰(しげあき)さんも誘い藤野さんの会社の人と4人で旅行しました。モンゴルは一生行くことはないと思っていた国のひとつ。本当に貴重な経験をさせてもらいましたね。資源国としてのポテンシャルは極めて高い。大型ダンプくらいの荷物が簡単に空輸できるような世の中になったら、とんでもない国になりますよ。
(これより、WEB限定テキストです)
藤野さんのなにがすごいかって、彼はこれまで5000人以上の経営者に会っているんです。僕もたくさんの経営者に会ってきたけど、上場会社の社長など限られた人たち。藤野さんは、ゼロから裸一貫で立ち上げたベンチャーなど、多種多様な社長を知っている。これは尊敬しますよ。だから意見も拝聴したいし、学びになるんです。
実際、3年に1回くらい、「最近のいい会社は?」なんて質問するんですが、聞いたことがない会社が出てくる。それが後にスルスルと成長していくんです。「変化率」と「時」を見分けるんですね。びっくりさせられる人です。
レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長 藤野英人(左)
1966年生まれ。早稲田大学卒業。野村投資顧問、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなどを経て2003年に独立。運用総額は5000億円を超える。
ドリームインキュベータ 代表取締役会長 堀 紘一(右)
1945年生まれ。東京大学卒業。読売新聞社、三菱商事を経てボストンコンサルティンググループ代表、最高顧問を歴任。2000年ドリームインキュベータ設立。