青柳 翔がアクションと トレーニングで極める役者道

役者ほど、肉体改造を求められる仕事はない。俳優・青柳 翔はそのカラダを常に役にゆだね作り替える。観る者にどうリアリティーを感じさせるか、葛藤し鍛練するなかで極められる道とは。

Sho Aoyagi
1985年北海道生まれ。2009年舞台で俳優デビュー。同年、劇団EXILEのメンバーに。以後映画『渾身 KON-SHIN』『東京難民』『極道大戦争』などさまざまな作品に出演。16年には「Maria」で歌手デビューを果たす。映画最新主演作に『たたら侍』がある。パーカー¥264,000(ラルフ ローレン パープル レーベル/ラルフ ローレン フリーダイヤル:0120-3274-20)

感情の揺れをカラダ全体で表現する

 劇団EXILEの俳優・青柳 翔氏には、無骨な男の役がよく似合う。例えば初主演連続ドラマ『ろくでなしBLUES』。主人公のチャーミングな笑顔と男気溢(あふ)れる不良っぷりで観るものをくぎづけにした。2013年に主演した映画『渾身KON-SHIN』では、島根・隠岐(おき)の島の古典相撲に打ち込む若者を体当たりで演じた。また最近ではLDHのスターが大挙出演したエンタテインメント『HiGH&LOW』シリーズで九十九(つくも)というキャラクターを熱演。狂気スレスレの存在感と激しいアクションで、映画ファンに鮮烈な印象を残している。

 無垢な佇まいと、強靱なフィジカル。その絶妙なバランスは、演技者として天与の資質と言っていい。だが、そんな硬質な魅力をたたえた役者が、最新主演作の本格時代劇『たたら侍』については、なぜか意外な言葉をもらした。

 「スクリーンに映る自分の姿は、なるべく細く見せたかったんです。ただ単に痩せているのではなく、むしろ男として成長しきれていない、人間的な線の細さというのかな。戦国末期の物語ですが、現代のお客さんも自然に感情移入ができるような弱さとか感情の揺れがカラダ全体から滲めばいいなと」

 物語の舞台は、出雲の山奥。青柳氏が演じる主人公の伍介(ごすけ)は、古くから伝わる門外不出の製鉄技術「たたら吹き」の村に生まれた青年だ。村下(むらげ) と呼ばれる最高技術者の家に生を受け、一相子伝(いっしそうでん)の技を受け継ぐ運命にありながら、外敵に翻弄される村のあり方に疑問を抱いて出奔(しゅっぽん)。強くなって村を守ろうと、魂の彷徨(ほうこう)を重ねる。

 「愛する人や家族を守りたいという気持ちは、今も昔も変わらない。普遍的な感情だと思うんです。映画のなかの伍介も侍になろうとして戦に参加したり、商人と組んで火筒(ひづつ[銃器]作りに手を染めたりと、試行錯誤を重ねます。でも彼は内心、力に対して力で抗(こう)することが本当の強さなんだろうかという疑問も抱えている。敵を赦(ゆる)し憎しみを断ち切る勇気こそが未来を創るんじゃないか、と。錦織良成(にしこおり よしなり)監督が伍介を通して描こうとされたテーマは、今の時代にも置き換えられるほどリアルですし、僕自身、撮影中はずっと迷いながら演じていました」 

エグゼクティブ・プロデューサーを務めたのは

ブルゾン¥84,000(ラルフ ローレン パープル レーベル/ラルフ ローレン フリーダイヤル:0120-3274-20)

 エグゼクティブ・プロデューサーを務めたのは、EXILE HIRO氏。「日本の素晴らしい文化と伝統を世界に知ってもらう」という志のもと、現代の最先端技術をもってしても再現できない高度な「たたら吹き」のシーンまで忠実に再現された。また劇中では、同じEXILE TRIBEのAKIRA氏と小林直己氏が、日本刀を用いた凄烈(せいれつ)な殺陣(たて)を披露。時代劇アクションとしての見どころも多い。主人公の伍介はむしろ、その傍観者として苦悩する役どころ。だが、滝壺に立って無心で木刀を振るシーンでは、侍を目指す凜とした雰囲気――まっすぐに伸びた背筋がやはり美しく際立つ。

 「僕自身はサッカー少年だったんですが、実は祖父が剣道の師範をしていまして。撮影に入る前、北海道の実家から木刀を送ってもらいました(笑)。現場では早朝、オープンセットの中で殺陣師の方と一緒に素振りをさせてもらったり。トレーニングを兼ねた役作りではないけれど、コンスタントにカラダを動かすことで、少しでも昔の人の気持ちに近づきたかったんです」

追い詰めるのではない積み重ねるトレーニング

 今年後半には、昨年大ヒットした『HiGH&LOW THE MOVIE』の続編公開も控えている。こちらは肉体を極限まで酷使したハード系アクション。

 「まだ詳しいことはお話しできないんですが、凄まじいシーンが、これでもか! というくらい出てくると思います」と静かに微笑む。

無心で街を走ることでニュートラルな状態になれる

シャツ 参考商品(ラルフ ローレン パープル レーベル/ラルフ ローレン フリーダイヤル:0120-3274-20)

 「洗練されたカメラワークから美術セットや衣装などの作り込みまで、どこをとっても従来の日本映画にはなかった世界観だと思います。アクションに関しても日本最高峰のチームが全面参加していて、迫力満点で斬新な動きを一緒に考えてくださる。パンチの打ち方ひとつとっても、見せ方でまるで違ってくるんですよね。役者として本当に多くのことを学んでいます」 

 長期撮影では、地方のホテル住まいが続くことも多い。不規則な生活リズムのなかでキレた肉体を維持するには、自己流のメンテナンスも必要になる。

 「あんまり厳密に考えすぎると、かえってストレスになってしまう。例えば眠る前に腕立て・腹筋を数セットやって、あとは宿舎の周りを軽くランニングするとか、空き時間にできることをマメにこなすようにしています。強く意識しているのは、食事の摂り方ですかね。体重を一定に保てるように、お弁当は炭水化物を控えて、おかず中心に食べる。夜は飲みに行く機会も多いので、普段はなるべく腹六分目ぐらいまでにする。そのぶん、朝食はお米の飯を思いっきり食べます。ホテルの朝食って、男子的には最高に気分あがりますよね? 僕なんてベッドに入ったら、たいてい翌朝はどのメニューにするか考えていますからね(笑)」

リアルでありたいから過剰なカラダでいたくない

 ジムにも通うこともあるが「ストイックにカラダをいじめ抜くやり方は、あまり性格に合わないみたいです」と振り返る。むしろ自分なりのメニューで、無理なく自分と向き合うのが青柳流のトレーニングのようだ。ウェイト・トレーニングも嫌いではないが、一番気持ちが解放されるのは「シンプルに、走ること」だという。

 「よく晴れた日、お気に入りの楽曲をずっとリピートで聴きながらランニングしてると、頭を空っぽにできる。そうやって自分自身をニュートラルな状態にすると、不思議と芝居のことが頭に浮かんでくるんです。2本の足を無心に動かしながら気がつくと台本のセリフを繰り返し口ずさんでいることも多い。僕にとってはそれがカラダを維持するベストのトレーニング法であり、一番のストレス解消でもあるみたいです」

 どのような役柄もよりリアルに演じられるよう、「過剰にマッチョな体形にはなりたくない」と語る、青柳氏。だがその芯の部分には確かな身体意識と役者魂とが、強く、静かに息づいている。

『たたら侍』
監督:錦織良成
出演:青柳 翔、小林直己 ほか
配給:LDH PICTURES
5月20日より全国公開
(C)2017「たたら侍」製作委員会

Text=大谷隆之 Photograph=片桐史郎(TROLLEY) Styling=松川 総(TRON) Hair & Make-up=石上三四郎(SUN) Cooperation=BATHCLIN

*本記事の内容は17年4月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)