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2025.03.13

「椅子の美術館」で“推し”を見つける! 古今東西の名作椅子21選

家具好きならば、名作の数々を所蔵する「椅子の美術館」へ足を運んでみたい。「いつか自分もプライベート空間にこんな椅子を!」との気持ちがきっと高まるはず。【特集 アートな家具】

埼玉県立近代美術館の外観
黒川紀章の設計によって1982年に竣工した埼玉県立近代美術館外観(撮影:松本和幸)。

約70点の名作椅子コレクションが揃う美術館

世界のデザイン史に残る椅子のコレクションが約70点揃い、常に十数点を公開。その多くの椅子に実際に座ることができてしまうのが、埼玉県立近代美術館だ。

名作椅子のコレクションは1982年の開館以来、続けられてきた。絵画や彫刻といった展示品に触れることはまずできないが、椅子なら来場者に座ってもらい作品を「体験」してもらえて、美術館がぐっと身近なものになるのでは……。そんな狙いをこめて、椅子の収集というユニークな方針が立てられた。長年築かれてきたコレクションの数々。近代以降の椅子デザインの歴史を振り返る充実のラインナップだ。

埼玉県立近代美術館の内観
HPでは随時「今日見られる椅子」や「今日座れる椅子」が更新されている。

名作椅子はどれも人間味に溢れている

抽象絵画を立体化したかのようなヘリット・トーマス・リートフェルトの「レッド・アンド・ブルー」。機能とデザイン美を究極まで突き詰めたアルネ・ヤコブセンの「アント」。アール・ヌーヴォーを代表するチャールズ・レニー・マッキントッシュの「アーガイル」などが揃う。

日本産の名作も数多い。木材の強みを知り尽くしているからこそつくることができた柳宗理の「バタフライ・スツール」。シューズ・ショップの空間に合わせて設計されたスタイリッシュな内田繁「キサの椅子」なども。

これら名作椅子を見ていると、具体的に役立つもののなかにこそ美は宿るのだと、改めて思い知らされる。また、椅子とはなんと人間味に溢れた存在であることか、とも強く感じる。人の身体にピタリと寄り添うものゆえ常に官能性が漂うし、社会的地位や人間性を何より象徴的に表すようにも思えるのだ。どんな椅子を好むかを聞けば、その人物のありようを察することができそうである。

名作家具に関心を持つなら、一度、埼玉県立近代美術館に足を運んでみて、いつかは手に入れたい“推し”の椅子を見つけてみてほしい。美術館級の椅子を入手し、美の歴史を自身のプライベート空間に迎え入れる意欲が掻き立てられること請け合いだ。

企画展「メキシコへのまなざし」
2025年5月11日(日)まで開催中の企画展「メキシコへのまなざし」では、展示に合わせてセレクトした椅子に座って鑑賞することができる。

埼玉県立近代美術館の名作椅子コレクション21選

チャールズ・レニー・マッキントッシュ「アーガイル」
1.チャールズ・レニー・マッキントッシュ「アーガイル」1897年/製品化:1973年
オリヴィエ・ムルグ「ブルム」1968年頃
2.オリヴィエ・ムルグ「ブルム」1968年頃
柳宗理「バタフライ・スツール」
3.柳宗理「バタフライ・スツール」1953-1954年/製品化:1956年
ヴェルナー・パントン「パントンチェア」
4.ヴェルナー・パントン「パントンチェア」1959-1960年/製品化:1968年
ピエール・ポーラン「タン」
5.ピエール・ポーラン「タン」1966年/製品化:1967年
田辺麗子「ムライスツール」
6.田辺麗子「ムライスツール」1961年
ヘリット・トーマス・リートフェルト「レッド・アンド・ブルー」
7.ヘリット・トーマス・リートフェルト「レッド・アンド・ブルー」1918年
ヘリット・トーマス・リートフェルト「ジグザグ」
8.ヘリット・トーマス・リートフェルト「ジグザグ」1932-1933年/製品化:1935年
ジャン=ミッシェル・ヴィルモット「リクソン・チェア」
9.ジャン=ミッシェル・ヴィルモット「リクソン・チェア」1983年
アキッレ・カスティリオーニ&ピエル・ジャコモ・カスティリオーニ「アルナッジオ」
10.アキッレ・カスティリオーニ&ピエル・ジャコモ・カスティリオーニ「アルナッジオ」1966年/製品化:1980年
笠松栄「ツル-B」
11.笠松栄「ツル-B」1982年/製品化:1983年
ジャン=ミッシェル・ヴィルモット「エリゼ・アームチェア」
12.ジャン=ミッシェル・ヴィルモット「エリゼ・アームチェア」1983年
テルイェ・エクストレム「エクストレム」
13.テルイェ・エクストレム「エクストレム」1972-1977年/製品化:1984年
ジョナタン・デ・パス&ドナート・ドゥルビーノ&パオロ・ロマッツィ「パルミラ」
14.ジョナタン・デ・パス&ドナート・ドゥルビーノ&パオロ・ロマッツィ「パルミラ」1984年
アルネ・ヤコブセン「アント」
15.アルネ・ヤコブセン「アント」1952年
梅田正徳「Ran」
16.梅田正徳「Ran」1991年
トールスタイン・ニールセン「トーテム」
17.トールスタイン・ニールセン「トーテム」1983年
ニルス=イェアン・ホゥエスン「エックス・ライン」
18.ニルス=イェアン・ホゥエスン「エックス・ライン」1977年
ワーレン・プラットナー「プラットナー・ラウンジ・コレクション」
19.ワーレン・プラットナー「プラットナー・ラウンジ・コレクション」1966年
内田繁「キサの椅子」1981年
20.内田繁「キサの椅子」1981年
ガエターノ・ペシェ「ドンナ」
21.ガエターノ・ペシェ「ドンナ」1969年/製品化:1970年

埼玉県立近代美術館
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
TEL:048-824-0111

名作椅子を多数収蔵する「椅子の美術館」としての顔のほか、埼玉ゆかりの作家による近代美術や、クロード・モネ「ジヴェルニーの積みわら、夕日」などをはじめ国内外の優れた美術作品も手厚くコレクション・公開している。

【特集 アートな家具】

この記事はGOETHE 2025年4月号「総力特集:惚れ惚れする人生の相棒、アートな家具」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら

TEXT=山内宏泰

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