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2024.11.05

「東京レガシーハーフ」完走。水泳メダリスト・入江陵介はなぜ、マラソンに挑戦するのか?

2024年10月20日、「東京レガシーハーフマラソン2024」が開催された。そのレガシーアンバサダーに選ばれ、人生初となるハーフマラソンに挑戦したのが、元競泳日本代表の入江陵介氏だ。見事完走を果たした入江氏に、ハーフマラソンに挑戦した理由と現在の心境について話を聞いた。

入江陵介

「東京オリンピック2020」で高まったスポーツ機運を維持すべく、2022年から開催されている「東京レガシーハーフマラソン」。第三回となる2024年度は、国内外のトップアスリートや車いすやブラインドのパラランナー、市民ランナーらと約1万5千人が参加。入江氏はそのひとりとして、国立競技場をスタート。外苑西通りから靖国通り、外堀通り…と都心を駆け抜け、観客に手を振りながら、国立競技場トラック内のゴールをきった。

声援に後押しされ、初ハーフマラソンで1時間54分を記録

――21.0975km完走、おめでとうございます。記録は1時間54分05秒でしたが、今の心境はいかがですか?

練習では、5分半/kmくらいのペースだったので、それより早いタイムでしたね。スタート地点では、ものすごくたくさんの人がいて、なかなかペースが摑めなかったんですが、それでも、終始一定のペースで走れたので良かったかなと思います。

経験者の方々からは、「落ち着いて入った方がいいよ」とアドバイスいただいていたんですが、自分では落ち着いていたつもりが、最初からペースを上げていたみたいで(笑)。だけど、あまりきつくはなかったですね。10km地点でも、けっこう余裕だった気がします。

――国立競技場内の観客はもちろん、沿道にも多くの方々が応援にいらしていましたね。練習以上の力を発揮できたのは、そうした声援に後押しされたのでしょうか?

それはあると思います。競泳でも、たくさん応援していただきましたが、泳いでいるとちょっと聞こえづらいですし、声援を受ける時間は長くてもせいぜい2分弱。今日みたいに2時間ずっと声援を受けるというのは、まったくなかったので。

とくに印象的だったのは、先に折り返し地点を通過したトップランナーの皆さんが、すれ違いざま、他のランナーや車いすランナーの方々に向けて「頑張れ!」と声をかけていらっしゃったこと。僕自身も、いっしょに走っているランナーの方々と「初めてですか?」なんてコミュニケーションをとらせていただきましたが、走っている間中、ずっと素敵な光景を見させていただいたなと思います。

入江陵介
入江陵介/Ryosuke Irie
1990年大阪府生まれ。0歳から水泳を始め、高校1年の時、初めての高校総体200m背泳ぎで優勝。2008年、北京大会でオリンピックに初めて出場し、2012年のロンドン大会では銀メダル2個と銅メダル1個を獲得。その後、リオ大会、東京大会と4回連続でオリンピック出場を果たし、2024年4月現役を引退。現在は解説者や水泳の普及活動、ジュニアの育成などに力を注いでいる。

――今回のコースは、国立競技場を出発し、新宿御苑、四谷、市ヶ谷、神田神保町を通って、日本橋で折り返し、再び国立競技場を目指すという、東京の真ん中を通るルートでしたが、いかがでしたか?

すごく新鮮でした。道路の真ん中を走るなんて、人生で初めての経験でしたから(笑)。道路が閉鎖され、車はまったく走っていないけれど、信号の「→」は点灯していて。なんだか、信号機まで応援してくれているように感じて、楽しかったですね。本当に貴重な機会をいただけたと、感謝しています。

レース前ならではの緊張感、ワクワク感を久しぶりに味わえた

――2024年4月の引退会見で、「マラソンに挑戦してみたい」とおっしゃったのがきっかけで、今回、レガシーアンバサダーに選ばれたと伺いました。もともと走ることは好きだったのでしょうか?

いえ、これまで走ったことはほとんどなくて。アンバサダーのお声がけをいただいた時は、大会メインビジュアルのコピー同様、「ハーフなら、ギリいけるかも。」という気持ちでした(笑)。

ケガのリスクを考え、水泳以外のスポーツはずっと避けてきましが、引退したら、マラソンや富士山登頂、スキーといった冬のスポーツなど、今までできなかったことに挑戦したいと思っていました。なので、アンバサダーに選んでいただけて嬉しかったですし、今後いろんなことにチャレンジする良いきっかけになる気がして、すぐにお引き受けしたんです。

何より新たな目標ができたのが大きかったですね。これまでずっと、競泳に関する夢や目標は持っていましたが、現役を引退したことで、それはなくなりました。でも、何か追いかけるものがあったほうが、毎日が充実する気がします。

競泳とはまったく違う種目ですが、昨日は久しぶりに、レース前の緊張感と不安が入り混じった気持ちになれました。こういうワクワク感とかドキドキ感って、日常ではなかなか味わえないというか……。スポーツ独特のものなのかなと、改めて感じました。

――走るトレーニングは、大会参加が決まってから始めたのですね。

そうなんです。オファーをいただいてから今日まで5ヵ月くらいはあったんですが、暑い時期だったこともあり、10km以上走ったことがなくて。トレーニングは、ジムで5kmくらい走るのが中心でした。

練習会に2回ほど参加させていただき、最初に神野(大地)さんからアップのしかたなど基本を教わりましたが、その後のトレーニングはほぼ自己流。パリ五輪の仕事もあって、トレーニング時間も、なかなか確保できませんでした。だから、我ながら練習不足だなと思いながら、今日、ここにやって来たんです。

競泳は、無重力の水の中でやるスポーツ。なので、陸上を走ることで、膝や足首がそれまで感じたことがないような衝撃を受け、痛めやすいと言われていたのですが、その通りでした。実は、僕も少し前から膝を痛めていて。今日なんとか無事に完走できて、ホッとしています(笑)。

入江陵介

――人生初のハーフマラソンを完走された今、入江さんにとって「走る」こととは?

走ることは、特別な道具もいらないし、特定の場所に行かなくてもできます。いつでも、どこでも、自分のペースでできる、誰もが気軽に始められるスポーツだと思います。

何より、走って汗を流すのはすごく気持ちがいい。僕は、朝走ることが多かったんですが、早起きして汗を流すと、清々しい気持ちで1日のスタートをきれます。それも、日常生活の良いアクセントになりました。

ありがたいことに、この大会の出場が決まってから、別競技のアスリートを含め、いろんな方にランのお誘いをいただくようになりました。そこで、新しい出会いがあるのも、楽しいですね。フルマラソンはまだちょっと無理ですが、これからも、ファンランをはじめ、走ることは続けていきたいと思います。

――次の目標は、スイムもあるトライアスロンあたりでしょうか?

いえいえ、それはまだまだ先です(笑)。

TEXT=村上早苗

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