英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第246回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
皮肉スイッチがオンになる“/s”
先日、日本語ペラペラのイギリス人女子とオンラインで話していたら、なんと元カレの結婚式に呼ばれたということ。
「いや、普通元カノを呼ばないでしょ」とか「断るのも未練があるみたいだから、出るしかない」など、彼女は上手な日本語でずいぶん愚痴っていました。
結婚式の日付まで聞かされていた私は、ある日「そういえば今週末にあの結婚式が迫ってきたな」と思い出し、こうメッセージを送りました。
Are you excited about the wedding party?
「結婚式、楽しみ?」という我ながら嫌味なメッセージです。普段日本語でやりとりしているのに、こういう時だけ英語で送ったのも、ちょっとふざけすぎたかもしれません。
すぐにこう彼女から返信がきました。
Yes! I’m really excited about the party! /s
私が送った文章の構造ほぼそのまま「うん、パーティ楽しみ」と返ってきました。しかしよくみると、文末になにかついています。
/s
一見、URLの切れ端やプログラミングのコードの一部のようにも見えます。なにかを打とうとして、タイプミスをしたのでしょうか。
それに、あんなに愚痴っていた彼女がシンプルに「パーティ楽しみ」と返してくるのはなんだかおかしい気がします。
「/sってなに?」と思い切って聞いてみたら、スラングの辞書の「アーバンディクショナリー」のページが送られてきました。
そこにはこう書かれていました。
/s is known as the sarcasm switch. When you are typing a post use it at the end of your post so people know you are actually being sarcastic.
「/sとは、『皮肉スイッチ』として知られている。投稿の最後に入れることで、読んでいる人はその投稿が実は皮肉であるとわかる」
というようなことが書かれています。
やる気スイッチならぬ「皮肉スイッチ」。笑顔で「パーティ楽しみ!」と言うのと、真顔&低い声で「パーティ楽しみ」と言うのでは意味が変わってきます。メッセージでは顔や声のトーンは伝わりませんが、「/s」をつけることで、彼女が後者のテンションで言っているのが読んでいる人にわかる、そんなマークだそうです。
プログラミングのような書き方で、もとは「/sarcasm」(皮肉)と入れられていたようですが、だんだん省略化されて「/s」となったようです。
例えば“You are beautiful!(あなた、綺麗ね!)”というポジティブなメッセージでも“You are beautiful! /s”と「/s」がつくだけで(ある意味、美人ですねwwww)というむちゃくちゃな嫌味になるということ。意味を知らないと、ものすごい勘違いをしてしまう可能性があるので、知れてよかったです。
元カノの気持ちは“Congratulations /s”だった
イギリス人の彼女とは、気さくに話ができる関係なので「どうですか、元カレの結婚式に呼ばれた気持ちは」などとふざけ合うことができました。けれど実際に、結婚式のその場ではそんなふうに誰も過去のことは話に出せず、彼女もただただ「おめでとう」と言っていたそうです。
「まぁ、でも文字に起こしたら Congratulations /sなんだけどな」
と後日、ぼやいていた彼女の顔が忘れられません。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
英語力ゼロのまま渡英、行けばなんとかなると思いつつなんともならなかった2年間のイギリス生活。帰国後はせっかく覚えたいくつかの英単語も忘れ去り、それでも時々は英語と格闘してみる現在、40歳。
「その英語でよく外国に行ったね」「めちゃくちゃカタカナ英語だね」と、なぜか日本人に笑われながらも、覚えたフレーズの数々。いつかはうまくなりたいから、恥を忍んで今日もブロークンイングリッシュ。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。人のイングリッシュを笑うな。