英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第244回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
“fib”は義母への優しさ?
I told my MIL that I love her meatloaf. It’s fib!
イギリスで知り合った香港の方(現在は結婚してアメリカ在住)と、SNSで連絡を取っていたら、ある日こんなメッセージが届きました。
直訳したら「私は私のMILに、彼女のミートローフが好きだと言った。これはfibだ」となります。MILとfibがなんだかよくわからないので、文章の意味がさっぱりわかりません。
まずはMILを調べてみたら、こういうことでした。
MIL=Mother-in-lawの略
つまり「義理の母」ということになります。
その香港の方は、アメリカ人男性と結婚して今アメリカで、夫と義理の母と3人で暮らしています。たまに義理のお母さんがミートローフを作ってくれるということでしょう。
「よかったね。お義母さんのミートローフ美味しいでしょ?」
とりあえずそんな感じでメッセージを返したら、そのミートローフがいかにモサモサしていて食べにくいか、いかに獣臭いか、とても長い文章で返ってきました。そしてその文章の最後がまた、このフレーズでした。
But I can’t say it’s disgusting. So I told my MIL that I love her meatloaf. It’s fib!
「だけど、まずいなんて言えない。だからお義母さんには美味しいって言っている。これはfib!」
そうだった、まだfibがなんなのかわからないんだった。そう思い出して彼女に聞いてみました。
fib=誰も傷つけない嘘
ということだそうです。
嘘をつくことはいけないことですが、人を傷つけないためには嘘をついた方がいいこともあります。作ってくれた料理がまずかったとしても、正直に「まずい」と言うより「美味しい」と言った方がいいでしょう。fibはそういう時の嘘のことを言うようです。同じ意味でWhite lieというフレーズは聞いたことがあったのですが、fibもそれに近いようです。
「White lieは、その嘘をつくことで誰かを助ける、みたいな意味もあるけどね。fibはとりあえず誰も傷つけない嘘ってことだよ」と教えてくれました。
まだまだ止まらない愚痴に対して送ったメッセージにも…
「ミートローフだけじゃない、夫も義母も脂っぽいものばかり食べている」「アジアの飯が恋しい」などなど、彼女は、そのあとも、家庭の愚痴をメッセージで送ってきました。無視するのもかわいそうだったので、なんとなく返事を送り続けていましたが、だんだん眠くなってきたので「もう東京は夜だから寝るね。メッセージできて楽しかったよ」と送ったらこう返ってきました。
That’s fib! Sorry for complaining.(それが、fibだよ。愚痴ばかりで楽しくなかったでしょう。ごめんね)
人を傷つけないために嘘をつくことも時には大事ですが、それと同じくらい、たまには愚痴を言って息抜きすることも大事だなぁと思った日でした。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
英語力ゼロのまま渡英、行けばなんとかなると思いつつなんともならなかった2年間のイギリス生活。帰国後はせっかく覚えたいくつかの英単語も忘れ去り、それでも時々は英語と格闘してみる現在、40歳。
「その英語でよく外国に行ったね」「めちゃくちゃカタカナ英語だね」と、なぜか日本人に笑われながらも、覚えたフレーズの数々。いつかはうまくなりたいから、恥を忍んで今日もブロークンイングリッシュ。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。人のイングリッシュを笑うな。