「他の人に任せられない」と悩み、仕事を抱え込む人が増えている。しかし、実は「任せないこと」が部下や組織のパフォーマンスを下げ、そして何より自分自身の成長を妨げる最大の要因なのだ。自分も相手もラクになる、正しい“丸投げ"とは? 「読者が選ぶビジネス書グランプリ2024 マネジメント部門賞」などを受賞し、現在10万部を超えるベストセラーになっている話題の書籍『任せるコツ』(すばる社)より、一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】
マネジメント側が控えるべき行動
ここでは、育成のNG行為に関して、何点かお伝えします。
“歳をとってやっちゃいけないのは説教、昔話、自慢話”
これはタレントの高田純次さんの言葉として有名ですが、ビジネスにも当てはまることです。
マネジメント職に就いていると、メンバーは基本的にこちらの話を聞いてくれるので、ついついこの3つをしてしまいがちです。
特に自分の自慢は、話していて気持ちいいので、やめられないマネージャーも多いですが、された側は迷惑でしかありません。
この記事のタイトルになっている「指導と武勇伝を勘違いするおじさん」とは、実は私のことです。
恥ずかしい話ですが、メンバーが困っているときに助け舟のつもりで「自分はこうだった」「自分はこうやって成功した」と過去の武勇伝を自慢げに話してしまったことがあります。
そのときは自慢ではなく、指導のつもりで話していますが、時代も違うので何の役にも立たない、ただの迷惑行為だったと後から反省しました。
過去の話をするなら、まだ失敗例のほうが役に立ちます。
成功を活かそうとするならば、自分の昔話ではなく、組織内の最近の事例を共有するほうがいいでしょう。
マネージャーはチーム全体を管轄して、さまざまなプロジェクトの動きが見えているので、類似案件の情報を持っているはずです。
「Aさんのプロジェクトが近い手法だからヒアリングしてみよう」など、組織内の事例を、自身の武勇伝に代えて活用していきましょう。
ちなみに、「説教」「昔話」「自慢話」を否定した後、高田純次さんは「だから俺はエロ話しかしない」と冗談で続けましたが、マネジメント職のみなさんはそれも控えておきましょう。
「マクドナルド理論」で育成する
続いての育成のNGは、「答えを教える」です。
「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という格言があります。
「魚」=「答え」です。
答えを与えると、そのときは助かりますが、ずっと与え続けなくてはいけません。
自らが答えを導き出す技術を教えれば、その先も役に立ちます。
答えを教えるティーチングが必要なケースも当然ありますが、安易に答えを提供してしまうマネージャーが多いことが問題です。
教えてしまったほうが手っ取り早い、という発想になりがちですが、釣りの仕方を習得させるために相手に答えを出してもらいましょう。
では、答えを伝えずに、どう相手から導き出すか。ひとつ手法をお伝えします。
「マクドナルド理論」をご存知でしょうか?
グループでご飯を食べに行こうとしてお店の候補が出てこないときに、「ではマクドナルドに行こう」と言うと急に案が出てくる、という事象です。
人は自分の方がいい回答を持っていたら、提案したくなるものです。
「教えてください」と言うより、間違ったほうがアドバイスをもらえるという「カニンガムの法則」にも近いです。
会議の場で、リーダーが結論に近い答えをはじめから出していないでしょうか? それでは、メンバーは答えを受け入れるだけになってしまいます。
あえてハードルを下げた発言(提案)をして、意見の活性化を図りましょう。
メンバーがもっといい意見があると発言することで、参加意識が芽生えモチベーションも上がります。
微妙な提案をしたらメンバーから信頼を失うのでは、と心配されるかもしれませんが、答えを出すことより出させることのほうが重要です。
出てきた意見をまとめていく力、つまり判断力と統率力がリーダーの力の見せどころになるので、そちらに注力しましょう。