35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第233回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
ネットの掲示板にあった懐かしい言葉
最近、世界中から人が集まる掲示板や、おしゃべりのサイトを見つけて、なんとなく英語を読んでいます。だいたいが、「なんでイギリス人は周りくどい言い方をするんですか」とか「今まで見たダメ男を教えて」といったライトな話題ばかり。けれど時々「イギリスでトイレに行きたい時、どう英語で言えばいいですか」といった言語的な話題もあるので、ためになることもあります。最初は勉強のために英語の文章を読む習慣をつけようと、無理して英語の新聞や本を読んでいました。しかし難しい文章を読むのが面倒くさくなってきて、ライトな話題の掲示板に落ち着いた次第です。
その掲示板で先日、イギリスのスラングを独自に研究しているというイギリス人の投稿を見つけました。その人は、スコットランドのアバディーンという場所で生まれ、イングランドの小さな村で育ち、スコットランドのグラスゴーの大学に行ったそうです。大学の寮では、イギリス全土、さまざまな場所から来た同級生と暮らし、大学卒業後は1年ほどニュージーランドとオーストラリアを旅したということ。つまりその人は、さまざまな地域の英語に触れてきたということです。
そんな環境にいて、自分のスラングの使い方がどうなったか、その人はこう分析していました。
As a result, my use of slang is a complete hodge-podge of words from different places and different people.(その結果、私のスラングの使い方は、さまざまな場所やさまざまな人の言葉の完全なるhodge-podgeになっています)
英語を母国語としない外国人も見るサイトなので、この方は全体的に大変わかりやすい英語で書いてくれていますが、私にはこのhodge-podgeがなんだかわかりませんでした。
読み方もわからないので、翻訳機で調べたところ。
hodge-podge=ごちゃ混ぜ、寄せ集め
という意味でした。つまりその人は「私のスラングは、いろんな地域や人が使うものがごちゃ混ぜになっている」と言っていたのです。通常スコットランドの人が使わないようなイングランドのスラングや、イギリス人が使わないようなオーストラリアのスラングなどを使っているということでしょう。
そして、問題は読み方です。翻訳機の発音を聞くと「ハッチポッチ」と聞こえます。
知らない単語なはずなのに、なんだかものすごく、聞き覚えがあります。なぜなのか、記憶を辿っていったらすぐわかりました。
「ハッチポッチステーションだ……」
わからない人は全然わからないかもしれませんが、NHKの教育番組で、グッチ裕三さんや林家こぶ平さんが声優をつとめた人形劇のタイトルです。そのオープニング曲では、グッチ裕三さんが「ハッチポッチステーション〜♫」と歌っていて、私の小学校だったか中学校だったかのクラスでその歌がすごく流行ったのでした。
確か、「電車はぜんぜん来ないけど、いろんな人がこの駅にはいてすごく楽しい」といったような歌詞だったので、「ごちゃ混ぜにいろんな人がいる駅」みたいな歌だったのでしょうか。
調べたところこの「ハッチポッチステーション」は1996年から2002年にかけて放送されていたということで、今の30代か、40代前半の人はわかっていただけるかもしれません。
hodge-podgeは意外と使える
ちなみにケンブリッジの英英辞典ではhodge-podgeの例文はこのようになっています。
hodgepodge of New Age thinking seems to be a hodgepodge of old and new ideas.(新世代のごちゃ混ぜの思考法は、古いアイディアと新しいアイディアをごちゃ混ぜにしたものであるように見える)
日本にも、さまざまな国から人がやってきて、文化もごちゃ混ぜになってきています。そして昨日の私の夕食は、残り物をごちゃ混ぜに突っ込んだ鍋でした。なんだか、hodge-podgeって、日常的にすごく使えそうです。
「ハッチポッチステーション」が放送されていた当時は、「ハッチポッチ」という言葉の語呂が楽しくてよく口ずさみ、意味など考えたことがなかったのですが、およそ30年越しにその意味がわかって、とても感激してしまいました。ただスペルはhodge-podgeなので実際の発音は「ハッチポッチ」ではなく、「ホッジポッジ」に近いのかもしれません。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者による英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。