35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第222回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
not closeは、褒めてるの? けなしてるの?
先日、近所の立ち食い蕎麦屋で蕎麦をすすっていたら、隣に白人の女性がいて、明らかに箸の使い方に苦戦していました。
しかし、観光客もたいしていない、名所もあまりないうちの近所。しかも英語表記のいっさいない立ち食い蕎麦屋の食券を買うことができていたのであれば、ある程度日本に慣れている人だろう、変に手助けするのも悪いか、と思いしばらく声もかけずにいました。
しかし、その方が食べていたのは、よりによってつるつるのうどん、箸使いに慣れている私たちですら、多少苦戦するメニューでした。そしてなかなかつかめないので、うどんはどんどん伸びてゆき、極太麺になってしまっていました。
Do you need a fork?
「フォークいりますか?」
おそるおそるそう聞いてみたら、その方は驚いた顔でこちらを見て、こう言いました。
English…….
日本に来て初めて英語を聞いた、みたいな驚きようでした。Forkの発音には自信がなかったのですが、通じて嬉しかったので、わたしはとりあえず店員さんにフォーク(蕎麦屋なのでフォークは置いておらず、お子様用しかなかったけれど)をお願いしてもってきてもらいました。
その外国人女性は、話せる人をやっと見つけたと思ったのか、とつぜんものすごい勢いで話しはじめました(一体どうやって日本語表記しかない券売機で食券を買ったのか謎です)。
むちゃくちゃ早口でさっぱり聞き取れずにいたら、だんだんスローで話してくれるようになり、その日の予定を書いたメモを見せてくれました。その最初の項目はこうなっていました。
- Eat Udon near Station
- Have lunch at 〇〇restaurant
「駅の近くでうどんを食べる」という1番目の項目は、今まさにやっていることです。日本語を話せない人が、駅前の立ち食い蕎麦に入るのは勇気がいることでしょうが、見事クリアしています。
そして、次は〇〇restaurantでランチ、となっています。確かにうちの近所では有名なフレンチレストランです。
「ここは有名だけど、私は食べたことがないんだ。でも場所は知っているよ。でもちょっと高いからその近くにもっとリーズナブルなお店があるよ」と、その安い店への行き方を教えようとすると、その女性はこう言いました。
My friend told me that this restaurant is the best in this town. it’s not close.
直訳すると「私の友達が言うには、このレストランはこの街で1番だ。近くない」です。
どうやら、この「本日の予定メモ」は、日本通なのか、日本人なのかわからないですが、彼女の友達が作ってくれた行程を書いているようです。
けれど、最後の“it’s not close.”が気になります。そのレストランは蕎麦屋から徒歩5分、明らかに近いのです。
「そんなことないですよ、すぐ近くです」と、その高級フレンチへの道を教えて別れたのですが、どうにもその“it’s not close”が気になって、後日日本語ペラペラのアメリカ人にスカイプで意味を聞いてみました。
not closeは、文脈によっていろんな意味になる
it’s not close=他に追随を許さない
という意味合いではないか、ということでした。
not closeは、文字通り「近くない」という意味です。
“We are not close.”といえば「私たちはそんなに親しくない」という意味になりますし、クイズかなにかを出されて回答、司会者に“it’s not close.”と言われたら「全然違う!」という意味になります。
けれど、前述のような“This restaurant is the best in this town. it’s not close.”というフレーズになると、「1番美味しいレストランと2番目に美味しいレストランでは、味のレベルがかけ離れている」というような意味になり、「このレストランは抜群に美味しい」とか「他の店に追随を許さない」というようなことを言っていたのではないかということ。
私が最初に「安いレストランもあるよ」と言ったため、「そんなのとは比べものにならないほど美味しいんだ」と言いたかったようです。
「not closeは、文脈によっていろんな意味になるから、注意して聞いてね」とスカイプでそのアメリカ人の方は言っていました。
そんなに美味しいレストランなら、高くてもぜひ行ってみたいなと思いました。しかし、うどんを食べたあと、フレンチレストランでランチを食べるなんて、大食漢だなぁとも思いました。
「日本の料理は少なく感じる人もいるから、うどん一杯なんてスナック感覚なんじゃないかな」
そう、スカイプ先のアメリカ人が教えてくれました。万一アメリカ人をもてなすようなことがあれば、参考にしたいと思いました。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者による英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。