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2023.08.03

新書大賞2023に輝いた哲学者による長編小説。インターネット黎明期とは

ゲーテ読者に薦めたいとっておきの1冊をピックアップ! 今回は、気鋭の哲学者・千葉雅也の長編小説『エレクトリック』をご紹介。

千葉雅也『エレクトリック』
『エレクトリック』
千葉雅也 著 新潮社 ¥1,650

気鋭の哲学者がインターネット黎明期を細部まで描ききる思想的1冊

新書大賞2023に輝いたベストセラー『現代思想入門』。その著者である気鋭の哲学者・千葉雅也氏の、3冊目の長編小説である。1995年を舞台に、世界が「電気」を媒体にしてつながり、一気に広がり始めたインターネットの黎明(れいめい)期を、思春期の高校生の自我や家族、社会との関係性を通じて描いている。

雷が多いことで知られる雷都・宇都宮。広告業の会社を経営する父の最大の趣味はオーディオであり、今は知人のために、ウェスタン・エレクトリックという伝説のアンプを修理するのに余念がない。一方、高校2年生の達也は、インターネットの開通をきっかけにゲイコミュニティの掲示板に頻繁にアクセスするようになる。そして、掲示板で出会った高校生が顔写真を送ってきて……。

哲学者としての千葉氏の言葉には以前から親しんでいたが、小説に触れるのは初めてだった。その文章からは時を越える普遍的な強度が感じられ、物語自体が読者に人間の本質について問いかけてくる。

「電気」が情景の断片を貫いていく本書は、タイトルから細部にいたるまで哲学的な要素がちりばめられ、千葉氏の思想が綿密に張り巡らされている。

Seitaro Yamazaki
1982年神奈川県生まれ。セイタロウデザイン代表。「社会はデザインで変えられる」という信念のもと、デザインブランディングを中心に多様なチャネルのアートディレクションを手がける。

TEXT=山崎晴太郎

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