35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第190回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
I am in the dark.=さっぱりわからない
以前、“I am in the dark.”が「さっぱりわからない」という意味になると、お伝えしたかと思います。真っ暗な所にいてなんの情報も与えられていない、というニュアンスです。
その後、しばらくして気がついたのですが、10代の頃よく聞いていた海外バンドの “Shot in the dark”という曲がありました。
私はこれを「闇に撃て」という意味だと、10代で聞いてから25年間ずっと思っていました。闇に向かって銃を撃つ、敵がなんなのかわからないけれど戦い続ける孤独な男のイメージです。10代の私はその歌詞を聞いて「なんてカッコいいんだ」と夢中になったのを覚えています。
しかし40歳を前にして、ふと疑問に思いました。
“I am in the dark.”が「さっぱりわからない」という意味なのだから、“Shot in the dark”ももしかして「闇に撃て」ではないのでは?
辞書を引いたら一発でした。
ケンブリッジの英英辞典にはこう説明されていました。
an attempt to guess something when you have no information or knowledge about the subject and therefore cannot possibly know what the answer is.
「そのことについて、何の情報も知識もなく、答えがなんなのか知る由もない状態で、なにかを予想しようとすること」と、回りくどく説明されていますが、これってつまり「当てずっぽう」です。
確かに考えてみれば、闇の中で銃を撃つ、というのは「的が見えていない状態で撃っている」ということ、つまり「当てずっぽうで撃っている」ことになります。
というか日本語でも、「闇雲に」とか「無闇に」という言葉がありました。
「当てずっぽう」という意味で日本語も英語も同じdark、「闇」を使っているところがなんだか不思議です。
shot in the dark=当てずっぽう
ロングマンの英英辞典から、いくつか例文をご紹介します。
My answer to the last question was a complete shot in the dark.
「最後の問題(質問)の私の答えは、完全に当てずっぽう」
選択式のテストでよくやるやつです。
Let's see if she's at Fiona's house. It's a shot in the dark, but we've got to start looking somewhere.
「彼女がフィオナの家にいるかどうか、見てみよう。いや、当てずっぽうだよ、でもとりあえずどこか探し始めないと」
なんの手がかりもないけど、とりあえず探さないと、ということでしょう。
That was a shot in the dark, but judging from the expression on his face it struck home.
「それは、当てずっぽうで言ったんだよ。でも彼の表情を見ていたら、案外心に刺さったっぽい」
なんだかよくわからないけど泣いている人を慰めるために、適当なことを言ったら、意外と感動されてしまった、というシュチュエーションでしょうか。
私の中で25年間、闇に向かって銃を撃っていた孤独な男が、辞書を一回引いただけで、一気に当てずっぽうばかり言う適当な男に変わりました。そう思って聞いてみたら、曲調もアップテンポで、以外と能天気な曲に聞こえてきました。
当てずっぽうで英語を読んで、ずいぶん長い間、勘違いをしていたんだなと、恐ろしくなりました。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者による英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。