35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第117回!
裏アカのことを英語でなんという?
先日、日本語ペラペラのアメリカの方とSkypeしていたところ。彼女がこう言いました。
「面白い写真を撮ったから昨日フィンスタに上げたよ」
フィンスタ? 発音が良すぎて「インスタ」が「フィンスタ」に聞こえたのかと思いました。しかし、彼女のインスタアカウントを見ても、もう1ヵ月ほど更新がありません。
「なにも上がってないけど?」
と言うと。
「フィンスタの方だよ。アカウント知らなかったっけ?」
と今度は、はっきりと「フィンスタ」とカタカナ風に発音してくれました。
「Finstaは、インスタグラムのフェイクアカウントだよ」
ということで要は、インスタの裏アカのことだそうです。日本でもこの言葉を使っている人はいるようですが、もとは英語を話す人たちの間で生まれたワードだとのこと。
インスタの本当のアカウント、つまり「本アカ」は、キラキラした投稿をするもの、フォロワーも3桁ほどいるのが通常というところですが、このフィンスタ、つまり裏アカウントは、より個人的で、かつたいしてキラキラしていない日常の投稿をするところだそうです。フォロワーも、仲のいい友人だけでせいぜい10人くらい。変顔をあげたり、本アカにあげた写真の、加工前のものあげて仲間と笑い合ったり、そんなアカウントのようです。
よりプライベートで、素に近い投稿をするアカウントの方が「フェイクアカウント」と呼ばれるのがまさに、キラキラを前提とするインスタの世界を表しています。新しい言葉と文化を教えてくれたお礼に彼女に「日本語では『インスタ映える』という言葉がある」とお伝えしたところ。
「多分、映えない写真を上げるのが、フィンスタだと思う」
ちなみに彼女はこうも言っていました。
「日本人はInstagramのこと『インスタ』って言っているけど、私たちは『グラム』って言う方が多いかな」
Instagramを「インスタ」と言うか、「グラム」と言うか、あるいは「IG」と言うか。これは、コミュニティにもよるそうなのですが、知っておかないと「は? グラムって何? 新しいアプリ?」となってしまうので、教えてもらってよかったです。
「アップル信者」は、英語でも同じ意味
最近、iPadの購入を検討している、という話を、オンラインの英語教師にしたところ。
Apple devotees usually line up for hours to buy new products.
(アップルディボーティーズは、ふつう新製品を買うために、何時間も並ぶよね)
と引きつった顔で言われました。
「アップル ディボーティー?」と聞き返すと、こういうことでした。
Apple devotee=アップル信者
確かに、アップル製品の信者たちは、新製品の発売日には列をなして購入し、店前に1週間並んだ人なんかも世界中でニュースになります。そのことを少し皮肉っぽく先生は言ったのでしょう。
“devote”とは「捧げる」という意味の動詞で、それを名詞にして「捧げる人」としたのが“devotee”です。「捧げる」というのはまさに「信者」がすることですので、日本語でもいわれる「アップル信者」という言葉とほぼ同じ意味です。「アップルの大ファン」というよりは、「アップル信者」といった方がなんとなく皮肉というか、ただ好きというよりは盲目的になっている様子を揶揄している感じがするのは、日本語も英語も同じだと思います。
この“devotee”は愛好家とか、愛好者という意味でもありますから、こんな風に使われるのが一般的だそうです。
My brother is a devotee of baseball.
(兄は、大の野球好き)
I am an enthusiastic devotee of sports.
(私はスポーツの熱狂的な愛好家です)
「別に私はアップル信者ってこともないんだけど」と言おうとして、パソコンもスマホもアップル製品、さらに新発売のiPadまで欲しがっていることに気が付き、これは揶揄されてもしかたないのかな、と言葉をのみこみました。
Illustration=Norio