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2021.10.26

斬新な発想で好きなことを! 不動産事業のデジタル化という野望【NOT A HOTEL 後編】

自宅や別荘として購入しながら、自分が不在のときはアプリ上でホテルに切り替えて稼働させる。そんなまったく新しい不動産のカタチがあることをご存知だろうか? その名も「NOT A HOTEL(ノット ア ホテル)」。第一弾プロジェクトとして、那須、宮崎の計8室が販売開始! 9月28日に事業をスタートさせた濵渦伸次代表取締役CEOのインタビューを2回に分けてお届けする。【前編はこちらから】

「NOT A HOTEL NASU」 都心から約90分、那須に広がる16万坪の牧場。20頭の馬が暮らす広大な自然を望む全2棟。建築はSUPPOSE DESIGN OFFICEに依頼。

谷尻誠や片山正通ともタッグ

アプリ上で自宅をホテルに切り替えられるという、まったく新しい事業のカタチを示したNOT A HOTEL。事業を展開する代表の濵渦伸次氏はSaaS型Eコマースプラットフォームを展開する株式会社アラタナを創業後、スタートトゥデイ(現ZOZO)に売却し、前澤友作氏の右腕として活躍。2020年3月に退職し、その直後にNOT A HOTELを創業した。具体的に、これまでのホテル業界の事業形態と一体何が違うのだろうか?

「大きく違うのはリスクです。9月に販売を始めたのですが、物件自体は実際に建っていない。NOT A HOTELは、"売れたら建てる"というモデルなので、正直あまりリスクが生じないのです。逆に考えると、今までのホテルビジネス自体が、リスクをとりすぎていたと思っています。アパレルでいうと、ZOZOってあくまでもプラットフォームなので在庫リスクの少ないビジネスモデルでした。近年、在庫を持たないアパレル企業がどんどん増えていっているのを近くで見ていた身からすると、"物件を建てた後に稼働率40~50%でした"というホテル業界に対して"かなりリスキーなビジネスモデルだな"と感じていました。そこで私は、"建った時には投資回収できています"というビジネスができないかなと前々から感じていました」

濵渦伸次氏

アパレル時代の人脈を生かし、物件は、建築士の谷尻誠氏やインテリアデザイナーの片山正通氏など現代を代表する数々のクリエイターたちに濱渦氏自らが依頼。アプリ上に、クオリティ抜群のCGで描かれた販売物件を並べ、そこに”今すぐ買う”というボタンを付けて、まるで洋服のように販売する。なかには4LDKで8億3760万円という驚くような価格も存在するが、年30日単位で購入できるシェア買いも可能。アプリで「自宅」と「ホテル」を切り替えられるということも、もちろんのこと消費者側にとってのリスク軽減になる。

「軽井沢のある管理会社に聞くと、別荘などのオーナーさんが実際に使うのは、せいぜい年間20~40日が大半で、そこに数千万~数億円を投資されている。NOT A HOTELでは、自宅や別荘として使わない残りの期間は、ホテルとして運用して利益を出すことができるし、管理や運用もすべてこちらでやります。"いいところに泊まりたい"という方の欲求と、"いい家を持ちたい"という方のニーズを満たすことができます。私はデジタルの人間なので、それをアプリを開発してワンタップで"ホテル"と"自宅"を切り替えられる機能を生み出したかった。アパレル業界にいた頃は、"買う"というボタンはどんなに高くても10~20万でしたが、8億のボタンをアプリ上につけたらどうなるんだろうという実験的な思考もありましたね」

現在は、那須の2部屋と宮崎の6部屋の計8部屋で、合計約40億円を販売。アパレルとデジタルを融合させてきた濱渦氏だからこそ、ホテル業界においても、これまでになかった新しいの発想を持つ。その脳内には、どんなビジョンが描かれているのだろうか。

「たとえば那須の物件を買った方には宮崎の物件をホテルとして相互利用できるシステムにしています。別荘って普通は、1個や2個買ったら終わると思うのですが、NOT A HOTELでは毎年のように新しい物件が増えていくので、実際に購入しているのは1つでも、その相互利用によって"自分の家が増えていく"という感覚を生み出せたらいいなと考えています。実は現在、東京にも広尾と浅草の2カ所、相互利用専用の施設を作っていますし、3年で30カ所を目指したい。あと、少し斬新な企画として実際に進めている案件が、"今日どこにいるかわからないホテル"というコンセプトのトレーラーハウスです。5台が1組で移動するトレーラーをホテルとして利用できるシステムで、お風呂だけのトレーラー、ベットだけのトレーラー、スナックのトレーラーなどを作り、それをホテルとして利用できる。今までにない体験をやろうとしていますね」

累計18.5億円を調達

多種多様な企業や投資家からの出資を得ているのもNOT A HOTELの特徴だ。まず、創業当初にはANRIなどから10億円を調達。今年に入っても、オープンハウス、オリエンタルランドイノベーションズなどから8.5億円の追加調達に成功した。
 
「ANRIさんに関してはTwitterでDMを初めましてと送ったところからのスタートで、"コロナ禍でこうした事業をやり始めるの面白いですね"と賛同してもらいました。また、エンターテイメントのプロであるオリエンタルランドさん、住宅販売事業を全国で展開しているオープンハウスさんなどからは"コンセプトが面白いね"と。そういった多角的な企業さんの知見をいただきながら、NOT A HOTELはまったく違うやり方でやろうとしています」

業界に根付いている常識を打ち破ろうとする挑戦者が、既存の勢力から反発を受けるのはよくある話だ。しかし、デジタル戦略のノウハウを持つ濱渦氏にとっては、そんなこともスルリとかわしてしまうだけの知識と経験とセンスが存在する。

「反発はありませんし、むしろ歓迎されています。実は老舗旅館さんとかと余っている土地をNOT A HOTELに変えさせてもらうというプロジェクトもやってたりしていまして……。今、コロナで借り入れが半分以下になって泣く泣く旅館ごと手放すオーナーさんもいらっしゃいます。そうなる前に、旅館やホテルの一部をNOT A HOTELにしましょうという計画です。そういう意味では、ホテル・旅館さんとも組んでやっていけるモデルなのです。僕らやっぱりデジタルが得意なのでソフトウェアなところで協力していければと思っています」

いずれは海外での展開も考えているのだろうか?

「そうですね、海外もやりたいなと思っています。でもまずは国内。メッシュ状にNOT A HOTELのオペレーションを入れて、そのあとですね」

インタビューの最後に、やはり気になることを聞いてみた。ZOZOの前澤氏から独立に際し、何かアドバイスはあったのだろうか。

「ZOZOの時から前澤さんは"好きなことをやっている人には勝てない"と皆に言ってたんですよ。実際に、服好きな人を集めてましたし。最近、私も特にそうだと思うようになったのですが、やっぱり好きには勝てないなって。だったら自分は、好きな建築や家具、旅をテーマとして、自分なりの繋がりも使ってやろうと。それは、ただのテックカンパニーにはできないと思います。前澤さん自身も、とにかく、好きなことをやっていて楽しそう。だから、皆ついていくし、一緒に働くのだなあと思って……」

「NOT A HOTEL AOSHIMA」 宮崎空港から車で約15分、青島の国定公園内に位置するオーシャンフロントの全6室。

Shinji Hamauzu
1983年生まれ。宮崎県出身。国立都城高専電気工学科卒業。2007年アラタナを設立。2015年ZOZOに売却し、グループに参画。ZOZOテクノロジーズ取締役を兼任し、2020年3月に退任。2020年4月1日NOT A HOTELを設立。

NOT A HOTEL 公式サイト:https://notahotel.com/

TEXT=鈴木 悟(ゲーテ編集部)

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